息子が夫と近くの公園にボールを蹴りに行った。息子が「今日時間があったら、ボールを蹴りに行きたいんだけど。」と言ったらしい。自分から蹴りたいと言い出したのは、退院後初めてだ。
息子は県内では上位のクラブチームに所属している。レギュラーに定着できそうなタイミングで病気が発覚して入院した。中枢神経への浸潤のため両足が麻痺して全く動かせなくなり、車イスで闘病が始まった。またサッカーが出来るようになるかなんて、考える余裕はなかった。
治療が進むと足は動くようになり、今は日常生活には不自由なく過ごせている。だんだんに体が動かせるようになってきて、最近は体育の授業も普通に受けているようだ。でも、息子がサッカーへの復帰を口にすることは無かった。
私は、本人が「出来る!やるんだ!」という気持ちにならなければ、クラブチームへの復帰は無理だろうと思っている。地元では、クラブチームは学校の部活動と少し立ち位置が違う。サッカーを極めるために集まっている集団で、将来プロを目指す子も多い。練習はハードだし、コーチが求める基準は高い。
大きな病気をして一年以上休んだ息子が、その中に戻っていくには、かなりの覚悟が必要だろう。もともと慎重派の息子がどう決意するのか、私からは口出ししないことを決めていた。
先日ショッピングセンターに行った時に息子が「帰りにもし時間があったら寄りたいところがあるんだけど…」と言った。「いいよ。どこ?」と聞くと「スポーツショップでスパイクが見たい。」とのこと。
久しぶりにスパイク売り場に行ってみると、息子は目をキラキラさせながら「かっこいいのがある。」「やっぱミ〇ノかな。」「アシ〇クスもいいよな。」「試してみていい?」と言いながら、もう商品を手に取っていた。
何足か試し履きをしながら、足のサイズがこれから大きくなるだろうから、チームに復帰する直前に買うことにしようと話し合った。
退院し、短時間の登校からだんだんにフルで登校出来るようになり、ようやくサッカーに気持ちが向いてきたのかなと思う。
すべて元通りに、とはいかないだろう。がんがん走り回っていた頃と比べると、体の細さや不安定さは明らか。それでも、長い休みを終えて再始動できる日が近そうだ。何より、サッカーをしたいと思えるほど、息子の気持ちが回復してきたことがうれしいと思う。