息子の痩せ具合のことをドクターに聞いてみようと思ったものの、冷静に考えてみると何て聞けばいいのだろう。「痩せ具合が気になるんですが」とか?
測ってみたら2週間で2キロ痩せていた。「食べてないからね」と言われたらそれで終わりだよね。単に私が気にしすぎていると思われるだけな気がする。
息子と二人で診察室に入った。この一週間の体調や血液検査の結果、来月の修学旅行での対応など、話すことが多くあっという間に時間が過ぎた。
「じゃあ、何かあったらいつでも連絡くださいね。」と診察が終わりそうになったので、思い切って言ってみた。
「あの、最近とても痩せてきて気になるんですが。」
「ここ2週間で2キロ痩せました。」
「最初こちらに搬送された時もこんな感じで、なんかとても気になってしまって…。」
ドクターはちょっと首をかしげながら「再発とか気にしているの?」と聞いてきた。「血液検査は問題ないし、診察したけど特に何もなさそうだよ。大丈夫でしょう。」
そう言われるとそれ以上何も言えず、「はい、ありがとうございます。」と診察室を出た。
心配しすぎだよね。痩せただけであれこれ変に考えすぎ。
やっぱり私、疲れてるのかなあ。正直言って、気の休まることなんかない。息子が元気でも体調不良でも、いつも心の中で心配が渦巻いている。
は~、これじゃ私の身がもたないよなあ。
などと考えていたら、突然「しろねこさん」と声をかけられた。見るとドクターが待合室まで出てきていた。
「退院してから今までの血液検査の結果を調べてみたけど、息子君はとても安定している。薬の量を調整する必要もないくらい。今まで撮ったCTやMRIを見ても、問題はない。さっき診察した時も、特に気になることは無かった。」
「いまは体調が悪くて心配だけれど、悪性リンパ腫に関しては経過はいい状態だよ。来月MRIを撮って、しっかり安心しましょう。」
ドクターは私の様子をみて、改めて以前の検査結果を調べてくれたようだ。心配ないことを確認して、伝えに来てくれたのだった。
心配性な母親の訴えに、ドクターはきちんと向き合ってくれた。「心配ない」という結果はもちろんだけれど、記録を見直してわざわざ待合室まで来て説明してくれたドクターの気持ちがとてもうれしく、硬くなっていた心がやんわりとほぐれていくのを感じた。
「分かりました。わざわざありがとうございます。安心しました。」お礼を言うと、ドクターはニコッと笑って診察室へ消えていった。