ここまで酷い有様になり果てるとは思ってもいませんでしたよ。
先日発売されたグランツーリスモ7(以下GT7)。
そのゲーム内課金が原因で主に海外ユーザーから文字通りの総スカン状態。
記事執筆現在、海外大手のレビューサイト『メタクリティック』にてプロ(ゲームメディア)が批評したメタスコア87/100に対してユーザースコアが2.0/10.0を割り込む異常事態となっています。
国内メディアだってこの有様です。
※各社のリンクを貼らせていただきました
- シリーズ25年の歴史を感じさせる懐の深い作品(Car Watch)
- 控えめに言って最高なのかよ(ファミ通)
- 全てが洗練され研ぎ澄まされている(GAME Watch)
- ユーザーごとの「カーライフ」を追求できる作品(Response)
- シリーズ最新作はこだわりの塊(電撃オンライン)
そして、実際のゲーム画面と組み合わせると、こうなります。
✖️Astal✖️@astaranx#GT7 The Real Driving Simulator https://t.co/nIJz17dDqZ
2022年03月22日 05:40
なぜこのようになってしまったのでしょう。
私はPlayStationもGT7も持ち合わせていないため、ネット、SNS等で明らかになった情報をまとめ、GT7の何がダメなのかをご紹介します。
かつてGTファンだった自分自身への反省の念を込めて。
ユーザーから総スカン状態となった最大の原因は
フルプライスでソフトを販売しながらゲーム内課金を強要するゲームシステム
にあります。
それもなまじの基本無料ソフトすら上回る悪質さで、です。
では何故そうなってしまったか、をポイントごとに解説していきます。
1:何が何でもお金稼ぎはさせない
歴代グランツーリスモでは様々なレースイベントに参加してクレジット(以下Cr.)を稼ぎ、好きなクルマを購入したりクルマの強化をしたりします。
従来作だとプレゼントカーの売却も重要なCr.稼ぎの柱でした。
GT7ではレースによって得られるCr.が過去作に比べて低めに抑えられている他、プレゼントカーの売却もできない(消去はできる)ため従来作よりCr.が得にくくなるゲームデザインが採用されています。
発売当初は一部レースが不当に美味しいとしてアップデートにより軒並み下方修正(ナーフ)されました。
とはいえ、これだけで叩かれる要素にはなりません。
問題は、これを前提とした2以降の問題点です。
2:期間限定の招待状
GTに限らず収録車種の全てがディーラーに並んでいるわけではありません。
GT7では時折、ユーザーの元に招待状が届けられディーラーでは買えない超高額車が入手可能になる仕様ですが、招待状が使用できる期間は精々2週間ほどと短く設定されています。
つまり、
お金が稼ぎにくい × 期間限定の招待状
という相反する仕様が同居しているゲームがGT7なのです。
言い換えると、今すぐ欲しいなら課金しろという開発者からのメッセージに他なりません。
基本無料のソーシャルゲームならいざ知らず、GT7は
- 海外版だとPS5版:69.99ドル、PS4版:59.99ドル
- 国内ではPS5版:8,690円(税込)、PS4版:7,590円(税込)
という高額なソフト代を支払ってプレイするゲームです。
それでいて課金を促すゲームデザインというのが私には理解できません。
24時間食事も睡眠もとらずにGT7をプレイし続けるなんてありえませんし、招待状が期間限定となっている以上、Cr.稼ぎに効率を求めるのは自然な流れ。
よって、このゲームシステムが批判されるのは必然でしょう。
発売前に隠していたのならなおさらです。
しかし、問題点はまだあります。
3:実勢価格とはリンクするがレース獲得賞金はリンクしない
GT7においては中古車が実勢価格とリンクする、とのことでこうしたニュースも発表されています。
既にその影響は表れ始めていて、例えばマクラーレンF1はGT SPORTでは1億Cr.でしたが、GT7では18.5億Cr.と超高額化しています。
しかしながら1で述べたようにユーザーが得られるCr.は限られているため、課金誘導の理由付けにしか感じられません。
クルマの再現にリアルを求めるのは必要ですが、現実同様にクルマを買いにくくして何がしたいのでしょうか。
敢えて言いますが、ガレージにフェラーリやポルシェなどを好きなだけ並べて好きなクルマを気分で乗り回す世界はハッキリ言ってファンタジーの世界です。
私が求めるレースゲームは、挙動などはリアルでも好きなクルマを自由に乗り回すファンタジーな要素も含まれるタイトルです。
GT7にはそうしたファンタジーな要素はありません。
4:クレジット所持上限と資金決済法(Ver1.08現在)
GT7では所持金の上限が20億Cr.とされ、それ以上稼いでも消滅してしまいます。
そして、GT7における課金=グランツーリスモ クレジットは下記の4コースとなります。
問題はその中身です。
- レッド(275円):有償1000万Cr.
- ブルー(550円):有償2000万Cr. + ボーナス無償分500万Cr.
- シルバー(1,100円):有償4000万Cr. + ボーナス無償分3500万Cr.
- ゴールド(2,200円):有償8000万Cr. + ボーナス無償分1億2000万Cr.
こうして見比べると、あることに気づきます。
- 有償クレジットは価格に比例している
- ボーナス無償分は価格に比例していない
わざわざ有償、無償と区別する理由は何故でしょう。
ここで出てくるのが資金決済法という日本の法律です。
資金決済法により、いわゆるソーシャルゲームがサービス終了(サ終)した際、ユーザーはゲーム運営元に対して未使用分の課金アイテム(いわゆる魔法石など)に支払った代金の返還を求めることが出来ます。
※ここは法律専門サイトではありません。詳細な解説は他所を当たってください。
近年ではその対策として有償+無償ボーナスという形での課金アイテム販売が一般化しており、GT7でも同様の形式を採用しています。
代金返還の基準となるのが有償、つまり実際にお金を払った分となり、無償分はただのDLCに過ぎないのです。
GT7の問題点は、ゲーム内クレジット上限の20億クレジットを超えた無償分が容赦なく切り捨てられることにあります。
仮にゲーム内で19億Cr.を所有していた状態でゴールド(2億Cr.)を購入すると、有償8,000万Cr. + 無償20億Cr.となり、余剰分の2000万Cr.は消滅します。
販売ページにもそう書いてあるため、間違いないでしょう。
基本無料のタイトルでさえ、所持上限を超えた分くらいは一時的に所持できますよ。
それすらやらないのは悪質でしかありません。
ここまで書けばお分かりでしょう。
先日公開された ユーザーの皆様へ と題するページに書かれた内容がいかに空虚なものであるかが、です。
一部抜粋しますが、
- 課金なしでも多くのクルマとレースを楽しんでもらいたい
- 特定のイベントだけを、機械的に繰り返しプレイせざるをえない状況は、できるなら避けたい
それならば、
- 多様な手段で様々なクルマを楽しめるゲームデザイン
- それらを発展的に解決する、コンテンツの追加、レースイベントの追加、機能の追加
を行ったうえで言うべきことです。
課金部分だけはガッチリ作ったうえでユーザーを楽しませる要素はおざなり。
その結果がPS寄りで有名だったメタクリティックにおけるユーザースコアの低下ではないでしょうか。
グランツーリスモのファンだった私にとってグランツーリスモとはPlayStationそのものであり、PlayStationを購入する最大の動機でもありました。
言い換えるとGTのないPSはいらない、ってことです。
そのGTがここまで落ちぶれるとは。
この有様を見てPS5を買いたくなるはずなどありません。
PS5がXbox SeriesXより高性能か否かなど、もはやどうでもよいのです。
私にとってグランツーリスモの価値がなくなった以上、PlayStationは私にとって不要な存在。
手のひらを返したくなるような奇跡でも起こらない限り、私の評価が変わることは無いでしょう。
レースゲーム好きなので今後もグランツーリスモの情報は嫌でも目にすることになってしまいますが、はたで見てる分には楽しめるかもしれません。