海辺の映画館 キネマの玉手箱 | 知らずに死ねぬ程のものではない

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元映画暴食家最近はロコドルイベント通いがメインで、カメコのはしくれ。引退しても渡辺麻友推し。映画は時々観ている。最近は小説に挑戦している。

10月最後の土曜日に、映像文化ライブラリーで『海辺の映画館 キネマの玉手箱』を観た。

 

 

 

大林宣彦監督の遺作である。大林監督が亡くなったのは、本作が本来公開予定だった2020年4月10日であった。

 

初公開時機会に恵まれず見逃してしまったので、「大林宣彦特集」という形でようやく観れた。

 

3時間に及ぶ長尺であったが、ダレることなく堪能した。

 

閉館する尾道の映画館で戦争映画特集をオールナイト上映していて、それを観に行った若者達が映画の世界に迷い込み、戦争を体験するという設定であった。

 

無声映画、時代劇、オペレッタといった映画史と近代の戦争史が併せて描かれ、明確なまでに反戦メッセージが盛り込まれていた。特に戦時中の全体主義に対する強い嫌悪感を示していたが、嘆かわしいことにイマのコロナ騒動はまさに戦時中以上に正気を失った全体主義そのものである。

 

まあ、ただ重たい社会派映画にはなってなく、大林監督独特のコラージュ的なはっちゃけた映像遊びと大林監督ゆかりのキャスト達が集まりワイワイと宴会をやっているような賑やかさがあり、大林監督は最期まで大林監督だったなと思った。

 

結果的に大林映画のラストヒロインとなった吉田玲はセーラー服がよく似合う昭和映えするルックスで、この辺も一貫していたな。

 

ところで本作で映写技師役を演じていた小林稔侍。最近公開された山田洋次監督『キネマの神様』にも同じ映写技師役で小林が出演していた。これは山田監督による『海辺の映画館』へのささやかなオマージュだろうか。