手塚治虫「ドン・ドラキュラ」 | 空想俳人日記

手塚治虫「ドン・ドラキュラ」

あんたもドラキュラ あたいもドラキュラ 


 

 ルーマニアのトランシルバニアからはるばる日本にやってきて、不法滞在しているドラキュラ親子、ドラキュラ伯爵とチョコラ。 プライドが高いけど何処かお間抜けな父親、思春期で反抗気味だけど父をこよなく愛する娘。そして執事のイゴールと、三人暮らし。
 本作は「ブラック・ジャック」の連載終了後、「週刊少年チャンピオン」に連載されたドタバタコメディで、「ブラック・ジャック」の二番煎じを嫌った手塚氏が、「ブラック・ジャック」とは正反対のマンガを狙ったものとのことですが、実は、本作と「ブラックジャック」の対比は、文庫版の解説においてハイパーメディア・クリエイターの高城剛さんが書いているコメントがとても的を得てて素晴らしいと思います。
 高城さんは、ブラックジャックとピノコ、ドラキュラ伯爵とチョコラの設定の酷似、そしてドラキュラ伯爵とブラックジャックとが近いことを書いておられます。
 面倒くさいので、失礼しますが、ちょっとだけ引用させてくださいな。
「本来、ブラック・ジャックのような存在こそフィクションであり、実在とかけ離れたもののはずだ。それを医学というリアリティのあるフィルターを通すことで、人間の実生活に近いところまで引きつけるのに成功した。ところがドラキュラ=吸血鬼というキャラクターに設定されたドラキュラ伯爵の方が、はるかに人間の心に近いものを持ち、より人間的な行動をとる。ドラキュラというモンスター・キャラクターは人間の一側面であり、人間そのものの中に潜むモンスターを、ドラキュラという形に投影したものだ。だから読者はドラキュラ伯爵をモンスターととらえず、『ああ、こういう人ってどこにでもいるよね』ぐらいに思うのではないか」
 はい、失礼しました。ね、素晴らしいでしょ。ほんと、そのとおり。しかも、「ブラック・ジャック」での緊張の糸がはらりと解れたかのような、あまりにもベタでドタバタなコメディ・ギャグを見ていると、手塚氏はとっても楽しんで描いてられたのではないか、そう思われます。でもね、そんな中でも、さすが先生、泣かせる所ではきちんと泣かせてくれる人情劇もふんだん。
 そうそう、そういえば、娘のチョコラ、ドラキュラだから太陽の光に弱いので中学2年だけど夜間学校に通ってますが、そこでの部活、SF研究会に所属してます。そこの彼女が慕う部長さんというか会長さんというか、名前が大林ノブヒコだってさ。ううむ、楽しい。