弁論家はやっぱり口がうまい。
しろあです。
動物寓話でおなじみのイソップですが、人間がテーマの話もあるんですよね。
その中から面白いもの、興味深いものを紹介しております。
ちなみにナンバリングの『Hausrath』は底本となる書籍の掲載番号。
バッハやモーツァルトも楽曲には作品番号が打たれてるでしょ?
クラッシックの作品ナンバーと同じく、
イソップ寓話やグリム童話は底本によりナンバリングされてるんです。
これが作品を調べるとき、より深く調べたい時に役立つのでタイトルに入れております。
今回は『弁論家デマデス』というお話。
ではいってみましょう。
政治家であるデマデスが弱体化した国を救うべく、民衆に演説を行っていた。
しかし民衆はデマデスに聞く耳を持たず真剣に話を聞かない。
そこでデマデスは皆に向かって言った。
「さて、ここでイソップ寓話でもひとつお聞かせしようか」
すると皆は興味を持ち、デマデスの話を真剣に聞き始めた。
皆の了解を得たデマデスは語り始める。
「女神デメテルと燕と鰻が旅をしていた。
小川にさしかかったところ、燕は空へ飛んでいった。
鰻は川に潜った」
そしてデマデスは黙った。
なかなかオチを言わないデマデスに焦れ、ある人が言った。
「で、デメテルはどうしたんだ?」
デマデスはこう答えた。
「お前たちにご立腹である。
国の大事に真面目に話も聞かず、
イソップ寓話なんぞを聞いてるんだからな」
いかがでしょうか?
なかなかに基調で面白い話だったと思います。
この話を読んで私は ”イソップ寓話は当時のエンターテインメントである” というのを知りました。
今の映画や漫画、テレビのバラエティ番組のような娯楽だったのでしょうね。
そもそもイソップ寓話自体、本物のイソップが語ったという確証はなく、
民衆の間で広がった教訓付きの小話をまとめたものです。
日本の昔話のように、その話は存在するけれども作者不詳なんですよね。
紀元前当時の民衆の中では「俺、新しいイソップ寓話仕入れたぜ」と言うものがいれば、
その話を教えろ教えろと皆が集まりワイワイ騒いでいたんだろうと想像できます。
作家の才能のあるものは、オリジナルの話を創作してたかもしれませんね。
なんとなく、現代の都市伝説にも似てますね。
そういう訳ですから、作品自体が基本的にフィクション。
この話の場合、話の中にさらにイソップ寓話が登場するという「物語の中の物語」、”劇中劇”という構成になっています。
少し難しい言葉で言えば”二重虚構”。紀元前ですでにこの手法が使われていたのは驚きでした。
ということで。
基本的には ”お前らちゃんと俺の話を聞け” という説教なんですが、
文学的な見地からかなり面白い作品だと私は思っております。
ではいわずもがなですがこの物語の教訓にいってみましょう。
このように大切なことをなおざりにして、快楽を選ぶのは考えの足りない人である。
ではまた次回をお楽しみに。