“日本一の斬られ役”福本清三が映画初主演した『太秦ライムライト』が、カナダで開催された第18回ファンタジア映画祭で最優秀作品賞と最優秀主演男優賞の2冠を獲得した。
この映画は広島でも先月までバルト11で上映していた。
僕は公開初日の段階で観たが、かなり素晴らしい映画であった。
福本清三の斬られ役としてのキャリアが、福本自身の敬愛するチャールズ・チャップリン後期の代表作『ライムライト』での老芸人にウマくなぞらえて描かれていた。この辺はチャップリン研究家として知られる大野裕之が脚本を手がけたことが大きいな。
とにかく福本の哀愁漂う存在感がハンパでなく、彼がスクリーンに登場する度なんだかジーンと来てしまったものだ。
だから福本の主演男優賞受賞は当然のことだし、劇中セリフにある「斬られ役は演技力がなければ出来ない」をまさに証明したといっても過言ではないと思う。

ところで昨夜放映された「日曜劇場」の『おやじの背中』シリーズ第5話「ドブコ」は、悪役専門役者の父と婦人警官の娘による親子ドラマであった。
家族を養うために映画やドラマで悪役として何百回も殺されまくる父と、その父が任侠ヤクザ映画で演じたドブネズミ役が当たり役だったため、その娘という意味合いで“ドブコ”という有難くないニックネームで呼ばれてきたヒロイン。そのヒロインを演じたのが、堀北真希。脚本も木皿泉。そう、『野ブタをプロデュース。』コラボ再びであった。
でもこのドラマの本当の主役は、やはり父役のエンケンこと遠藤憲一だな。
時代劇の斬られ役、ヤクザ映画のチンピラ役、子供向け特撮ヒーローモノでの悪の幹部役と、これまたエンケン自身のキャリアのセルフオマージュそのもの。
悪役として最も活躍していた頃のエンケンを僕は知っているけど、現在もコワモテなんだけど若い頃は肌ツルツルで爬虫類があってもっと不気味だったし、特に大川俊道監督『NOBODY』でのエンケンはかなりコワかった。
「ドブコ」のエンケンセルフオマージュぶりもさることながら、堀北真希と谷村美月の夢の競演が何気なく実現していたりと、僅か1時間なのに見応えがあったな。
