名言とはまさにこのことだ、と小説家に
なってからはいつも感じさせられています。
しかし、実際の人生では偶然に左右される
ことは多いですね。
たとえば、何十年ぶりに思いがけない場所で
かつての親友と出会い、恋人を紹介してもらう
ことになったとか……。
しかも、その恋人と結婚することにでもなれば
偶然とは恐ろしいほどです。実際の出来事は
小説より奇なのがわかるでしょう。
では、なぜ小説に奇はないのでしょうか?
作家の想像力不足が原因なのでしょうか?
基本的に、小説の読者は偶然を嫌うからなの
です。もしも推理小説の犯人が、刑事や探偵
の推理ではなく偶然に判明したとすると、あな
たはその作者の本を今後二度と買わなくなる
ことでしょう。
だから、小説の中では、すべての流れに確たる
必然性が求められているのです。これじゃ事実
のほうが面白いわけですよね。
もしもあなたが小説を書こうとしているのでしたら
徹底的に偶然性を排除してください。
そうすれば、文学賞の一次選考なんて軽く突破
できるはずです。