鉄腕アトム初単行本版2 | 空想俳人日記

鉄腕アトム初単行本版2

 手塚治虫の『鉄腕アトム』は、光文社の月刊誌「少年」に、1952年4月号から1968年3月号まで全65話が掲載された(その前にアトムが脇役の「アトム大使」が連載)。
 ボクは、確かにリアルタイムに読んでいたが、1952年は、まだ生まれていない。1956年生まれだ。つまり、リアルタイムと言っても、後半だろうね。
 記憶が定かなのは、「ロボットランドの巻」や「アトム対ガロンの巻」、あと「地球最後の日の巻」のベムや「地上最大のロボットの巻」のプルートウをよく覚えているので、小学校に入ってから毎月「少年」を買うようになったのだろうね。

鉄腕アトム初単行本版1-01 鉄腕アトム初単行本版1-02 鉄腕アトム初単行本版1-03

 今回入手した文庫版の「鉄腕アトム初単行本版」は、雑誌連載版から複数の単行本まで様々なバージョンがある中で、ひとつの頂点ともいえる1956年刊行の光文社版をカラー頁もそのままに文庫サイズで復刻したもの。
 だから、ここに掲載のものは、リアルタイムには読んでいないね。なんせ雑誌掲載は、生まれる前だもんね。

 以上、ということをブログ記事「鉄腕アトム初単行本版1」で書いたねエ。今回は、「鉄腕アトム初単行本版2」だよ。実は、「鉄腕アトム初単行本版1」と同時に入手したのよ。

鉄腕アトム初単行本版2-01 鉄腕アトム初単行本版2-02 鉄腕アトム初単行本版2-03

 掲載されている作品は以下の通り。

第10話 ZZZ総統の巻 1954/09-1954/12 「少年」
鉄腕アトム初単行本版2-04
 これ、インチキだよね。総統が犯人だと、手塚氏も最初そうしようとしたらしいんだけど、双子にしちゃったよ。ずるいね。

第12話 ゲルニカの巻 1955/01/15 お正月大増刊号 「少年」
鉄腕アトム初単行本版2-05
 おお、ナメクジのお化け、どんな化学兵器でもやっつけられない。そんな相手に、アトムは、なんのことはない、ナメクジじゃん。さあ、どうやって撃退したか。ラストのヒゲオヤジの「あ、そう」という表情が忘れられない。

第14話 冷凍人間の巻(原題:なぞの冷凍人の巻) 1955/07/01 「少年」
鉄腕アトム初単行本版2-06
 ここに登場する遺跡を守るスフィンクスが、何故か女性っぽいのよね。「鉄腕アトム初単行本版1」でも書いたけど、手塚氏は、差別問題、民族問題も若い頃から相当敏感だった、そう思う。

第8話 コバルトの巻 1954/06-1954/09 「少年」
鉄腕アトム初単行本版2-07
 この作品、弟のコバルトは「少年」誌では、亡くなるんだけど、手塚氏は単行本を出すたびに、書き改めているそうだ。だから、雑誌掲載とは異なる場合も。可哀そうだから、コバルトは助かるよ。

 さて、後半の資料や解説では、当時のアトムの人気が書かれているので面白い。SFと言う言葉もない時代、空想科学で出てくるロボットに人間と同じ感情をって、編集長の助言だったそうだが、手塚氏「やります」が見事に当たったんだねえ。
 巻末で、このお初の単行本化以外に、後々、何度も単行本化されている記述がある。
 私は、光文社の文庫『鉄腕アトム』を全巻持ってるので、全ての作品を知ってはいるのだが、実は、解説にも書かれている、手塚氏は単行本を出すたびに見直して、加筆修正してるらしい。単行本で出会える人を大事にしてたのかな。
 それで、実は、光文社の文庫『鉄腕アトム』以前に、1975年ごろ発刊された朝日ソノラマの『鉄腕アトム』全集も歯抜けだけど、ボクは持っているのだ。手塚氏は、この朝日ソノラマのサンコミックス『鉄腕アトム』を決定版と考えたらしい。
 ということは、今回の初単行本版とボクの持っているサンコミックスや光文社文庫とは違いがあるかもしれんね。間違い探しじゃないから、やれへんけどね。
 あと、SF作家である小松左京氏の言葉が素晴らしい。
《アトム以前のロボットというものは人間の言いなりになる機械人形を表していた。ところが、不思議なことに手塚さんはロボットのイメージを変えてしまった。ロボットに感情を持たせたんですね。(中略)機械仕掛けの人造人間だったロボットというものを"心の優しい愛すべきもの"という概念に変えた功績は大きい。アトムは世界のマンガ史・アニメ史においてそのエポック・メイキングになったことは間違いないでしょう》

鉄腕アトム初単行本版2-08

 手塚氏も、「少年」編集長のアドバイスの「あたたかい心を持った人間らしいロボット」に最初は戸惑いがあったらしい。しかし、編集長は「読者はアトムをロボットとは思っていませんよ。自分たちとおなじような少年だと思っています」の言葉に、「やってみよう」と。
 そうなのだ。子どもだったボクも、もちろん、アトムはロボットなんだから、ロボットVS人間という図式も理解したが、それ以上に、子どもVS大人、ボクたち子どもと同じ感情の持ち主なんだ、そう思って読んでいたのは間違いない。だから、大人たちの理不尽な行為に反感を持ってアトムを読んだものだ。
 ちなみに、「少年」でのアトムは、確か完結していない。というのも、連載中に「少年」が休刊になったためだった(と思う)。月刊「少年画報」の『マグマ大使』も読んでいたが、こちらは連載が終わってしまった。暫くは、手塚作品と遠のくものの、すぐに再会した。『火の鳥』だった。手塚治虫自ら創刊した「COM」(虫プロ商事)に連載されたものである。ボクは中学生になっていた。


鉄腕アトム初単行本版2 posted by (C)shisyun


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