映画『PERFECT DAYS』 | 空想俳人日記

映画『PERFECT DAYS』

 ヴィム・ヴェンダースの映画は、一時よく観たなあ。『ベルリン・天使の詩』『都市とモードのビデオノート』『夢の涯てまでも』『時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース! 』などなど。
 今回久しぶりに観たのは、『PERFECT DAYS』。



 映画を観る前に、日の出を拝んだヨ。これ、初日の出じゃないよ。

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 なんせ、観た映画館は、イオンシネマ名古屋茶屋。開場が7時。上映開始が7:45と、メチャ早い。ボクは早朝は得意だけどね。

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 なので、日の出は、名古屋茶屋の屋上から拝んだ。ボクの予知能力がさせた技かもしれない。というのも、これから見ようとする映画のラストシーンを予感させる景色なのだ。
 この映画、主演は役所広司。なんでもない日々、公衆トイレ掃除というルーチンのお仕事。でもね、同じじゃないんだよ。同じようになってしまう現代人は多いかもしれないけど、彼は違うんだよ。毎日同じ仕事なんだけど、毎日が新しいんだよ。木漏れ日の瞬間瞬間が、ひとつとして同じじゃないようにね。

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 眠る前に欠かさず本を読む。その本のタイトルを挙げておこう。幸田文の『木』。「樹木を愛でる心の養い、何よりの財産」という父、幸田露伴の思いを継ぐ。ウイリアム・フォークナーの『野生の棕櫚』。二つの物語、ひとつは中産階級の白人医師夫婦の物語、もひとつは南部の囚人の物語、が交錯する二十小節。パトリシア・ハイスミス。の『11の物語』。不安を描く天才なミステリー作家。この映画では、妹の娘が叔父である主人公の平山さん(役所さんね)とこへ家出してきて、この本の『すっぽん』という短編に惹かれるよ。

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 どれもが古本屋の100円均一文庫本。これが睡魔が襲うまでの彼の夜。テレビはないよ。ボクもないよ。マスコミは、今や自分らしい人生を過ごすのに弊害ばかりだもんね。
 そして、朝目覚めるまでの夢心地のひととき。ノンレム?レム?睡眠?ヴィムらしい映像美。
 近所のおばあちゃんの庭掃きの音で目覚める平山さん。平山さんのアパート、お昼のサンドイッチを食べる神社。いつも遭遇する女のコ。銭湯、浅草駅での夕食の店。休日に通う、石川さゆりさんの店。どれもが、本当にありそうで、ドキュメンタリーにも見えてくる。本当に平山さんがいるのじゃないか。
 仕事の相方が恋焦がれる彼女。彼女は、相方がこそっとミュージックテープをバッグに忍ばせたのを返しに来る。その彼女の悲痛な面持ち。平山さんは、まるで修行僧、いやいや、癒しの存在のように、別れ際にほっぺにチュ~。

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 少し話した、妹の娘さんとの会話。「今は今。今度は今度」「この正解にはたくさんの世界があって、繋がっている世界もあれば、繋がってない世界もある」。そして、妹に連絡をした平山さんのところへ娘を連れ戻しに来る。その時、父親との何か確執があったような、そして、今の平山さんの生活がある。妹の「本当にトイレ清掃してるの?」、世界が違う場所に来たのだなあ、創造するしかないけど。
 そして、石川さゆりさんの店は休日に必ず行く店。この店で、常連さん、あがた森魚のギター伴奏で歌う石川さゆりの『朝日の当たる家』は最高だよ。その店で、ある日、男性と抱き合うのを見てしまう。その男性は、元夫の三浦友和くん。見られて、そそくさと逃げた平山さんを追って、ひとときの友情。これが、まるで子どものようだあ。友和くんは癌になって、急に元奥さんにありがとうを言いたくなったそうな。

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 二人がひとときの親友。「影と影が重なると濃くなるの」、やってみた。「変わらない」と友和くん。平山さんは「ほら、変わった。濃くなった。変わらないわけがない」。
 この映画で、まったく会話がないが重要な役がある。浮浪者のダンスだ。それは、他の歩いている人には見えない、いや、見ようとしないのだ。けど、平山さんにとって大切な存在、まるで木と寄り添い、木のように、木漏れ日のように。都会の中で、見失ってはいけない存在だ。ボクたちって、「ああはなりたくない」って目を瞑るよね。でも、瞑らず見続けていると、本当の生き方が分かってくることがある。それが、ここには描かれている。ようは、現代社会は生きづらいのではなく、生きづらくしているのは、便利な世の中を興じしすぎているからじゃないか、おうちに風呂がなければ銭湯に行く。そこで、楽しい光景を観ることができる。

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 とまあ、思いついた限りで書いたけど、この映画で役所広司は、カンヌ映画祭の主演男優賞を貰った。無口で感情をあらわにしないが、でも、泣く時は泣く、ラストの彼の表情を長回しする、その表情が、とても人間らしい。彼にとって「過去は過去。今は今」そうやって生きていると思う。
 この映画、エンドロールが流れた最後に、重要なヒントとなるキーワードを用意している。エンドロールが始まると劇場を出てしまうお客さんが多いけど、最後まで席に着いてた方がいいよ。

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 映画を観終わって、早い昼食(そう、見終わっても早い昼食なのだ)、映画の半券でミニソフト無料のスガキヤさん。この日から年末年始おめでたメニューの天ぷらラーメン、食べたよ。ソフトとラーメンを交互に食べた。

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 現代人はお金があれば何でも手に入る。でも、満足感、充実感が感じられない。そんな人が多いと思う。そんな人は、この映画を観るといいと思う。きっと、「平山さんのように生きたい」そう思う人が結構いるんじゃないかな。
 ボクは平山さんに近い生き方をしているので、楽しく観ることができたよ。


映画『PERFECT DAYS』 posted by (C)shisyun


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