ラ・フォル・ジュルネ2015、
本日のマスタークラスの講師は、フランス人ピアニストのクレール・デゼールさん。

通訳の女性と、受講生と一緒に部屋に入って来ました。


とてもスマートな体型の方で、「贅肉一切なし」

そしてオレンジのコットンパンツにTシャツ、髪は洗って自然乾燥です!
といった風情の、全く飾り気ない姿が逆にアーティストっぽくてすごくカッコいいと思いました!

講師と受講生の紹介は簡単に終わり、すぐにレッスンが始まりました。



受講生の方は、桐◯学園大学4回生の女子学生さん。

120人もの見知らぬ聴衆の前で演奏し、さらにレッスンを受けるということは、さぞかし緊張することなのだろうと思いながら、まずは通しで受講曲のシューマン「ノヴェレッテ8番」を演奏を聴く。

さすがに上手いです。

無難に最後まで弾き終わりました。

会議室のスタインウェイ・フルコンがどんな音を鳴らすのか、興味津々でしたが、思ったほどうるさくなかったのは、カーペット敷きつめの部屋だったからでしょうか?


シューマンの「ノヴェレッテ」について、


ーーーークララ・シューマンの友人の
「クララ(同名)・ノヴェルなんとか(忘れました)」の為に書かれたのが「ノヴェレッテ」という名前の由来。

とクレールさんは仰っていましたが、帰宅後ネットで調べてもそのような内容が全く見当たらないのですが、実際のところどうなんでしょう?
(どなたかご存知の方がいたら教えてください)


wikiには、
ノヴェレッテあるいはノヴレット(ドイツ語: Novellette, 英語・フランス語など: novelette)は、性格的小品の一種。元来は短編小説を意味する語で、シューマンの『8つのノヴェレッテ(英語版)』作品21(1838年)で音楽に導入された。

とあります。
(クララの友人のために書かれたなんてどこにも書いてないけど?)

「ノヴェレッテ」ってシューマンが最初につけた名前なんですね。

物語のような曲、とでも考えれば良いでしょうか?


さて、クレールさんの言葉を憶えている限り…

ーーーーシューマンははじめ作家になりたかった。次にピアニストを目指したが指を痛めて断念し、作曲家として身を立てることになった。

…指を痛めて云々というのは有名な話ですが、はじめ作家になりたかった、というのは初めて知りました。もちろんごく若い頃の話でしょうけれど。

道理で音楽が文学的と言われるわけですね。


出だしの部分について、クレールさんはとても気になったようでした。

(大抵の先生方は出だしにとってもこだわりますね。)

ーーーーこの曲はアウフタクトで始まっているが、そのアウフタクトの「前」にもっと情熱の気持ちを作って(気持ちを先に)

ーーーー誰かに語っている感じで。でもいきなり「愛してる」と言うのではなく、「言いたいけれど言えない」という感じで・・

ーーーー声に出して歌ったらどうなるか?を考えて


そして実際にクレールさんが出だしの部分を弾いてくれました。


そうしたら・・・

ビックリたまげてしまいました。

これが同じ曲の同じ部分??
そして同じピアノで弾いてるの?

というくらい違って聴こえるのです。


とたんに音楽が生き生きして聴こえて来ました。(受講生さんごめんなさい)


なんでしょうね~?
ピアノの鳴らし方を知っているということでしょうか。
こうも音が違うことを目の前で聴かされると、本当に「百聞は一見にしかず」そのものですね。
やはりピアノの先生って、弾けなきゃダメなんだな。と思いました。


また、クレールさんの知識の深さを、この短いレッスンの間にも十分に垣間みることが出来ました。

特にシューマンのことを熟知しているらしく、ほお~~、と思うことをたくさん仰っていました。

ーーーーシューマンは、「隠れたもの」の表現が好きだった。
例えば、ある曲の楽譜の中には「弾かない音符」と言うのがある。弾かないけれどその音符の存在を感じて弾く、ということ。(もちろん実際に弾くピアニストもいるけれどね。)
シューマンは謎めかした表現が好きだったのね。


ーーーーシューマンが「rit」と書く時、「ルバート」の意味で書いていることがあるから注意して。

ーーーーシューマンは「f」と書くとき、ひとつの音だけに書いた場合がある。だから「f」がたくさん並んでいることがあるの。
例えばベートヴェンならそこに「sf」か「rf」と書いたと思うわ。


またシューマン以外でも応用出来る内容もたくさん・・・


ーーーー「>」(アクセント)はその音に「表情が欲しい」ということ。決して強く弾く訳ではないのよ。「表情をのせる音」だと思って弾いて。

ーーーーこのトリルは、楽器のトリルではなく、「歌手のビブラートのように」
だからゆっくりでも構わないの。

ーーーーこの部分は「ホルン」の音。ホルンみたいに弾いて。
19世紀のドイツロマン派にとって「ホルン」は象徴的な楽器。とても良く登場するの。

ーーーー19世紀の音楽は「自然」と深い関係がある。



そういえば、ブラームスの交響曲第1番のなかで、ブラームスがクララ・シューマンとスイスに旅をした時に聴いたアルペンホルンのメロディーをそのまま使っている部分があって、そこはもちろんオーケストラではホルンの音になっているのだけれど、とても印象的な美しい部分です。

ホルンはドイツロマン派の作曲家にとって特別な楽器だったのですね。


ピアノで「ホルンの音」を表現する曲はいくつもあるけれど、実際にホルンみたいに弾くのは簡単ではありませんよね。

ところがクレールさんが弾くと・・・


まあ不思議ビックリマーク「ホルンだわ!!

とにかく全編、クレールさんが弾くと、クレールさんが仰ったことが手に取るように分かる音になって出て来るのです。
受講生さんとの違いがあり過ぎて・・・

それからクレールさんが最後まで注意し続けたのは、シューマン独特の、あの付点のリズム・・・

これが受講者さんの付点はどうもあまくてのっぺりとしていたのですが、クレールさんが弾くと・・・

しつこいようですが、「ディズニー映画のスクリーンから、ミッキーが飛び出して来たよ!!

みたいな感じ?
(どんな例えやねん)


受講者さん、これから研鑽をつんで、ぜひクレールさんのような立派なピアニストにおなり下さいね。



最前列に座った私たちは、ピアノから出て来る音を間近で聴くことが出来たので、その臨場感がハンパなく、最前列に座れてラッキー!と思いました。

隣で聴いていたツレは、初め「自分は多分良く分からないから途中で出るよ」
と言っていたのに、結局最後まで聴いていて、なにやら感動しておりました。





来年も「マスタークラス」目指して音譜並ぶのよろしくねにひひ