こんばんは、しろくまです。
顔も知らないゲイに会いに行く_
今思えばとても無謀なことのように思えるが、まだ誰にもカミングアウトもしていない自分にとって、「自分以外のゲイ」に会うことは、ただ漠然と必須の事のように思っていた。
前回のお話↓
大好きだったノンケ同級生のカバンを膝に抱えて、電車が走る。
そして集合予定の駅まであっという間に来てしまった。
仮に年上ゲイを仮にRさんとする。
駅を出てすぐ近くに車が一台止まっている、きっとRさんだ。
私は緊張しながら車に駆け寄って、Rさんを見た。
Rさんを見た私は、頭から冷水を浴びせられたような気持ちになった。
Rさんとはそれとなくお互いの容姿なども話をしていたが、彼は自分の事を
客観視出来なかったのではないかと思うくらいに、容姿が違っていた。
失礼を覚悟で書くと、生理的に受け付けられない人だった。
気持ち悪いとさえ思った。
私も相当いやだったのだろう、Rさんの詳細な顔が思い出せない。
私は笑うことができなかった。
振り切って帰ろうかとも思ったが、帰りの電車賃が私にはないのだ。
絶望しながらRさんの車に同乗させて頂く。
少し会話をしながら、何故かRさんのご自宅に行くことになった。
一人暮らしなのだろうか、誰の気配もない。
決してRさんは悪い人ではないとは思うが、ほとんど詐欺だと私は思った。
顔を見ていなかったので私が必要以上に期待してしまったという事もある。
ただ、Rさんは確か、
・スポーツを良くしています
・髪は短いです
・優しい感じとよく言われます
・爽やかなだと言われます
(これ、かなりモテ筋じゃない?)
くらいのことを言っていたように思ったが、合っているのは髪が短いことだけ。
服の上からも、彼がスポーツをしているような体型ではないことだけはわかる。
腫れぼったい面持ちで、舐め回すような目線がしんどい。
カエルが擬人化したらこんな風になるんじゃないか…そんな風にも思った。
(本物のカエルは可愛いと思うタイプの人間ですが、人になるとやっぱり…ね。)
私はRさんの家に、この空間に入ることさえも拒絶反応が出ていた。
それより何より、持ってきたリュックをこの部屋に直に置くことが
絶対に出来なかった。
R「楽にしててね」
そう言ってRさんはTVをつける。
そして、画面に映し出されたのはゲイビデオだった(無修正)
もう私は色々諦めてしまっていた。
画面を見る私の横に来てRさんは私のズボンに手を伸ばし、
ゆっくりと私に触れていく。
R「映像見ているだけで良いからね」
私は性的な意味で誰かに触られたのはこれが初めてだった。
悲しいことに体は反応してしまう。
時間はかかってしまったが、私は無事果てた。
心は全く無事ではないが、これで帰れるんだ!と心の何処かで安心していた。
駅までRさんが送ってくれて、帰りの電車賃をいただいた。
私はお金を受け取ると、更に嫌な気持ちになった。
そして駅のトイレで何度も体を拭き、何度も手を洗った。
たまたま持っていたビニール袋に彼のリュックを入れた。
汚れた手で、それに直接触れたくなかったのだ。
前回書いた「ストロベリーショートケイクス」の中で、こんなシーンがある。
一度だけ、酔っ払ったからという理由で秋代はすっと好きだった男に体を求める。
男はそれを受け入れる。
男には彼女がいた、秋代はそれ以上を彼に求める事はしない。
面倒な女になって会ってもらえなくなるくらいなら、都合の良い女でいたいのだろう。
好きな男に抱かれたあと、秋代はデリヘルの客を拒絶する。
「キクチが触れた私の体、誰も触るな」
場面は全く違うのだが、そのシーンが頭に浮かんだ。
帰ってから、私は直ぐにシャワーを浴びて何度も体を洗った。
そして泣いた。
汚れた私は、もう好きな人に触れてはいけないと思った。
何て浅はかでバカなことをしたのだろう。
数日間、私は自分の行動を呪った。
そしてこれほどまでに時間を戻してほしいと願った事は未だかつて無かっただろう。
数日、数週間、数ヶ月して、私は自分の心を取り戻していった。
大好きだった彼が、元気のない私にとても優しかった。
「今日一緒に駅まで行こうぜ」
彼がそう言って私を自転車の後ろに乗るような仕草をする。
私は彼の後ろに乗って、ふざけて抱きつく。
良い匂いがするな_
そんなことを思いながら、私は自分がかけた呪いから半年をかけて開放されるのだった。
好きな人の存在は絶大だったな。
この歳になってまで、こんな事言っているのはヤバい奴だけど、
恋がしたいなぁ。 笑
おしまい。

