しろくまです。ʕ•ᴥ•ʔ
彼はずっとベッドに横たわっていた。
今まで会って来て、それを1度もしなかった。
そう、彼に触れたことは1度も無かった。
※今回は情事的な内容が含まれますので、不快に感じる方はお気をつけください。
前回のお話↓
彼が横たわるベッドの横に、私も横になった。
彼は少し前から少し眠いと言っていた。
目を閉じていたが、眠ってはいないのがわかった。
ゆっくりと彼に近づき、彼を腕の中に抱きしめた。
彼も私の体に腕を回した。
彼の体から、良い匂いがする。
彼の頭を撫でながら、もう片方の腕で少し強く抱きしめる。
自分の心臓がドキドキしているのがわかった。
多分、ずっとこうしたかった。
始まってしまうのが怖くて、できなかった。
少し顔を離し、少し見つめ合ってから彼の唇に私のそれを重ねてみた。
…
……
彼とのそれは、想像していたものと違った。
私が彼に対して恋心のようなものを抱いてしまったからそう感じたのだろうか。
欲情というより、ただ抱き合うだけで心地よかった。
心が満たされたような気がした。
欲望のままにしたいそれとは違い、お互いに優しく撫で合うような、そんな行為だった。
彼が果てた後、そのまま一緒に寝た。
自分の快楽はどうでも良くなっていた。
私はその後もドキドキして眠れなかった。
彼にずっと触れていたかった。
けれど、心の中でこれはもう今日限りなのだと悟った。
多分今ならまだ引き返せる。
彼には価値観を共にする彼氏さんがいる。
多分このことも、共有されるのだろう。
友人という形ではまた会えると思うけれど、この先また体を重ねることは「合理的」ではないのだと思った。
心の中で、まだ誰かを好きになれるんだなという希望と、でもあなたとのそれは叶わないんだなという失望が渦巻きながら、隣で眠る彼の頭を優しく撫でた。
ふと、彼が私の名前を呼んだ。
普段はめったに呼ばない彼の声で呼ばれる私の名前。
嬉しいけれど喜べないって、ちょっと切ないな。
耳に残る優しい声は、私を弱くさせる。
早く終わらせなくちゃ。
まだ芽生えたばかりなのだから。
もう良い大人なんだから。
多分、友達にもこの感情は口に出さない。
勿論本人にも。
口に出すと、止まらなくなってしまうから。
あぁ、もう夜が明けてしまうな。
彼に最後のキスをして、この恋は終わりにしよう。
あなたに私の心模様は悟られないように。
ここを出たら、私達はそれ以上でもそれ以下でもない友達になっていますように。
ただ、関係性が変わるだけ。
ただそれだけだから。
※中島みゆきさんVerは、いつ探しても無いのが悲しい…
おしまい。