こんばんは、しろくまです。
私を殴ってきたこの中年男性を、さてどうしてくれようか。
前回のお話です↓
※㊟今回は少し暴力的な表現がございます。
多分、その時の私はそんな事さて考えていなかっただろうな。
体に痛みが走った瞬間、私は相手の胸ぐらを掴んでいた。
怒りを通り越して、なんだか無感情だったようにも思う。
その感情がない面構えで、私は中年男性を道に突き飛ばした。
その男が何か叫んでいるが、私の耳には入らない。
突き飛ばして逃げるような格好になった相手に、私は馬乗りになって顔を殴った。
殴り殴られ、私は突き飛ばされて近くにあった自転車にぶつかった。
私は体制を整えて男の懐に飛び込み、また殴りかかった。
男は怯まなかったように見えたが、私と距離と取って何かを叫んでいる。
興奮してうまく聞き取れない。
男「○○さん!来てくださいよ!」
どうやら連れを呼んでいるみたいだった。
そのセリフに、私は興ざめしていた。
大の大人が情けない…
自分のケツは自分で拭けよ、カス。
気持ち悪いのはお前のそのセリフと、お前の酒癖の悪さだよ。
それくらいは言ってやりたかったが、私は元彼とその友人にその場から連れ去られた。
当初の目的だったゲイバーに入り、取り敢えずお酒をみんなで頼んだ。
お店の店子さんが、ぎょっとして私の顔を覗いた。
興奮状態で気付かなかったが、頭から血が流れていたみたいだ。
頭から流れる血は、まるで涙のように頬を伝っていた。
血は体温と同じ温度なので意外と気付かない。
汗が流れているくらいの感覚だった。
元彼が事の顛末をみんなに話していたが、私はその話をしたくなかった。
というか、元彼に対して怒っていたのだと思う。
あなたの友達を、何故あなたが助けてあげないの?って。
ただ、その言葉は口に出せなかった。
何故だろうか…この歳になってもわからない。
元彼は私より8個年上で、頼もしいというより可愛らしい人だった。
私は年上の彼氏に、きっと勝手な理想をたくさん押し付けていた。
ただ、彼が8年早く産まれたからと言う理由だけで。
今となれば、とても自分勝手だと思う。
そしてさっき絡んできた中年男性が言った「オカマは気持ち悪い」という言葉が、私の心に重くのしかかっていた。
言われていたのは元彼の友達なのだが、その言葉は蛇のように私の心に絡まり、まとわりついて締め付ける。
二十歳そこそこだった私は、自分がゲイということをまだ受け入れられていなかった。
だからナヨナヨしたくなかったし、坊主頭に髭を生やし、当時でいうB-BOYの格好をして虚勢を張っていた。
さっき私が殴ったのは、一体何だったのだろうか_
私自身が生み出した私の心の影なのかもしれないと、ふと馬鹿げたこと思った。
その日は明け方までお酒を飲んで、元彼と一緒に家に帰った。
帰り道、元彼が私に言った。
「今日は〇〇(元彼の友人)を助けてくれてありがとうね
」
私はきょとんとした。
そうか、私は助けたのか。
自身への痛みに我慢できずに、ただ手を出しただけだと思っていた。
まだ明るくなり始めるくらいの朝、あたりには人がいなかった。
元彼が私を見つめて、手を握ってきた。
私はそれを気恥ずかしく思いながらも、その手を握り返すのだった。
夜が明けて、もう朝になるよ_
あなたを縛っていた
全て解いて 気付いた
溢れて泊まらないのは
長い長い夜の祈り
譲れない光は
この手に在るよ
あなたにあげたいもの
独り集めて 背負った
わたしがほしかったのは
あなたを守る力
変わっていく私を
笑ってもいい
変わらない想いを
覚えていて
Cocco もくまおう

