仏教の世界では 『有』と『無』とは 対立するものではなく, 『有』は『無』であり,『無』はまた 『有』であり,両者に隔絶した差はないと教えます.
般若心経の有名な一句:
色即是空 空即是色
はその典型です. また仏法には『有無同然』という言葉もあります.
書いていないこと
世の中には 糖尿病に関するメディア情報・雑誌・ブログ記事が多数あふれています.
そこには 『なんとか法で,こんなに血糖値や HbA1cがよくなった』などというものもあります.
たしかに それを読むと,血糖値なりHbA1cがよくなったとすごいデータが示されています. これで決まりじゃないか,と思うでしょう.
しかし,私はそういう情報には 『有』と『無』を 考える習慣があります.
ここに書かれていないことは何なのか?
そうです,血糖値や HbA1cについては 詳細に『良くなった』経過が書かれているのに,例えば コレステロール,中性脂肪,血圧,体重 等々には 一切ふれていない情報があったとします.
【当然 あってしかるべき情報が示されていない】
このことから 逆に その情報については「触れたくなかった」=「良くなかった」 とも考えられます.
つまり 『無』から『有』を推測できるのです.
この ひねくれた心構えは,医学論文を読む時にはとくに必要です.
そこでは『何が書いてあるのか』よりも むしろ『何を書いていないのか』に注目する必要があるのです.