ウォルマートはなぜドイツから撤退したのか ① | 城取博幸のスーパーマーケット見聞録

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して行きたいと思います。

偶然 ドイツ滞在中に「女子のサッカーワールドカップ」がスタートした。

結果は「日本のなでしこジャパンの優勝」で終わった。日本人に勇気と元気を与えてくれた。

ドイツ人が「親日的」であるかは分からないが、アメリカとの対戦は、日本を応援してくれていた印象はある。

「ドイツ人は親米的」では決してないと私は思う。ドイツに進出した、アメリカのウォルマートは結局ドイツから撤退を迫られた。その理由をいくつか「seisenkobo」のHPのレポートを引用させていただき、現地を視察して確かめてみた。


ウォルマートはなぜドイツから撤退したのか

ウォルマートのドイツ撤退が示したヨーロッパ企業の底力

http://www.seisenkobo.co.jp/doc/walmart-germany2006.htm  より引用

2006年夏、ドイツからの撤退を決めたウォルマート、アジアや中南米よりも民族的にも歴史的にも繋がりの強い西ヨーロッパの先進国で、なぜ成功を収めることができなかったのか。「アルディ」や「メトロ」といった強力な競合が存在したから、労務管理でつまずいたから、国民性の違いを理解できなかった等々、言われる理由は様々だが…(文中)


1.新店を作れなかったウォルマート

ドイツで営業しているウォルマートの85店舗は、ほとんどすべてが買収した「旧ベルカウフ、ハンデルズ」のもので、店齢が20年を超えるものが大半だ。買収当初は94店舗だったが、店を増やすどころか9店舗減っている。しかも、立地は市街地に限定され、ウォルマートが本来得意とする郊外立地の大型スーパーセンターはひとつも存在しない。ウォルマートは作りたかったが、作れなかった、作らせてもらえなかったのである。(文中)

フランクフルトの小売業を視察して

「私見」確かにフランクフルトの店舗を視察してみて、アメリカのウォルマートのようなスタイルの1層の大型店は見当たらなかった。ただ、E-CENTERのエディカは、大型店で1階のスペースと全く同じスペースが2階にもあり、かつてスーパーセンターではなかったと思わせる物件であった。(推測) 現在、1階部分は食品売場になっているが、2階部分は歯抜け状態になっている。

また、ハイパーマーケットのような大型店も変形の土地、建物が多く、店舗の前に大型の駐車場を構えた店舗はフランクフルトでは確認できなかった。

「アルディ」や「リドル」などのハードディスカウントの小型店は標準化されているが、大型店は標準化されているとは思えなかった。

また、ウォルマートが得意とする、スーパーセンター、サムズクラブ、ウォルマートネバーフットらしき店舗は存在していなかった。

2.物流環境を変えられなかったウォルマート

物流環境もアメリカとは大きく異なる点も、ウォルマートを悩ませたに違いない。同社がドイツに進出した際、物流環境はアメリカより10年遅れていると言われ、ウォルマートの進出で改革に弾みが付くと思われたが、ウォルマート流の仕組みに対応できないメーカーやベンダーが続出、大量の欠品や配送ミスが発生し、ウォルマート側が折れたという経緯がある。もともと、ヨーロッパ社会にはアメリカの仕組みを取り入れることに強い抵抗感があるとされ、様々な場面で軋轢を生じている。当時、あたかもイラクへの対応を巡り、フランス・ドイツがアメリカと対立したことも、多少の影響は有ったかも知れない。

実際にグーグルの提供する衛星画像と、インターネットの店舗リストから割り出した店舗の画像を見ると、最新のトレーラーに対応した店舗設備になっていないのは明らかであった。店舗とトレーラーの荷台を直結するドッグ設備が無い。ウォルマートの強さを支えるひとつが、強力な自社物流網であるが、ドイツに関してはそれが思うように構築できなかったということであろう。(文中)


政府の規制が強い ドイツ

「私見」政府の規制で、標準化された大型店の新規出店が難しく、ハード面でウォルマートの強みを発揮できる店舗ができなかったこと。また、ソフト面で当時はウォルマートの物流システムに対応できるメーカーも少なかったのではないか。ドイツのメーカーは中小企業が多く、それらのメーカーはドイツの小売業のPB商品を製造し、特定の小売業者に「抱え込まれている状態」である。

かつての日本のカルフールのように、出店が規制され、メーカーの協力もなかなか得られない、配送センターの出来ない状況ではなかったかと思われる。

日本の「西友」のように、GMSやスーパーマーケットの業態では、大型トレーラーやコンテナが店のバックヤードに直結できるはずがない。西友もドイツと同じ悩みを抱えているのではないか。