7月に入り、遅刻しながらも毎日登校している。
思春期外来で処方された薬が、吐き気に効いているようだ。その薬を就寝前に内服し、朝起きてすぐに別の頓服の吐き気止めを飲む。そんな流れが定着してきた。
とはいっても吐き気が無くなったわけではない。朝起きるのは9時頃で、毎日3時間目くらいからの登校。1・2時間目の授業は全く受けていない。こちらの地域は高校受験に内申点も大きく関わってくるので、これはかなりのマイナスになるだろう。
登校できるようになっただけで充分と思いながらも、1時間目から行ければなあ…と欲張ってしまうのも事実。本人には言わないけど。
先日、学校から帰って来るなり「ちょっと走ってくるわ。」と息子が言った。
外は気温30度を越えている。最近までずっと家にいるばかりだった体にはキツくないか?
「○○に誘われたんだ。一緒に走ろうって。」
○○くんは同じクラスの子。ばりばりの野球少年で、高校も野球での特待を狙っているらしい。ようやく登校し始めた息子をランニングに誘ってくれたようだ。
くれぐれも無理しないように話す私を尻目に、息子は「行ってきま~す」と出かけていった。その後ろ姿を見送りながら、胸がぎゅっとなった。
息子は6歳の頃からクラブチームでサッカーをしていた。真っ黒く日焼けして、体力自慢のサッカー少年。このままユースに上がってサッカー選手を目指していくものだとばかり思っていた。
その頃は走りに行くことなんて、当たり前すぎてなんとも思わなかった。
今、走りに行くと出て行った息子は痩せ細り、あの頃の後ろ姿の面影はない。
それでも一時は命の危険がと言われ、足の麻痺で全く歩けなくなっていた息子だ。走れるということ、そして誘ってくれる仲間がいるということがどれほど幸せなことか。
病気さえなければ…という気持ちと、今こうやって走りに行けるという嬉しさ。相反する気持ちに思わずため息がでた。
1時間後に帰ってきた息子はいつになくモリモリと夕ごはんを食べ、そして翌日は激しい筋肉痛に悶絶していた。