3つめの仮説について考えた分野は,歴史に関するものでした.

 

岡田英弘 歴史とはなにか (C) 文藝春秋社

 

岡田英弘 東京外大教授の著書です. 随分昔(2001年)に出版された本です.出版されてすぐ購入し,読んだ記憶はあるのですが,昨今の国際情勢から この本を思い出して再びじっくりと読んでみました.

この記事にも書いたように,私は ゴビ砂漠=シルクロード という定説に疑問を抱いています.

砂漠も険しい高山もなく,冬季以外は 豊かな草原が広がる ユーラシア北方平原を往来した方が,どう考えても通商には有利だからです.

この疑問は 日本の教科書では一切無視されています. それは北方には粗野で狂暴な遊牧民がいて,通商路として使えなかったとされているからです.

 

世界史総合図録[1994.01.20]

(C) 山川出版


しかし,日本の歴史学,特に東洋史学は すなわち中国史学です.中国の文献だけを頼りにし,そこに書かれていることはすべて正しいとして,出発しています. それでは『中国は 四方を 東夷・北狄・南蛮・西戎という野蛮人に囲まれた世界で唯一の文明国』とする,いわゆる中華思想をなぞっているだけにすぎません.

冒頭の 岡田先生の著書は,一連の著作の入門書のようなものですが,非常に面白いものでした.

 

最終章にこんな一節があります.

 

ただし,(歴史)資料はうそをつく,というのが歴史家の常識だ. つまり,人間というものは,自分の経験を書くとき,かならず個人の好みが入る. 自分の感覚が受けた印象に,これはこういう事件だ,という物語を与えて理解する段階で,その物語の筋書きの選択に,好みが働くのだ. これは,個人の個性による偏向であるばあいもあるし,その人が属している文化や社会で受け入れられやすい筋書きであるばあいもある.

(岡田英弘 『歴史とはなにか』 p.218)

 

つまり,歴史資料は当然のようにバイアスがかかっているのです.そしてそれに続けて 『現代の新聞などの報道も同じ』としています.

 

僭越ながら ぞるばも付け加えておきましょう.『医学論文だってバイアスから無縁ではありません』と.

 

小学校から大学まで,教科書に書いてある定説を正解としないと,試験に合格できません. しかし,社会人となれば,どう考えようと自由です. 教わったこと,正解とされたことが 本当に正しいのかを 今一度自分の頭で考えてみたいと思っています.ボケ防止のためにw