健康や病気が気にかかる人,すなわち高齢者にとって,新聞・テレビで流される『お茶の間医学』情報は 欠かせないものでしょう.
実家の老母も食い入るようにテレビを見ていました. 銀行関係など,どんなに重要なことでも メモ一つ取らない人なのに,健康番組を見る時だけは熱心にメモを取っていました.

若い人に比べて 高齢者は病院通いの頻度は高いでしょう.しかし,それでもせいぜい 月に数回. いくら病院で 医師が口を酸っぱくして説明しても,それはたかだか数分間です.ほとんど記憶に残らないでしょう.

ところがテレビの健康番組は毎週10本近くあるのです.時間にすれば数時間以上.これに新聞の『健康欄』が加わります.
つまり,病院よりも テレビ・新聞の方が圧倒的に情報支配力が強いのです.

(C) nagさん

 

だからこそ,視聴率がとれる健康番組・新聞記事には,メディア各社も力を入れるのですが,そこで流されている情報がこれでいいのかと思うことは多いです.意図的かどうかは別として,結果として ミスリード,あるいは印象操作しているのではないかと.

これは 糖尿病薬 SGLT2阻害薬の一つであるエンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)が,血糖値降下作用だけでなく,心疾患死・全死亡率を低下させ,心血管イベントも抑制することができたという,非常に有名な文献です.

EMPA-REG OUTCOME Trial
N Engl J Med 2015;373:2117-28

 

たしかに この報告は画期的でした.

そして『お茶の間医学』ではこのように紹介されています.

『糖尿病の薬が心臓や腎臓の病気を予防・改善することが証明された』

[3]に続く