一昨日、映像文化ライブラリーで3本の短編アニメを観た。
この日は文化の日だったので、入場無料であった。
まず最初に上映されたのは、『すて猫トラちゃん』。1947年製作なので、終戦から2年後だ。
3匹の兄妹猫の世話をする母猫が一匹のすて猫のトラちゃんを見つけ、世話をすることに。だが、母猫があまりにもトラちゃんを可愛がり過ぎることに妹猫のミケちゃんが不貞腐れ、家出する。それをトラちゃんが連れ戻そうとするが、いつの間にかサバイバルな展開に。
演出したのは、「日本アニメーションの父」と呼ばれた政岡憲三監督。セリフは全てオペレッタ調の歌で構成され、絵柄もストーリーもほっこりしたタッチで、安心して愉しめる作品であった。
後で調べたら『トラちゃんと花嫁』、『トラちゃんのカンカン虫』という続編もあった。
続いて上映されたのは、『こねこのらくがき』。
1957年に製作された薮下泰司監督と森康二作画の東映動画長編アニメゴールデンコンビによる短編作品。子猫が壁に描いた汽車の落書きで2匹のネズミと追いかけっこするシュールな内容であった。擬人化された動物キャラが出てくるのだが、その動物の習性の描き方が何気なく細かいところが、森康二のアニメーターとしての素晴らしい仕事だ。
因みに日本アニメ黎明期をベースにした朝の連続テレビ小説『なつぞら』では、森康二(仲努)役を井浦新、薮下監督(露木重彦)役を木下ほうかが演じておりました。
最後に上映されたのは、『やさしいライオン』。
1970年に漫画家・手塚治虫によるアニメ製作会社虫プロダクションのもと、「それ行け!アンパンマン」シリーズで知られるやなせたかしが手がけた同名絵本を自らの演出でアニメ化した短編作品。
生まれてすぐに親を失ったライオンのブルブルと、ブルブルを本当の子供のように愛情を注いで育てた犬のムクムクの種別を越えた親子愛を母と子がブルブルとムクムクの行方を見守りながら語り合う形式のモノローグとボニージャックスの歌声込みでエモーショナル豊かに描いていた。
優しく微笑ましいタッチの前半からブルブルとムクムクが引き裂かれてから一転してシビアで切ない展開になる後半。製作当時の反体制ムードが何処となく反映されていた。
昭和のアニメは改めて深いなと思った。