中東問題再考 | 空想俳人日記

中東問題再考

 中東問題とよく言われるが、その問題そのものがよく分からない。極論を言えば、何が問題なのか、よく分からないのだ。どんな問題? どんなもんだい!と言い切ることに立ちはだかる壁よ。

中東問題再考01 中東問題再考02 中東問題再考03

 どうやら、メディアや「専門家」が中東問題を分かりにくくしてきたらしいのだ。読む価値ありそうだな。

中東問題再考04

 ということで、「再考すべきだぞ」という、この本を入手したわけだ。


第一章 アフガニスタン報道が隠すタリバンの本性

中東問題再考05

 驚いた。いや、著者の飯山氏の発言に対してではない。日本のメディア報道や「専門家」解説に第二次タリバン政権を擁護する声がかくも多いことに。
 それらの擁護に対し、飯山氏は的確なデータや資料を提示して、「騙されるな」とバサバサ切り崩していく。その子気味良さ。
《手に入れた資金や物資を、タリバンがアフガニスタン国民のために使う保証は一切ありません。アフガニスタン支援はタリバン支援、テロ支援になる可能性が否定できない。》
 それなのに人道的支援だと言って、日本は多額の資金を送っている。タリバンは親日派だ、なんて云う者もいる。真のパートナーは中国であり、ロシアなのだ。西洋諸国が経済制裁をする中、日本だけが銭くれる。だから、日本には、いい顔を作って親日を演じているだけだ。いいように騙されている日本国民。その国民を洗脳しているのがメディアや専門家なのだ。もちろん、彼らが言うように、西洋諸国やアメリカが悪い面もある(ここには書かれてないが)。元をただせば、西欧諸国は、大航海時代以降、未開発地域を占領し、植民地政策で大きくなってきた。民族はいやおうなし分断され、勝手な国境も引かれ、そうしてアメリカ合衆国という国も生まれた。
 今回も、アメリカの支配下があったが、その中途半端な撤退に、全ては西洋諸国の代表であるアメリカが悪いと、アフガンの悪の根源をアメリカに置き換えたのはメディアと有識者だ。そして、タリバンを、その被害者、タリバンは、もともとアフガン=タリバンだ、みたいな画一的な論考をするようになった。アメリカが加害者ならタリバンは被害者だ、そんな画一的な構図しか描けないのが日本のマスメディアであり有識者だ。ここには、アフガン国民の日々がどうであったか、タカの目すぎて彼らには見えていないのだ。
 簡単な話だ。アフガニスタン国民の投票でタリバンが第二次政権を得たのではない。力で得たのだ。ありえないが、日本に置き換えてみようか。1945年、日本は敗戦記念日を迎えた。その後、アメリカのGHQが入って来た。占領下だ。そして、GHQ撤退の際、もし、東条英機が戦犯で処刑されてなく、今でいう自衛隊を率いてクーデターを起こし、もう一度、大日本帝国を築いていたら・・・。誰もが、ブルブルブルと寒気とともに「そんなこと、あってはいけない」思うだろ。それが、アフガンでは起きてるんだよ。二度と嫌なタリバン政権に。
 タリバンは、日本からの金で、ロシアや中国から武器を得て、その武器で、アフガンの少数派や弱者を殺害しているのだ。ボクらの税金が政府を通して、アフガニスタン国民の素晴らしい仁道者を銃殺してるかと思うと、タリバンを支援する政府や有識者の言葉が空恐ろしくなってきた。 
《アフガニスタンで中学校に通った少女は1995年には11%でしたが、第一次タリバン政権下の5年間(1996年9月~2001年11月)には0%となり、第一次タリバン崩壊後からは2003年に6%、2006年に15%、2010年に33%、2018年に40%と大幅に増加しました。ところが、第二次タリバン政権は女子が中学に行くことを禁じたため、この数値は再び0%となりました。
 女子が学校に行くことを禁じ、少女を妻としてカネで買い取り、女性が社会に出て仕事をすることを禁じ、言えに閉じ込め、権利を求めてデモをした女性を公衆の面前で鞭打ちしたり拉致して連れ去ったり、女性警官や女性判事、女性人権活動家、女性スポーツ選手を脅迫したり殺害したりしているのは、米国ではなくタリバンです。》
 タリバンは何も変わっていない。男尊女卑・女性差別を続けている。
《国家の公的機関として自爆部隊が設置され、自爆部隊を主導しテロリストとして指名手配されている人物が内相を務め、自爆実行者が賛美され、その家族がカネや土地で報いられるというのが第二次タリバン政権の実態です。》
 食いっぱぐれたくなければ息子を自爆テロ要員に差し出せ、そんなタリバンを日本は「テロリスト扱いするな」と言っておるのだぞ。
 中には、タリバンのイスラム法を日本の侍魂と似ている、そんな評論家もいるそうな。おいおい、それで「大和魂」でも持ち出すのか。戦前の日本の帝国主義に戻りたいのか。日本人の中には、神風特攻隊が好きな人が多いという。その一番有名な人が安倍首相だったという事実。日本は、国粋主義に走っていたんだよ。
《タリバンは女性警官が仕事をすることを禁じただけでなく、妊娠中の女性警官を家族の前で殺害して脳みそを引きずり出したり、拉致して連れ去ったりするなどの蛮行に及びました。日本が大金を費やして育成したはずの女性警官たちは、タリバン支配下で仕事を失っただけでなく、女の分際で米国の傀儡である旧政権下で警察業務に携わっていた背信者として、処刑対象にすらなっているのです。これが第二次サリバン政権の現実です。》
 こんなことが行われてる今のタリバン第ニ次政権に、有識者は評価し政府は金を与える。なんでえ。
 ここには、アフガニスタンを支援した中村哲医師のことも書かれている。朝日新聞の記者がタリバンを取材し2021年に記事にしているのには、
《パキスタン・タリバンのメンバーについて「ナカムラを殺す気はなかった」》
 と擁護するものだが、ボクは以前、中村哲氏の『アフガニスタンの診療所から』を読んでいる。その本によれば、彼は、アフガンで灌漑事業も行っている。灌漑とは、水を制するものだ。「水を制する者、土地も国も制す」と言う。明らかに、そんな中村氏をタリバンは放置しておくわけにはいかなかったろう。彼は殺害を命じたのだと思う。
 確かに先進諸国は、日本も含め、発展過剰国であり、文明の野蛮を孕んでいる。だからといって、第二次タリバンを支援する論理にはつながらない。第ニ次タリバン政権を多くの有識者が多くの書物で、擁護している恐ろしさに、私は驚愕する。タリバンは、ヒットラー、プーチンと変わらない独裁者である。日本の有識者が書いている本が信じられなくなっている。


第二章 「イランは親日」言説が覆い隠すイランの現実

中東問題再考06

 おそらく、この本で、この第二章が最も重要な章ではなかろうか。
 朝日新聞2019年5月、「イランの親日、今はアニメ 国交90年、険悪期一切なし」だそうな。90年の間に何も変わらない国交をしてきた国で、親日の国と言いたいようだが、90年の間に、イラン自体は変わっているのだ。最も大きな転機は、1979年のイラン・イスラム革命とイスラム教シーア派指導者ホメイニによる全権掌握だ。これで、イランは、この革命で、新米国家から半米国家へと180度変わる。
 なのに、日本は、ずっと変わらぬ外交、イランは親日派だから、と。ちょっと待った。テレビドラマ「おしん」が最高視聴率90%で「キャプテン翼」も大人気を理由にするが、それはイラン国民であって、イラン国の体制ではなかろう。日本でいえば、日本政府=日本国民ではないはずだ。もちろん、日本は民主主義で、議員も直接選挙で選んでいる(残念ながら首相は直接選挙じゃなく絶対多数の党首になっちまうけど)から、まだ、民意が反映しているかもしれないが、イランはそんな国じゃないのだ。むしろ、「おしん」が人気を得たのは、日々の暮らしに「忍」の一字、国の圧政に耐え忍ぶ、そこが共感を得たのではなかろうか。
 あと、「日章丸事件」。
《1951年にイランが石油国営化を宣言した後、米英がイランに対して制裁を行使し、英は声明の中で「イランから原油を購入すれば、英国はその国に反した措置を講じることができる」とした。この中で日本の出光興産は、英国の攻撃を受けタンカーが沈没し会社が倒産するリスクがあったに拘わらず、イランの人々を支援し日本とイランの友好関係を維持するため、アバダンにタンカーを派遣し、イランからの石油を日本に届けた。(中略)この出来事がきっかけで、イランの人々は日本に対してよいイメージを抱いている。》
 上記はイラン国営ニュースサイトが2018年9月のものだ。
《現在のイランの体制は反米イスラム体制であり、イラン国営メディアは「反米・反英の気概を持っていた頃の日本」を称賛し、日本を「反米仲間」に引き込む目的で日章丸事件を利用しているのです。》
 では、日本は「反米仲間」になれるのか。イランと寄り添っていいのか。米軍基地や極東基地としての日本の立場はどうする。そして、イランが本当に信頼してよい国なのか。イスラムと仲良くなるには、民主主義を捨てねばならないぞ。
 何故なら、イランは、イスラム国以外を国としては認めない、そういう体制組織なのだ。そして、さらに、イランは、自国の国民ほったらかして近隣の反米イスラム国に対し武器や武装への支援をしているのだ。イランことするな~、言いたいが、彼らの野望は、世界が全てイランの指導の下にイスラム主義になること、だ。もし、イラン国民ではなく、イラン体制が親日だとすれば、彼らは我が国をイスラム支援の国にしたいのだ。
 2019年の安倍首相のイラン訪問(福田首相の訪問以来41年ぶり)が実証している。彼がイラン訪問しイラン最高指導者ハメネイと会談した日、日本企業のタンカーがホルムズ海峡で何者かによって攻撃を受けている。このことをアメリカは
《「イランは日本のタンカーを攻撃し、船員の命を脅かすことで侮辱した」》と述べているのに、日本は何も抗議していない。
《元外交官で中東外交の「専門家」である宮家邦彦は、このタンカー攻撃について「ショックを受けた」と述べ、なぜショックを受けたかというと「イランがそんな馬鹿なことはしないだろう」と思っていたからだ、と述べました。》
 まさに、「親日」だとの思い込みと現実のギャップに驚いているのだ。
 安倍がイランを訪問したのは、アメリカとイランを繋ぐパイプ役をやろうとしたんだよね。
《核開発についてイランが米英仏独露中の6か国と2015年に締結したいわゆる「核合意」や制裁をめぐり、安倍は対立が深まるイランと米国の相互に「パイプ」を持つ稀有な存在として両者の仲介役を果たせるはずだ、》
 核合意については、投げ出したアメリカもアメリカだけど、口約束だけで核開発を実行し続けたイランもイランだ。
《ところがハメネイは安倍に対して「トランプ(米大統領)には返事はしない」と述べ、安倍との会談後には改めて米国を非難する声明を発表しました。》
 イラン体制は決して親日なのではないのだ。
《日本はイランにパイプなど持っておらず、ゆえに米国との仲介役など果たせるわけがないこと、それどころかイランは日本を「米国の犬」とばかりに見下していることが判明した瞬間です。》
 こうして親日はイラン国民であって、イラン指導者ではない。なのに、いつまでもイランに媚びを売り続ける。
 先にも述べたが、イランは、イスラム世界を作り上げたがっているのだ。それは、近隣のイスラム主義国への肩入れである。
《イランは世界の覇者になること、世界征服を目指しています。》
 簡単に言えば、国外へ「革命の輸出」をしているのだ。
《イランという国が自国や自国民の豊かさや安全、繁栄を追求する「ふつうの国」ではなく、革命の輸出により世界制服を成し遂げる野望を優先させる「極めて特殊な国」だという事実は、イランを理解する上で極めて重要です。》
 イランによる日本所有タンカーに対する自爆ドローン攻撃について2021年8月に出されたG7外相声明は次の通り。
《「イランの行動、代理勢力及び非国家軍事主体に対するイランの支援と相まって、国際的な平和と安全を脅かしている。我々はイランに対して、関連する国連安保理決議に合致しないすべての活動をやめるよう求め、またすべての関係者に対して、地域の安定と平和の醸成に苑説的な役割を果たすよう求める」》
《イラン代理勢力のうちヒズボラ、ハマス、イスラミック・ジハードは、日本の公安調査庁の『国際テロリズム要覧2021』にも記載いされており、ハマスについては国連安保理決議に基づいて、外国為替及び外国貿易法に基づく資産凍結措置の対象としています。》
 ハマスは、今、メディアが視聴率欲しさにウクライナそっちのけで報道しているイスラエルのパレスチナ自治区であるガザ地区を全権掌握している。つまり、ハマスの後ろにはイランがおり、イスラエル全土をイスラムの国にせんとしているのだ。
《イランはこれらのテロ組織に資金や武器を与え、あるいは戦闘員に訓練を施したり武器の製造法や使用法を教え込んだりして強大化させ、代理勢力化して意のままに操り、各々の国や地域を実質的に乗っ取り、イランの敵である米国やイスラエル、サウジの権益を攻撃させたり、イランに敵対的な住民を殺害させたりしています。これが「革命の輸出」の実相です。》
《イランは中東最大の不安定要因であり、イランが介入して乗っ取られた国ではテロと戦争、殺戮が続いているだけでなく、経済は破綻して人々は貧困や飢餓に苦しめられています。イランが関与したことで豊かになったり安定したりした国は、ひとつもありません。イランは革命の輸出の名の下に、実際はテロと戦争と殺戮と貧困と飢餓を輸出しているのです。》
 シリア然り、レバノン然り、イエメン然り。あ、これに、イラクを加えた4か国を、オバマ政権末期(制裁解除しちゃった)に「準占拠」下に置いたのだ。
 2020年1月に米軍作戦によって殺害された革命防衛隊のソレイマニ司令官にたいし、日本のメディアや「専門家」は、「イランの英雄」として死を悼んでおるが・・・。
《イラン系の人権活動家サハル・カスラエはユーチューブに、「メディアというプロパガンダ・マシーンがソレイマニを褒め称えていることに大きな憤りを感じます」と投稿しました。彼女はソレイマニについて「この男はアメリカ人だけでなく、イラン人、イラク人、イエメン人、アフガニスタン人を手にかけてきたことをご存知ですか? 私たちはいつからテロリストの死を悼み始めたのでしょう?」と疑問を投げかけ、「イランの人々は極めて多くの人を虐殺したこの男の死を喜んでいます」「イラン人には宗教の自由はありません。言論や平和的デモを行う自由もありません。体制に逆らう人間は逮捕され、投獄され、拷問されます」「イラン当局は『アメリカに死を!」と40年間言い続けてきました。それを人々は言わされているだけです。私は7歳の頃から学校で『アメリカに死を!』と言わされてきましたが、自分でも何を言ってるのかわかりませんでした」などと「イランの真実」を明かしたうえで、ソレイマニ殺害作戦を決行したトランプ大統領に感謝しました。》
 第一章のアフガンと同様、イランも女性差別大国である。児童婚や女性への暴力は絶えない。
《国際児童支援団体セーブ・ザ・チルドレンは、児童婚によって少女は子供時代を奪われ、教育の機械も奪われ、性的に搾取されながら妊娠と出産を強いられ、母親になることを強いられ、家事労働を強いられる、早すぎる妊娠、出産によりHIVや子宮脱、子宮破裂などで死に至ることすらあると警告しています。》
 同性愛者への強制手術や処刑。
《イランは同性愛行為に死刑を科している国の一つでもあります。》
 ああ、もっといろいろ書きたいけど、この章の最後を引用しよう。
《米国が理想的だとは言いません。しかし私たち日本人は、メディアや「専門家」のイラン擁護論に騙されて、「日米同盟を維持している私たちは間違っている」と勘違いしたり、「私たちは正しい側に立つためには日米同盟を捨てなければならない」と早とちりしたりして、民主主義を捨て、あらゆる自由や人権を捨て、人権蹂躙テロ支援国家イランに寄り添う選択をするほど、愚かではないはずです。》
 その通りだ。ボクも、アメリカを素晴らしい国とは思っていない。ただ、アメリカを悪にすることで、イランを正義にするのは、あまりにも短絡過ぎる。男にありがちな「ヒーローもの・戦隊もの」に冒された男どもが専門家に多いからではないか。正義と悪の図式をすぐに描きたがる。
 第一、日本がアメリカとの同盟を止めることができるのか。日本は、世界の中で、どういう位置づけにおるのか、おそらく、世界の人々は知ってても、日本人は分かっちゃいないのかもしれない。詳しくは述べないが、日本が民主国家であることができるのは何故か。
 そして、ちょっと書き忘れたが、イランよりも仲良くすべき中東の国があるではないか。それは、日本の国益を考えれば、サウジアラビアであり、アラブ首長国連邦だ。日本の原油輸入先の1位が34.1%のサウジであり、2位が32.7%のUAEだ(今、イランは0%だ)。そして、どちらも、対イラン制裁を支持する国だ。
 以上、第二章、おしまい。


第三章 「トルコは親日」言説が覆い隠すトルコの現実

中東問題再考07

 さて、トルコも日本では「親日」と言われておる。その象徴的な事件は、1890年の和歌山県沖でのエルトゥールル号遭難事件と、1985年の恩返しのイランからの日本人救出だ。
《「エルトゥールル号」とは1890年に日本を訪問したオスマン帝国の軍艦のことです。和歌山県沖で難破し587人が死亡したものの、日本人の献身的な救助活動により69人が生き残り、翌年に日本の軍艦に乗って帰国しました。》
《一方、トルコ航空による邦人救出は1985年の出来事です。イラン・イラク戦争中、イラクのフセイン大統領がイラン領空の全航空機を攻撃対象にすると宣言した後、トルコ政府がイランに航空機を送り、テヘラン在住の日本人215人を救出したというものです。》
 トルコは自国民より日本人を優先している、その理由が「エルトゥールル号事件での日本の奉仕の心を決して忘れていない」と。いい話だ。だが、それはまだ、トルコが民主化の道を歩んできた時代のこと。
 2003年、エルドアンがトルコ首相に就任、2014年には大統領選で当選。2017年、国民投票を得て実験型大統領制導入のための憲法改正を行い、2018年に大統領に再選。
 ここから、トルコは大きく、民主化から逆行していく。イスラム・イデオロギーを取り入れていく。国民の多くは、イスラム教徒であり、彼は、一時期、景気を回復させ、人気を得ているのだ。
 だが、強硬路線を取り始めてから、トルコは変わっていった。そのことを、またもや日本のメディアや専門家は、口を閉ざしているのだ。
 エルドアン政権は、一章のタリバンや、二章のイラン指導者と変わらない。
《大統領に異議を唱える人がテロリストとされ、「テロ組織との関係」を疑われた人が数十万の単位で拘束されたり、解雇されたり、「国境を越えた抑圧」のターゲットとなり拉致されたり殺されたりする国。これが日本のメディアや「専門家」が伝えないトルコの実像の一つです。》
 報道の自由も失われ、ジャーナリスト弾圧も。「警察の横暴さが増したことで、ジャーナリストが公共のデモや抗議行進を取材することはほとんど不可能になった」と。
 そして、女性への暴力およびDV防止条約」から離脱もしている。
《エルドアンは2014年11月に開催された「国際女性と正義サミット」で、男女は平等ではない、イスラム教は女性に「母」という特別な地位を与えている、フェミニストにはそれが理解できないだろうと述べました。2016年5月には、避妊や妊娠中絶は国家反逆罪に等しいと非難し、女性は人前で笑うのを避けねばならないと述べました。》
 さらに「『仕事をしているから母親にはならない』という女性は、実は自分の女性性否定しているのだ」とか「母性を拒絶することは人間性を放棄することを意味する」とも言っている。
《イスタンブールに拠点を置く社会民主主義財団が5歳から25歳のトルコ国民に対し2020年に実施した調査では、62.5%が海外移住したいと回答しています。世論調査会社Avrasyaが2020年に実施した調査でも、18歳から29歳までの76%が海外移住したいと回答しています。》
《2015年にEU諸国で亡命を申請したトルコ人は2995人でしたが、2020年には1万8145人に急増しました。》
 トルコ人がトルコを脱出したがっている、インフレもあり、そんなことが起きている今。
《エルドアンが強権・独裁化し、敵対者は直ちにテロリスト認定され、表現の自由、報道の自由が失われ、女性、性的少数派、宗教的少数派の人権が弾圧され、エルドアン特有のイスラム金融政策の強行によりインフレや通貨安が続いて一般家庭の家計を圧迫し、子供が搾取され、若者が絶望して海外流出しているという、これがトルコの実情です。》
 あと、トルコは今、イランのように、近隣諸国を分捕り出している。シリア、イラク、ギリシャ、キプロス、リビアなど。トルコは、かつてのオスマントルコの領土回復を目指している。「新オスマン主義」と呼ばれている。
《エルドアンはギリシャに軍艦を派遣し、イラクとシリア領内に軍事侵攻して軍を駐留させ、キプロスを占領することにより、着実にオスマン帝国復活の実現に邁進しているのです。》
 そろそろ締めます。
《私たちが認識すべきは、エルドアン支配下のトルコにせよ、イランにせよ、タリバンにせよ、「イスラム国」にせよ、イスラム主義を掲げる主体が武力で他者を制圧し、異論を唱える者を容赦なく拘束したり殺害したりしているという現実です。》
 これに対し、日本の「専門家」は・・・。
《イランについてはイランの体制にとって都合のいい見方しか提示せず、トルコについてはエルドアン政権にとって都合のいい見方しか提示しません。それによって彼らが隠蔽しているのは、イランの体制やエルドアン政権が日本の奉じる自由や民主主義といった価値観の対極に位置し、自国民を抑圧し、苦しめているだけでなく、自己中心的で独善的なイデオロギーを掲げて他国に軍事介入して災禍を広げ、それによって中東全体を不安定化させているという現実です。》


第四章 なぜイスラム諸国は中国のウイグル人迫害に声を上げないのか

 世界は、親中派の国が増えている。
《2021年10月の国連総会でも、日米欧など43か国がウイグル自治区で「拷問や性暴力といった人権侵害が組織的に行われている」と懸念を表明し、国連人権高等弁務官らによる現地訪問を認めるよう中国に訴える声明を出しました。ところがこれを数で上回る62か国が、ウイグル自治区の状況は中国の内政問題であり他国が人権を口実に干渉すべきではない、という中国擁護の声明を出しました。》
 中国擁護国には、親日と言われてるイランやトルコ、カタールやUAE、サウジやエジプト、シリアなどのイスラム諸国も含まれている。
《トルコのエルドアン政権による反体制弾圧を厳しく批判し、トルコ国籍を実質的に剥奪され、2021年に米国籍を取得したNBAスター選手エネス・カンター・フリーダムは、この問題についても批判しています。2021年10月には中国の習近平国家主席を「残忍な独裁者」と呼び、「現代の奴隷制」「言い訳はたくさん」とメッセージの書かれたバスケットシューズを披露して、中国によるウイグル人強制労働やそれを「利用」するナイキを批判し、11月には「北京2022にノー」と書かれたシューズで北京五輪ボイコットを呼びかけました。》
 エネスはチベットや台湾の独立も支援している。
《エネスの中国批判の背景には、トルコをはじめとするイスラム諸国が中国との経済関係を優先させ、同朋であるイスラム教徒のウイグル人が中国共産党によって迫害されている実態から目を背けている、という現実があります。》
 本来、イスラム教ではイスラム教徒同士は兄弟であり助け合わねばならないはずなのに、イスラム諸国はウイグル人よりも一帯一路を取った。
《2013年から中国の外交政策の柱となった巨大経済圏構想「一帯一路」においては、イスラム諸国全体が重要なカギを握っています。》
《イスラム諸国にとっても中国は歓迎すべきパートナーでした。なぜなら内政不干渉を掲げ、経済的な互恵関係「のみ」を望むと主張する中国は、欧米とは異なり人権問題に一切口出しせず、気前よく投融資をし、さらには原油の買い手にもなってくれたからです。だからイスラム諸国側も、中国の人権問題であるウイグル人迫害については内政問題だとして口出しをしないのです。これは「取引」です。》  
 アメリカはシェール革命(今まで困難であったシェール層からの石油や天然ガスの抽出が可能になったことにより、世界のエネルギー事情が大きく変わることを指す。詳しくはネットで調べてね)で、世界最大の原油生産国になり、中東産油国に依存する必要がなくなった。その米国に代わり世界最大の原油輸入国となったのが中国。なので中東諸国にとって、中国というお客様は神様。
 今、この世界は、この本を読んで、恐ろしい方向に進んでいる、そう思う。なのに、中東情勢の専門家やメディアは、この恐怖を語らない、知らせない。日本の庶民は、「最近のイスラムも民主化してるんだあ」と思っちゃうじゃないかあ。本当に。この本を読んでよかった、そう思う。イスラム教では兄弟で救うべきウイグル人を、そこだけは、ご都合主義の中国様様のイスラム諸国よ。何故に、こんなに大人げない連中が各国の覇者・指導者をやってるのか、何処の国民も(日本も含めて)、そんな指導者を信頼できるわけないのだ。エネスが批判したナイキのシューズばかりじゃなく、ボクたちは、安い賃金での強制労働で出来たメイド・イン・チャイナを買っているかもしれない。メイド・イン・チャイナは安くても買わないようにしたい。中国は毛沢東が退いた後、いい方向に向かっていると思っていたのだが、今、最高のデジタル社会を築きつつ、最悪の国民監視社会を構築し、しかも世界経済を人権問題そっちのけで邁進している。習近平の独裁政治社会だ。
 このままいけば、奴隷と支配者の構図は高まりながら、経済が人権無視の世の中を作りかねない、それがもう中国で始まっている。これを制する国は、アメリカも含めて、今や西欧諸国にもどこにもない。せめて、日本だけは、イスラム諸国に代わって、ウイグル人の人道支援をしていきたいものだ。
《イランの「親日」、トルコの「親日」はいずれも、過去の歴史的事象に由来する「ノスタルジー(郷愁)」に過ぎません。しかしイランとトルコの「親中」はいずれも、現在進行形の現実的事象であり、それぞれの国の存亡がそれにかかっているといっても過言ではない重大事案です。イランは「親日」、トルコは「親日」という「宣伝」を見たら直ちに、イランもトルコもそれよりはるかに「親中」であるという事実を思い起こすべきなのです。》


第五章 「パレスチナ=善、イスラエル=悪」の先入観が隠す事実

中東問題再考08
 
 日本政府は、イスラエル、パレスチナ、二国家が共存することを支持。ところが、メディアや専門家はパレスチナを支持。パレスチナはイスラエルを排除しようとしているので、メディアや専門家はイスラエルを排除する側である。
《イスラエルとパレスチナは1993年、パレスチナ暫定自治に関する宣言、いわゆるオスロ合意に同意し、1995年にはパレスチナ自治政府(PA)が樹立されました。1996年に実施された第1回パレスチナ自治政府長官長官選挙でもPLOのアラファトが議長に選出され、以来ファタハがPAの主流派、パレスチナを代表する存在として君臨し続けています。》
 ここまでは、イスラエルVSパレスチナの構図である。が、
《2006年のパレスチナ立法評議会選挙では、PAの汚職に不満を抱く人々がハマス支持に回り、ハマスが過半数の議席を獲得するに至りました。ハマスとファタフハは連立政権を樹立するも翌年には対立が悪化、ハマスが武装蜂起してガザ地区内の大統領府や保安警察本部を占拠し、ガザからファタハの武装勢力を一掃してガザの全権掌握を宣言するに至りました。》
 ガザ地区はハマス、ヨルダン川西岸地区はファタハが支配。両者は反目しあっている。ハマスはイスラム過激派テロ組織である。
《第一にハマスは「安い武器でイスラエルに立ち向かい、かわいそうなパレスチナを守る正義の味方」などではなく、「パレスチナ人を抑圧し、利用して戦争犯罪を犯しているテロ組織で、パレスチナ人はハマスの被害者だ」ということです。第二にイスラエルは国際的に認められた国家であり、自衛権を有している、ということです。」
 なのに、日本のメディアや専門家は、エルサレムの神殿の丘で暴動を起こしたハマス親派たちを、ただの礼拝者として、イスラエル警察が鎮めようとしたことに対し、警察の礼拝者への暴力だとしたり、ガザに向けたイスラエルの攻撃ばかりを非難し、その前にハラスがイスラエルに対し無差別ターゲットのロケット弾を撃ち込んだことを言及しない。そしてなにかとあれば、「圧倒的な差がある」から「かわいそうだ」とハラスを擁護する。
 国連パレスチナ難民救済事業団(UNRWA)の難民キャンプで育ったパレスチナ人の人権活動家バーセム・イードの「パレスチナの同胞へ」という公開書簡(2021年5月)から引用したい。
《ガザに住むパレスチナ人の皆さんを苦しめている主な原因がハマスであることを認識し、覚えておくことは極めて重要です。(中略)そして今、ハマスは特定のターゲットや戦略を持たないまま、イスラエルの最も人口の多い地域に対し無差別砲撃をしています。しかし私はガザの情報筋から聞いて、ハマスが発射したロケット弾の25%がガザ内に墜落していることも知っています。ハマスはそれをイスラエルのせいにしつつ、50人もの(ガザの)民間人を殺害しているのです。またイスラエル軍が迎撃できなかったハマスのミサイルの一部が、現在アラブ系イスラエル人が住んでいるヤッファ、アブゴーシュ、ロッドなどで爆発しています。あなた方はそれを誇りに思いますか?(中略)考えてみてください。ソーシャルメディアで洗脳され、騙されて警察官にレンガや火炎瓶を投げつけた若者たちはどうなるのか。ハマスの扇動の結果、エルサレムで何人の同胞が重傷を負ったのか。ハマスのロケット弾がガザに墜落した時、同じ運命を辿った人は何人いるのか。ましてや、イスラエルの反撃に対して人間の盾となった何十万人ものあなた方、私の兄弟姉妹はどうでしょうか。》
 イスラエルのユダヤ人を殺傷したパレスチナ人を英雄として称えるハマス。そして、それは、ヨルダン川西岸地区を支配するパレスチナ自治政府(PA)も同じだ。
《1964年のパレスチナ解放機構(PLO)設立当初にさかのぼる「慣行」です。PLOは設立以来、ユダヤ人を殺傷したパレスチナ人テロリストを称賛するだけじゃなく、彼らとその家族に毎月年金を支給してきました。》
 また、批判や抗議をするパレスチナ人を暴力的に弾圧するのも、PAとハマスは共通している。
 そんなパレスチナに対し2400億円以上もの日本国民の税金が支援金として流れている。それは、国連パレスチナ難民事業機関(UNRWA)を通じてだが、このUNRWAの5つの支部の一つであるガザ支部がハマスに支配されている疑惑がある。詳しくは述べないので、本書を買って読んでね。
 最後に、パレスチナ人の元テロリストでイスラエルの刑務所に服役し、出所後に大学で学びパレスチナの大統領になることをめざしているムハンマド・アーレフ・マッサードが2021年2月にイスラエルの「マコール・リション」紙にパレスチナに巨額の支援を注ぎ込んでいる世界各国の人々に向けて公開した書簡から引用したい。
《私の名前はムハンマド・アーレフ・マッサードで、パレスチナのジェニン地区にあるブルキンという村の出身です。1975年に生まれ、13歳の時にテロ組織に勧誘されてイスラエル側と果敢に戦いましたが、悲しいことにパレスチナの指導者たちは自由を求めず、平和も求めず、私たちが巻き込まれている戦争と破壊から利益を得ていることを知りました。私たちの国民がたくさん死ねば死ぬほど、彼らは世界の自由で善良な人々から注目され、私たちの土地の破壊の写真が世界的に発表されるたびに、世界は彼らに大量の援助を与えています。
 私はパレスチナの人々を占領している真のテロリスト、つまり腐敗した当局とそこから給与を得ているパレスチナのテロ組織の犯罪を世界に明らかにすることにしました。
 あなたがもしパレスチナ人の殺害、破壊、包囲をやめさせたいなら、そしてパレスチナ人の不公平と貧困を終わらせたいなら、腐敗した独裁者が運営するパレスチナ自治政府への支援を打ち切ってください。パレスチナ自治政府にお金を送らないように、政府にお願いしてください。あなたの国の貧しい人々に向けた方が良いにもかかわらず、あなたの政府は私たちに多額の資金を送っています。
 パレスチナ自治政府やテロ組織への送金は、私たちの貧困と破壊を助長します。友人よ、私たちパレスチナ人の殺害、貧困、破壊を助長する人間になってはいけません。
 私たちは弱く、人々は腐敗した当局とテロ組織に支配されています。私たちは世界の他の人々と同じように自由を求め、独立した国家を持ち、平和と安全の中で暮らし、経済を発展させ、子供たちのために良い未来を築くことを望んでいます。
 私たちの要求は世界のすべての国に受け入れられていますが、腐敗した独裁者である当局やテロ組織の指導者は、私たちのための平和を望んでいません。なぜなら平和は、戦争がもたらすようなお金を彼らのポケットにもたらさないからです。
 パレスチナ人への支援をやめてください。私たちはあなた方よりも多くのお金を持っていますが、それが泥棒やテロリストの手に渡っているのです。
 私たちはあなた方のお金を必要としていません。なぜならそのお金は私たちの国民を殺すからです。パレスチナ人への送金を止めない限り、パレスチナでの殺害、飢餓、破壊は止まりません。あなたが送るお金は、パレスチナの人々を飢えさせている独裁者、テロリスト、強盗の力を増大させるのです。》


第六章 中東問題をわかりにくくしてきた七つの要因

 以下、中東問題をわかりにくくしてきた七つの要因をタイトルだけ並べるね。
①反米中東論
②「英国の三枚舌外交のせい」という歴史認識
③反帝国主義、反植民地主義、反資本主義、反近代
④「パレスチナは善でイスラエルは悪」という道徳劇
⑤本当の弱者や本当の被抑圧者を無視
⑥反イスラエルの「北米中東学会(MESA)」
⑦「パレスチナの大義」への固執
 内容については、この本を買って読んでね。
 ただ、面白い個所があったので。
 2009年2月に「エルサレム賞」を受賞した際の作家・村上春樹のスピーチについての報道。
《村上は「システム」を壁に、個人を卵に例えて、「高い壁に挟まれ、壁にぶつかって壊れる卵」を思い浮かべたとき、「どんなに壁が正しく、どんなに卵が間違っていても、私は卵の側に立つ」と述べました。》
 これに対し、朝日新聞は、
《村上春樹さん、エルサレム賞記念講演でガザ攻撃を批判」というタイトルで、「イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃に触れ、人間を壊れやすい卵に例えたうえで『私は卵の側に立つ』と述べ、軍事力に訴えるやり方を批判した」と報じました。》
 とあるが、違うと思う。ここにも
《村上は実際には、「爆弾犯や戦車、ロケット弾、白リン弾が高い壁で、卵は被害を受ける人々だ」》と。
 彼は、壁はイスラエル軍だけじゃなく、ハマスもであり、卵は、それらの攻撃で被害を受ける一般国民のことを言っているのだ。メディアも専門家も、「パレスチナは善でイスラエルは悪」の善悪図式しか描けない、そこに、苦しむ民衆が見えていない、あるいは、見て見ぬふりをしているのだ。
 あと、これも面白い。アブラハム合意でイスラエルとアラブ諸国の間に外交関係が確立されたことについて、
《他国主義で国際問題を解決しようというアブラハム合意の主旨は、米バイデン政権の外交方針にも一致します。そして対話、平和、共存といった理念は、本来リベラルのめざすところでもあるはずです。にもかかわらず日本のメディアや「専門家」がアブラハム合意を否定し非難し続けるのは、彼ら自身が中東地域の対立と紛争の「受益者」であり、中東が平和になってもらっては困るからでしょう。》
 なるほど、中東問題がいつまでも紛争で問題になっててくれねば、専門家はおまんまの食い上げになってしまうということか。メディアも、平和じゃ視聴率が取れるニュースにならへんからか。
「今日も中東はポカポカ日和でアブラハム合意のあと、みんなで今日も楽しい昼食会を開いて和気あいあいと」ではニュースにならん。中東は、メディアと専門家の懐を肥やす格好の材料かもしれない。
 確かに、過去、英国の三枚舌外交もあったろうし、西欧諸国が、帝国主義時代に植民地政策で民族が国境によって分断されたり、ひとつの国で対立することにもなった。これは事実だが、それは歴史的事実であって、今を紐解くものではない。ただ、それは、歴史認識であって、現在の中東を、それで判断するのは、古いパラダイムにしがみついてるだけで、今起きていることが見えなくなる。
 ボクは思う、中東の人と仲良くするとは、中東の指導者と仲良くすることではない。
中東の指導者から、迫害を受けている人々と仲良くすることなんだ。何故なら、ボクは日本政府ではない、日本国民だ。だから、他国を考える場合でも、その国の国民のことを考えるべきだと思う。
 2021年7月にイスラエルとUAE間で、3人の腎臓提供者が3人の患者を救った臓器移植協力が行われた。スタンフォード大学のアルビン・ロスのマーケットデザイン理論が使われたそうだが、
《ロスはこの臓器移植について「爆弾を交換するよりも腎臓を交換した方がいい」と述べました。》
 いい話だ。そして、最後の引用。
《過激派やテロ、不寛容に対する解毒剤、処方箋は、共通の利益、共通の展望に基づき、相互に繫栄していこうと合意することの中にしか見出せないでしょう。
 古いパラダイムに固執した争いや対立ではなく、新しい考え方や共通の関心事に基づく対話と和平で隘路を切り開く突破口を作ろうと前を向く中東諸国こそ、私たちが手を携え協力していくべき相手です。》

 以上、本書は、これまで、メディアと専門家たちが、わかりにくくしてきた中東問題を、ものすごくわかりやすいものにしてくれた本である、と思う。


中東問題再考 posted by (C)shisyun


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