こんばんは、しろくまです。
前回の続きです↓
※この話は、ある人の愛人になりかけたお話です。
Hさんから誘われたデート。
食事からとかではなく、お酒を飲みましょう、と。
初めて会った、ゲイバーで待ち合わせをすることに。
向かう途中、緊張なのかドキドキする。
Hさんは私の事を好いてくれているのか。
これは、先がある関係になっていくのだろうか。
手放しで楽しめるほどには、私の心はまだ追いついていない。
お店の中に入ると、Hさんは既にカウンターに座っていた。
同じお酒を飲もうとしたら、なんとHさんは下戸とのこと。
え?待ち合わせゲイバーで良かったの?
お酒は飲めないが、酒場の雰囲気は好きなのだと、
アセロラジュースを飲みながら教えてくれた。
因みに、アセロラジュースは美容の為に飲んでいるとのこと。
なんだ、可愛いじゃないか…!
そこから何件かのゲイバーをはしごした。
Hさんはゲイビデオ男優でもあり、ゲイバーのオーナーでもあった。
どこのお店に行っても有名人のHさん。
私は、こんな人と一緒にいて良いのだろうか。
私は周りからどんな存在だと思われているのだろうか。
年上ゲイの財布に甘えて、タダ酒を飲んで楽しんでいる若いバカなゲイには
見られたくなかった。
私は頑なに、奢っていただくことを避けた。
この歳にもなると、それは可愛くないとこなのだとわかるが、
それが当時の私の精一杯の背伸びだったのだと思う。
なれるはずもないのに、対等でいようとしてしまう。
私は素直に甘えることが凄く苦手だった。
金銭的にも精神的にも。
それを何のためらいもなく出来てしまう人を見て、
当時の私は心の何処かで蔑みながら、憧れていた。
Hさんの連れという事で、有名ゲイバーのママさんが優しくしてくれる。
1人で来ていたらこんな接客をして貰うことも、そうそうに無いのだろうな。
Hさんは長い間、二丁目で色んな物を見てきたのだろう。
楽しいことも、悲しいことも、私なんかよりずっと長く近くで、
ゲイカルチャーを見てきたのだろう。
友人だちと話をしているHさんを見て、Hさんの人となりが少しずつ見えてくる。
筋の通らないことが嫌いな、気前の良い下町のおじさん。
Hさんが、そんな風に見えてきた。
行く店行く店で、Hさんは優しく私をエスコートしてくれる。
私は戸惑いながらも、それを少しだけ受け入れる。
一緒にいる人が違うだけで、二丁目の景色もなんだか違って見える_
その日は、Hさんは別の用事があるからと別々に帰ることになった。
帰り際、Hさんが言った。
H「今度、合わせたい人がいるんだけど、この日は空いているか?」
え?
誰?!
怖いのだけれども…
誰なのかをHさんはきっと当日まで教えてくれない気がして、
それ以上は聞かなかった。
私「わかりました。楽しみにしてますね。
またご一緒させてくださいね。今日はありがとうございました。」
聞き分けの良い若い子はこんな感じだろうか。
私はちゃんと自分の役割を果たせたのか、自問する。
明け方の二丁目はまだ暗く、酒が残る体を奮い立たせて、
始発の電車に乗り込むのだった。
次は来週か…
今から少し楽しみな自分がいる。
このまま進むべきか、引き返すべきか_
今の私には覚悟はまだなかった。
つづく。
※香水よりもほのかに香る良い匂い。
寒暖差で荒れたお肌を守りましょ♪
