小泉今日子『黄色いマンション 黒い猫』 | 空想俳人日記

小泉今日子『黄色いマンション 黒い猫』

 別冊太陽「小泉今日子 - そして、今日のわたし」の感想をブログ記事で書いた。で、そこには書かなかったが、AMIの相方みっちゃんが、キョンキョンのファンで若い時に、オカリナ吹き吹き『スマイル・アゲイン』を修学旅行のアトラクションで歌って、表彰されたくらいなのだ。だから、忙しくて本も読む時間がないけど、買っては積んどく主義を楽しんでいる相方に変わって、アイドル時代のキョンキョンが今どう生きているのかをボクが読んで教えてあげたい共有したい、そう思ったのよね。
 そして、その続き。ボクも別冊太陽「小泉今日子 - そして、今日のわたし」を読んで、彼女の人生のチャレンジ精神に驚いて、知らなかった文筆業の片鱗を知りたくて、前のブログ記事にも書いたけど、エッセイ集『黄色いマンション 黒い猫』を入手したのよね。

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 驚いた。学生時代はでっきん坊主だったそうだが、いやいや、素晴らしい文才の持ち主だ。たぶん、若い時の感受性と、その後の経験値で、言葉が湧いてきているように思う。ただのアイドル歌手ではない、その後の人生の歩みの中で、そんなアイドル時代や、家庭のこと、ともだちのこと、などなど、自分を俯瞰して見詰める力を得たのだと思う。
 しかも、このエッセイ、面白い。愉快でもあり、しみじみとしたり、悲哀を感じたり。それを紡ぐ文章が読み手を惹き込んでいく。

小泉今日子『黄色いマンション 黒い猫』04

 アイドル歌手の時代のこと。「なんちゅう歌詞じゃ」が面白い。レッスンで南沙織の『純潔』を練習したそうな。そんな歌詞を載せるよりも、YouTubeから引っ張るわ。



 ほんとだ、なんちゅう歌詞だ。でも、これ、曲は筒美京平なんだ。凄いな、彼は。
 あと、スター誕生、オーディションの時は、石野真子の歌を歌ったそうな。『春ラ!ラ!ラ!』。



 ほんとだ、なんちゅう歌詞だ。この頃のアイドルの歌は、曲が興味があったので歌詞は当時ピンと来なかったけど、今振り返れば、凄い歌詞が多いよね。山口百恵なんか、

「あなたが望むなら私何をされてもいいわ」
「あなたに女の子の一番たいせつなものをあげるわ」

 このエッセイでは、本当かどうかは別にして、彼女の子どもの頃の交友関係、中学・高校になったときのおともだち、あと、お父さんやお母さんのこと、お姉ちゃんのことも描かれている。へええ。
《今ならワシントンハイツのことを覚えている人生の先輩がどこかにいるはずだ。GIたちが原宿の街を歩いていた様子を聞いてみたい! 知りたい! 匂いは消えても記憶や記録はずっと残っていく。残していかなきゃいけないのだ。だから、"急げ! 私"なのだ。》
 素晴らしい! 思わず引用。
《なぬっ? ぬなっ? ななっ? ぬぬっ?》と、面白い擬音。思わず引用。
 そして、《なんだこの展開。少女マンガか!》、いいねえ。
 文庫化にあたって、新たに加えられた「和田さんの今日子ちゃん」。ありがとう、と、さようなら、と。ステキです。和田さんとは、和田誠。イラストレーターだけど、マルチで、今日子ちゃんにとっては、『怪盗ルビイ』の映画監督さんだ。

小泉今日子『黄色いマンション 黒い猫』05

 以上だよ。
 けどね、何がステキって、一人でいること、一人で行動することが好きだった小泉の日常は、いたく感慨深い。
 もちろん、産んでくれて「ありがとう」はあるけれど、家族とか家庭にはボクと同じ無頓着じゃったのではないかな。
 一人は寂しいから厭じゃは分かるけど、彼女と同様、だからと言って、一人の時間がないとダメになる、それは同じだ。寂しいけど、絶えず人と一緒にいるのは苦手だ。一人のがいい、そんな小泉がここに描かれている。
 彼女は一度、結婚している。ボクの好きな俳優、永瀬正敏だ。5~6年で離婚している。いいんじゃないかな、お互いに、それ、分かるよ。
 子は鎹って言うけど、ほんとに子どもが大人になると、夫婦ってどちらかが依存してなくて自立していると別れてもいいんじゃないかな。
 ボクは、どちらかというと、依存しあって生きていくと、相手が亡くなった時、生きる気力を失うほうのが怖い。
 そういう意味で、彼女は、様々な死を見つめながらも(後輩のアイドル歌手が、飛べないく制して空を飛んだ話も出てくる)、強くたくましく生きている姿が美しい。


小泉今日子『黄色いマンション 黒い猫』 posted by (C)shisyun


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