(1) 本件の状況まとめ 以上を踏まえ、本件の状況を時系列的に分かりやすく総括すれば、以下のように まとめることができる。
① 最初に原作サイドと制作サイドで、脚本制作の進め方、とりわけドラマオリジ ナル部分の制作手法に関する原作サイドからの「要望」について大きな認識の 齟齬が生じ、これが解消されないままプロット・脚本案のラリーが続けられた こと、また、制作途中でリテイクの発生などのトラブルが発生したことなどに より、制作サイドが考えるよりも、原作者の不満が急速に蓄積していった。
② このような蓄積された不満が、本件脚本家を含む制作サイドへの不信に繋が ってしまい、その結果、やむを得ず原作者としての権利にも言及しながら本件 脚本家を降板させる、またクレジットについても、日本テレビの要望を受け付 けないという事態を引き起こした。そして、これらの求めに対し、最終話まで の放送を守りたい日本テレビとしては、本件原作者の意向に従うという選択 をせざるを得なかった。
③ 一方、このような日本テレビの判断に対して本件脚本家は不満を持ち、特にク レジットに関しては、ここで自分が折れてしまうとすべての脚本家の尊厳に 係わるという危機感を持つに至った。そのため、自分が 9,10 話の脚本を書い ていない事実を周知する趣旨も合わせて、インスタグラムで投稿を行った。
④ 本件脚本家の投稿に対して、日本テレビは、さらなる騒動の拡大を避けるた め、また、脚本家個人の SNS 投稿を取り下げるよう求めることは法的に難し いのではないかという法務見解もあったため、削除を求める、公式コメントを 出すなどの対応はしなかった。
⑤ 本件原作者は作品の出来自体には満足している様子が見られたが、本件脚本 家の SNS 投稿を目にしたことにより、事の経緯と自分の立場を説明する必要 があると感じ、ブログとXに投稿した。
これがインターネット上で大きく取り 上げられ、賛否両論を含む様々な意見が飛び交う事態に発展した。
(2) 日本テレビが本件を振り返る上で重要な視点について 本件の分析は以上に述べたとおりであり、このような流れになったことにつき、制 作サイドの個々の判断にも、またこうした個々の判断の土台となった日本テレビの 制作体制にも、振り返って見つめ直すべきポイントがあった。
これらの視点は、本件 の分析・検証に続く今後に向けた提言を考案する上で重要な指針とすべきものだと 78 思料される。この点、ドラマ班を含むエンタメ番組制作の責任者である日本テレビの コンテンツ制作局の幹部 G 氏は、
「ドラマという専門性が高い分野に常に遠慮があっ た」、
「人材育成や制作状況などにもっと気を配り、管理するべきであった」とした上 で、「今回ゴールデン・プライム帯のメインプロデューサーを一人で担当させること が決まったとき、上長として、サポート体制を整えるよう的確に指示をするべきであ った」、「プロデューサーが追い込まれている状況を把握できなかった自身にも責任 があった」と振り返っているように、
これは決して個人の問題ではなく、日本テレビ という組織全体のこととして向き合うべき課題であると当調査チームは考えている。
最後に、今回の直接的な原因とまではいえないが、本件を通じて浮かび上がった小 学館と日本テレビの根本的な立場や考え方の違いについても指摘しておきたい。
それは「原作」という作品に対して向ける視点の違いである。 いうまでもなく、日本テレビは、著作権者にあたる原作者(ライセンサー)から、 原作の利用許諾を得た上で、新たにドラマを制作・放送するライセンシーという立場 である。
もっとも、そうではあるものの、今回当調査のヒアリング等を通じ、制作サ イドにおいては、原作を映像化するという作業の中で、原作を何ら改変しないことは 基本的にないという考え方が標準的であることや、原作をもとに、どのようなエッセ ンスを加えれば、より視聴者の興味を惹きつけるドラマにできるか、という考えを少 なからず持って企画・制作に当たっているということが分かった。
これは、ドラマと いう映像コンテンツはあくまでもテレビ局の作品であるという考え方が根底にある ものと思われる。 この点に関して、
小学館 S 氏は当調査チームの質問に対して、あくまで個人の見解 とした上で「ドラマ制作という一面だけを見れば、作家の先生や担当編集部、担当編 集者はテレビドラマの制作者あるいは制作協力者ではない。
作家の先生、担当編集部、 担当編集者は、利用許諾者(ライセンサー)であり、監修者であるから、制作者側(ラ イセンシー)と必要以上に相互理解を深める必要はない」、「ドラマ制作者の意図や思 いといったものは、作家の先生がそれらを受容可能か否かで判断されるべきことで あり、双方協議の上、落としどころを調整するようなものでない」、
「貴社に限らず、 ドラマ制作者側は、ドラマ制作にあたり原作作品を改変するのが当然で、原作作品の 設定やフォーマットだけ利用して、ドラマの内容は制作側が自由に改変できると考 えているように見受けられた例が多数ある。
…ドラマ制作者側のそういった意識の 改革が必要」、「原作を利用する以上、必要最低限の改変とすべきだということをドラ マ制作者側が認識すべき」といった回答をしている。
この S 氏の回答は、
小学館の会社としての立場を説明しているものではないが、中 にはこうした考えもあるということを制作サイドが理解して制作に当たっていたと いえるかどうか、
これも本件において振り返るべき重要なポイントではないだろう か。
原作をもとに、ドラマとしてより面白いものを作りたいという考え方自体は、ド 7
セクシー田中さん」問題、調査報告書「まとめ」全文
令和 6 年(2024 年)5 月 31 日 日本テレビ放送網株式会社 ドラマ「セクシー田中さん」社内特別調査チーム
脚本家も体調を崩していた。
クレジットに関し自分の弁護士に相談していた。
文書を出していた。
(原作者がクレジットに脚本家を載せないということまで口出しできるのか)
(私の書いた脚本を)使わないでくれ、という言葉までがでてきていたんですね。
ほんとに最初からキッチリ詰めていなかったというか
ある一つの文面があり、それをどう捉えるか、、
ある人はこう思ったし別の人は違う意味で捉えていて、、
齟齬があって
どんどん大きくなり
様々な出来事から原作者は制作側に不信感が募り、、
間に立って調整する者は落しどころを見つけて物事を進めるために必死だった。
原作者の発言により(脅しということではないが)放送できなくなるなどは避けないといけない。
小学館の報告書も読んだけど、、
小学館HP「特別調査委員会による調査報告書公表および映像化指針策定」を読んだ。 | 獅子吼のブログ (ameblo.jp)
とても辛い、苦しかった。
それぞれの気持ち、、、
皆、自分の立場で頑張っていた。
脚本家がSNSを出したい気持ち。
原作者がアンサーを出したい気持ち。
どちらもプライドを持って仕事に取り組んできた。
脚本は執筆以前にコアメンバーが本打ちという作業を得てから脚本家が書いているから
脚本家の仕事ぶりだけが原作者の意に添わない悪い仕事ぶりだったということはないのよね。
芦原先生
悲しいよ。
何故その選択を。
疲れきっていたのかな、、。
悲しいです。
時間を巻き戻したい。
小学館HP「特別調査委員会による調査報告書公表および映像化指針策定」を読んだ。 | 獅子吼のブログ (ameblo.jp)