100分de名著 安部公房『砂の女』 | 空想俳人日記

100分de名著 安部公房『砂の女』

 このNHK番組本が出る前に、既に出版されていたヤマザキマリさんの『壁とともに生きる わたしと「安部公房」』を先に読んでいたので、第1章「自由」の壁で、小説『砂の女』についてのヤマザキさんの捉え方を再確認する意味で読みました。

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 この本が、どんな本なのかは、以下、番組紹介の名著アーカイブスから拝借しましたので、確認ください。

安部公房「砂の女」は、戦後文学の最高傑作の一つとも称される作品です。世界20数か国で翻訳、戯曲化や映画化も果たし、今も国内外で数多くの作家や研究者、クリエイターたちが言及し続けるなど、現代の私たちに「人間を縛る生の条件とは何か」「自由とは何か」を問い続けています。番組では、戦後日本文学の代表者ともいえる安部公房(1924-1993)の人となりにも触れながら、代表作「砂の女」に安部がこめたものを紐解いていきます。

舞台は、とある海岸に近い砂丘の穴の中に埋もれかかった一軒家。休暇を利用して新種のハンミョウを採取すべく昆虫採集に出かけた学校教師・仁木順平は、女が一人で住むこの家に一夜の宿を借りることに。ところが翌朝外界へ出るための縄梯子が何者かによって取り外されていました。彼は、村人たちによって砂を掻き出す作業員として幽閉されたのです。その後、さまざまな方法で脱出や抵抗を試みるも、ことごとく挫折。やがて彼はその環境に順応し始めるのでした。果たして砂の穴に閉じ込められた仁木の運命は?

漫画家・文筆家のヤマザキマリさんによれば、この小説には、過酷な現実から逃れようともがく主人公の模索を通して、絶えず自由を求めながらも不自由さに陥ってしまう私たち人間の問題が描かれているといいます。それだけではありません。安部が戦後社会の中で苦渋をもって見つめざるを得なかった「自由という言葉のまやかし」が「砂の女」という作品に照らし出されるようにみえてきます。この作品は、私たちにとって「本当の自由とは何か」を深く見つめるための大きなヒントを与えてくれるのです。パンデミックによって、移動や交流の自由が著しく制限されている私たち現代人にも示唆することが多いといいます。

番組では漫画家で文筆家のヤマザキマリさんを講師に迎えて「砂の女」を現代の視点から読み解き「私たち人間が逃れようのない生の条件」や「自由の問題」「不条理ともいえる社会の中で人はどう生きればよいか」といった普遍的な問題について考えます。


 以上です。

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第1回 「定着」と「流動」のはざまで

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 人間がもたざるを得ない限りない自由への憧れと、それを阻害するものとの葛藤が語られています。

第2回 揺らぐアイデンティティー

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 「アイデンティティ―の揺らぎ」を読み解き、自由へのあくなき拘泥が逆に人間を束縛するという逆説について考えさせられます。

第3回 人が「順応」を受け入れるとき

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 過酷な環境に順応していく仁木の姿を通して、「何かに帰属しなければ生きていけない人間の性」について。

第4回 「自由」のまやかしを見破れ!

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 仁木の創造行為や最後の選択の意味を問うことを通して、私たちにとっての「自由」の意味とは。

 1回から4回まで、筋を追いながら、各々の写真にもあるように、作品の文章も多く引用されているので、あたかも『砂の女』を再読した気持ちになりました。しかも、『壁とともに生きる わたしと「安部公房」』で語られていた『砂の女』以上に、ヤマザキさんの深い洞察力に、驚きとともに共感ばかりしながら、あっという間に読み終えました。

 そして、魅力的な文章が、第4回の最後の方に。

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 私も、是非この『砂の女』が今、多くの方々に読まれることを切に願います。


100分de名著 安部公房『砂の女』 posted by (C)shisyun


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