大山阿夫利神社の最終章は、雨降山大山寺(あぶりさんおおやまでら)について書くことにしましょう。
阿夫利神社から女坂を下った麓との中間に大山寺は鎮座しており、開創は755年、奈良東大寺を開いた良弁僧正とされる真言宗(後に弘法大師が入山)の古刹です。
実に重厚な本堂には、鉄造の不動明王像と二童子像(鎌倉時代:重文)や五大明王などが祀られ、明王好きには心燃え上がらんばかりの『タワーリングインフェルノ』でした。
足の疲労もあって絵馬と御朱印を頂いて帰ろうとしたところ、美月がちょいちょいと私の袖を引いて本堂の隅に置かれた授与品を指差したのです。
幟旗(のぼりばた)です。
境内に奉納するのは珍しくないのですが、グッズ蒐集を趣味とする私の場合、この鮮やかな縁起物を家に飾りたくて虎視眈々と狙って何年も寺社巡りをしています。
これは我が家に飾っている元三大師幟旗ですが、まだ二旗しか持ち帰れていない高難度のレア寺社グッズなのです。
幟旗を持ち帰りたいとお願いすると、案の定、御朱印を書いて頂いた男性は渋りました。
どうやら神聖な幟旗をオークションに出したりする罰当たり者がいるそうです。
すると美月は、「これから関東三十六不動霊場巡りをする励みにしたいので」と意味のわからないことを言い出しました。
私は全く気づかなかったのですが、何と大山寺は関東三十六不動霊場巡りの一番札所だったのです。
「ええっ、それはまずいんじゃないか・・」
実は前日、鎌倉の杉本寺を訪れて立派なお軸を買って発願し、坂東三十三観音霊場巡りに専心することを心に決めたばかりだったからです。
「偶然にしても、連日にわたって一番札所へ参詣したのは、両方巡礼しなさいと言うお告げじゃないかしら?」と美月は仏罰を一切恐れず平然と言い切りました。
やはり美月は邪鬼なのです。
すると住職に相談して頂いた受付の女性から、「そこまでお不動様への信心があるなら差し上げましょう」と許可が下りた旨をお教え頂きました。
と言う顛末から、坂東三十三観音霊場と関東三十六不動霊場を同時に結願することが今年の最大の目標となってしまいました。
オモシロ可笑しく書いてはいますが、今年はしっかり信心を持って関東を巡礼する決意が出来ました。
さて、駐車場近くの土産物屋さんで昔懐かしい味噌を買いました。
これが私と美月の年齢には懐かしい昭和の味噌で、塩分が少し濃いのですが、ネギ味噌にすると素晴らしい日本酒の「あて」になってくれました。
美月の「水が私を呼んでいる」から始まった旅でしたが、スピリチュアルも時には素晴らしい恩恵をもたらしてくれるのかもしれないと深く感銘しました。