冒頭を極める | 小説の書き方教えます

小説の書き方教えます

現役プロの小説家「子竜 螢」が、文学賞受賞へと導きます  KEI SHIRYU 

※お待たせしました。タイトル下の5つのコンテンツが

ご利用いただけるようになりました。


※添削をご希望の方は、必ず「添削希望の方へ

お読みになった上で、お申し込みください。

作品の枚数もご記入願います。


今回は、作品の冒頭に関する提言です。




以前より、冒頭は大胆に結末は爽やかに、と申し

上げてきました。


これまで何十作品も添削をさせていただきました

が、この提言に沿った作品は皆無でしたね。


どちらかといえば、真逆の作品が多かったです。


冒頭は大人しく始まり、結末でクドクドと説明を続け

る作品が多かったのです。




これでは読者に最後まで読んでもらうための魅力

に欠けますし、読後の余韻も台無しです。


とくに冒頭は、読者が途中で諦めないための重要

な責任を負っている部分なのですから、あなたが

考えている大胆さではダメでして、2倍くらいの大胆

さがほしいのです。




子供が学校から帰ってきたとき、イジメにあって泣い

ている場面だとしましょう。


以下に、悪い例を示します。


「どうしたの?」

台所で夕食の準備をしていた私は、普段と違う子供

の様子に困惑した。悔しそうな表情をして帰ってきた

かと思ったら、私の顔を見るなり泣き出したのだ。


いきなり事件ですので、あなたには大胆に思えるかも

しれませんが、この程度では読者にはフツーなのです。




次に、真に大胆な例を示します。


玄関のドアが開けられ、泣き叫ぶ声が台所まで聞こえ

てきた。学校から帰ってきた息子の声だ。

その直後には乱暴に閉じられたドアの衝撃が伝わって

きた。下駄箱の上に置いてあった陶器の一輪挿しが

落ちて割れた悲鳴のような音が家中に響きわたる。

息子がランドセルを台所まで放り投げた。中身が台所

の床一杯に散乱する。鉛筆、消しゴム、教科書、ノート

などが乱雑に広がった。息子のお気に入りだったワン

ピースの筆入れの角が、無慈悲にも欠け落ちている。

「もう学校にはいかない!」

息子がそう言うなり泣き出した。




ふたつの文の違いは何だと思いますか。


悪い例は、学校でイジメにあった息子が帰ってきて

泣いているという説明文です。


大胆な例は、説明ではなく描写を積み重ねている

のです。




このように、説明をしてしまうと大胆さは値引きされ

てしまいます。もっと描写を加えてエスカレートさせ

ましょう。


これでもまだ、大胆さが足りないほどなのですよ。

玄関がもっとメチャメチャになってもいいでしょうし、

息子の服装が泥だらけでもいい。


とにかく、大胆な状況を描写するところから作品を

スタートさせてください。