図解 いちばんやさしい地政学の本 | 空想俳人日記

図解 いちばんやさしい地政学の本

 この前読んだ本が「禁断の美術でわかる宗教と性」でしょ。本当なら、学生の頃、世界史や日本史で教えてくれてもいいのに、あるいは、美術の時間に教えてくれてもいいのに、でも、誰も教えてくれず、すっ飛ばされたことを、今になって学習しました。
 そして、今回の本は、「地政学」です。これ、社会科で学ぶべきじゃなかったかな。いや、中学は無理だから、高校へ行って、歴史や地理、習ったじゃんね。その、地理の時間に習うべきだったんじゃないかな。この「地政学」。また、学生の頃に学べなかった学問を勉強しました。
 実は、地図を見ながら、その国が何処にあって、その国が地理上どういう戦略を作るのかが、地政学だって。これ、軍事戦略に使われるから、日本では、第二次大戦後、封印された学問だって。また、学べてない学問、勉強するよ。

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 しかし、この本、タイトルにある通り、すごく「やさしい」。地理的条件で各国がどう動くのかを、歴史的なこれまでの動きを地政学で説明しながら、では、今、世界がどうなってるのか、そこまで書かれてる。
 ちょっと、本屋さんのサイトから引用するね。

いま世界では、パンデミックの混乱がつづくなか、ロシアのウクライナ侵攻や切迫する台湾有事、北朝鮮のミサイル発射など、物騒なニュースがたえません。なぜこうした問題が起きているのかを考えるとき、さまざまな解釈の方法があるでしょう。
「地政学」とは、地図をもとにその国の政治や軍事を考えていく学問です。軍事理論でもあるため、戦後の日本では封印されていました。
地理というのは、時代が変わっても変わりません。ですから、変わらない地理をもとにすることで、それぞれの国や地域がとる戦略というのは自ずと決まってくる、と考えられます。となると、いくら世界情勢が混沌としてきても、その国がとるべき一貫した正しい戦略があるはずだ、となります。地政学ではこう考えるわけです。
混沌として先の見えない時代です。だからこそ、普遍的な知である地政学的視点をもつことが大切です。それによって、より自信をもって世界と向き合うことができるはずです。
※本書は2019年4月に小社より刊行された『図解 いちばんやさしい地政学の本 2019-20年度版』を加筆修正の上、文庫化したものです。

 ということで、文庫化に際し、このコロナパンデミック時代も踏まえて書かれているので、ロシアのウクライナ侵攻もきちんと書かれてます。

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 もう、目から鱗です。私たち日本人は、戦後、戦争を二度としないように、軍事理論を学ぶ、この「地政学」は封印されたそうですが、むしろ、これを若い時から学んでいたら、もっと世界が平和であるためにはどうすべきか、いろいろ考えられたのじゃないかと思います。

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 アメリカの戦略、ロシアの戦略、中国の戦略、ヨーロッパの戦略、そして、アジアは。みんな平和とは関係なしに、自国の縄張り争いで今も動いてることがよ~く分かります。なんで、学生の頃に「地政学」、教えてくれんかった。
 学んだからと言って、戦争をしようなんて思わない。むしろ、そういう国と国の争いを見つめる視点ができるじゃないですか。

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 たとえば、日本が日清戦争や日露戦争をしたのは、領土が欲しくて、ではなく、朝鮮半島に中国が南下してくる、ロシアが朝鮮に南下してくる、それを食い止めるための戦い。
 とは言え、だからと言って、戦争が肯定されるものではない。結果、日本は朝鮮へ侵略しているわけだから。
 あと、日本は、戦後、領土を、ロシアとアメリカに分割されなかったのは良かったものの、沖縄がずっとアメリカの支配下だった。これは、ロシア対策ばかりじゃなく、対中国もあってのこと。
 そして、第二次大戦後の朝鮮戦争やベトナム戦争も見えてくる。 
 地政学って、簡単に言うと、地球上の勢力争い。国土を増やすだけじゃなく、隣国とヤバい場所を緩衝地帯(バッファゾーン)にしたり、あと、拠点づくり、港づくり、そして、資源確保、エネルギーを何処から引っ張るか、そんな地図上の戦略です。

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 もう一度言います。地政学は、日本では封印されてた学問。軍事上の戦略もあるから、戦後なくされた。確かに、地政学で戦略立てる必要はないと思いますが、これを学んでいれば、もっと世界史がクリアになってたんじゃないかな。そして、今、一番怖いのは、アメリカでもロシアでもなく、中国。地政学で世界が分ります。

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 地政学とは、地理的な特徴や隣国関係も含めてどんな環境に住んでいるか、その場所で平和に生きるためになすべきことは何で、どんな知恵が必要なのかを考える学問でもあります。
 ランドパワー「陸の地政学」で歴史を眺めると、引っ越しが不可能な国という存在を前提に、各国は地政学的な権謀術数を駆使してサンドイッチ攻防戦を繰り返してきたことがわかる。
 海路で鍵を握るのは半島や海峡であり、これを理解することがシーパワー「海の地政学」の基本となる。

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 日本は、ロシア、中国という二大国家が太平洋に出る際の障害となる、絶妙な位置に存在している。
 なので、ロシアとの北方領土問題は、日米の関係も大いに関係する。プーチンは半々で返してもいい、その代わり、米軍を置くな、とも言った。それに対し、日本はアメリカに何も言えない(日本にはアメリカは自由に米軍基地を置く)。沖縄では「県民も反対してるのに、日本はどうなってる」、プーチンは、「日本主権はないのか」と言うが、結構、的を得ている。プーチンは頭がイイ。
 こうした世界の動きが、「地政学」で見えてくると、今起きていることが、「なんで」ということも見えてくる。

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 だからと言って、先にも言ったように、この「地政学」を使って、軍事戦略を立てる必要性は全くありません。何故なら、私たち人間は、多様な生物を認め合うコスモポリタンとしての志を優先すべきだからです。

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 なので、最後に書かれている「アメリカ以外の国との連携も必要」や「エネルギーの調達先を多角化」は理解できますが、「日本としては、…(略)…独立国家として自主防衛能力を高めることがポイント」には残念ながら賛成しかねます。発射直前のミサイルを叩く「敵基地攻撃能力」は先制攻撃には含まれない、という解釈にも。
 しかし、世界に目を向けるとき、この「地政学」を踏まえておくことは、とても重要ではないでしょうか。


図解 いちばんやさしい地政学の本 posted by (C)shisyun


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