生き物の死にざま | 空想俳人日記

生き物の死にざま

 前に読んだ『生き物の死にざま はかない命の物語』は、この本の第2弾だったわけで、第1弾も読むことにしたのよ。



子に身を捧げる、交尾で力尽きる、仲間の死に涙する……
限られた命を懸命に生きる姿が胸を打つエッセイ!

生き物たちはみな、最期のその時まで命を燃やして生きている──
地面に仰向けになり空を見ることなく死んでいくセミ、
成虫としては一時間しか生きられないカゲロウ、
数カ月も絶食して卵を守り続け孵化(ふか)を見届け死んでゆくタコの母、
老体に鞭打ち決死の覚悟で花の蜜を集めるミツバチ……。
生きものたちの奮闘と哀切を描く珠玉の29話。生きものイラスト30点以上収載。

<目次より>
1 空が見えない最期──セミ
2 子に身を捧ぐ生涯──ハサミムシ



3 母なる川で循環していく命──サケ
4 子を想い命がけの侵入と脱出──アカイエカ
5 三億年命をつないできたつわもの──カゲロウ
6 メスに食われながらも交尾をやめないオス──カマキリ



7 交尾に明け暮れ、死す──アンテキヌス
8 メスに寄生し、放精後はメスに吸収されるオス──チョウチンアンコウ
9 生涯一度きりの交接と子への愛 タコ



10 無数の卵の死の上に在る生魚──マンボウ
11 生きていることが生きがい──クラゲ
12 海と陸の危険に満ちた一生──ウミガメ
13 深海のメスのカニはなぜ冷たい海に向かったか──イエティクラブ
14 太古より海底に降り注ぐプランクトンの遺骸──マリンスノー
15 餌にたどりつくまでの長く危険な道のり アリ
16 卵を産めなくなった女王アリの最期──シロアリ
17 戦うために生まれてきた永遠の幼虫──兵隊アブラムシ
18 冬を前に現れ、冬とともに死す“雪虫”──ワタアブラムシ
19 老化しない奇妙な生き物──ハダカデバネズミ



20 花の蜜集めは晩年に課された危険な任務──ミツバチ
21 なぜ危険を顧みず道路を横切るのか──ヒキガエル
22 巣を出ることなく生涯を閉じるメス──ミノムシ(オオミノガ)
23 クモの巣に餌がかかるのをただただ待つ──ジョロウグモ
24 草食動物も肉食動物も最後は肉に──シマウマとライオン



25 出荷までの四、五〇日間──ニワトリ
26 実験室で閉じる生涯──ネズミ
27 ヒトを必要としたオオカミの子孫の今──イヌ
28 かつては神とされた獣たちの終焉──ニホンオオカミ
29 死を悼む動物なのか──ゾウ

 ハサミムシの幼虫は、空腹のあまり、母親の体を食べ始める。おおお。 
 故郷の河へ戻り産卵したサケは、その死骸がプランクトンとなり、生まれたばかりの稚魚の餌になる。あああ。
 カマキリは、交尾をしている最中でも、メスが捕らえたオスの体を貪り始める。メスに頭を齧られながらもオスの下半身は休まず交尾し続ける。なんと。
 アンテキヌスの繁殖期間はわずか二週間。この間、不眠不休でメスを探し続け、ひたすら交尾を行っていく。ひええ。
 寿命がないベニクラゲ。不老不死だが、ウミガメに食べられれば、はいそれまでよ。ほわあ。
 ハダカデバネズミは生まれた子はみなワーカーで子どもを産まない。そして老化現象がない。ほへえ。
 働きバチは皆メスで、キャリアの最後に過酷な蜜集めの外勤が仕事だ。働きバチの寿命はわずか一か月。ふはあ。
 ミノムシはミノガというガの幼虫だが、メスは蓑を出ることなく生涯を終える。はれえ。

 ボクたちは、何のために生きているのか。現代人は、生きがいを失っているという、便利な世の中になるほど。何故なのか、それは、人間だけ見ていても、わからないのではなかろうか。ここに書かれた、生き物たちを知ること。死にざままで知ることで、生きるっていうことがわかって来るんじゃなかろうか。
 最後の「ゾウ」から引用したい。
《もしかしたら、ゾウたちの方が、死ぬことについては、私たち人間よりも知っているのかもしれない。活きることの意味も、より知っているのかもしれない。》
 ボクもそう思う。
《万物の霊長を自負し、科学技術万能の時代に生きる私たちにとっても、死を前にできることは限られている。愛すべき人が息もせず、永遠に動かなくなってしまった現実を前にすれば、私たち人間にできることもまた、ただただ悲しむことだけなのである。》
 ボクたちは、生きるということに対して、便利というものを手に入れながら空しく生きる、生き物の中で最も愚かな存在なのかもしれない。


生き物の死にざま posted by (C)shisyun


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