病院と自己血糖測定(SMBG)については,その数値の差がよく話題になります.

 

SMBGでは,血液のヘマトクリット値にも影響を受けるという話です.
ヘマトクリット値は,下記で解説されていますが,つまりは血液がどれくらい『濃い』かの指標です.

ヘマトクリット値とは(厚労省:e-ヘルスネット)

基準値は:

成人男性で40~50%,
成人女性で34~45%,

ですが,貧血気味の人はこの数値が低くなります.

一方SMBGは,大きく分けて GOD法,GDH法の2種があります.

[GOD(Glucose-Oxidase),GDH(Glucose DeHydrogenase)は 血中ブドウ糖と反応する酵素の名前です]

で,このGOD法を採用しているSMBGでは,ヘマトクリット値に影響されるという報告が2012年の糖尿病学会でありました.

新たなSMBG機器3機種の基礎的検討(2):
相関性におけるヘマトクリット値の影響
第55回 日本糖尿病学会 年次学術集会(2012年5月)III-P-139

 

SMBGの測定値と,病院での静脈血測定値とを比較したものです.

両者が一致すれば100%になるはず(赤い水平線)ですが,ご覧の通り 血液のヘマトクリット値が高いほど,つまり血の『濃い』ほど,SMBGでは低めの値が出る(緑の線)ようです.

 

なお,『病院での測定は静脈の血漿血糖値,SMBGは末梢動脈の全血血糖値. だから必ず SMBGの方が20くらい高く出る』などと まことしやかに書かれていることがありますが,それが都市伝説であることは上の例からもわかります.

この機器(テルモのメディセーフミニ)では SMBGの方が低くでています.

SMBGは実測値をそのまま表示しているのではなくて,病院での測定値とできるだけ一致するように補正して表示しているので,SMBGの方が必ず高く出るということはありません. 糖尿病の専門医ですら,これを知らない人も多いようです.