ペットの超音波検査:胆嚢の異常:診断編. | しらい動物病院ブログ

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千葉県佐倉市の志津・佐倉しらい動物病院


こんにちわ、千葉県佐倉市のしらい動物病院の獣医師の白井顕治です。

ペット医療情報の第一回目となる記事を書かせていただきます。


まず今回は胆嚢の病気について書かせていただきます。




え~、第一回目が胆嚢って・・・




という声が画面の向こうから聞こえてきそうですね。


もちろん目には見えないし、マイナーな気配が漂う臓器ですが、

カルテを見直した2011年~2013年に、

普段は健康で、健康ドッグを受診したわんちゃんで最も異常が多い臓器だったからです。


胆嚢の病気は無症状のまま、病状が進んでいき、悪くなると激烈な痛みと共に命に係わる状態に陥ることもあります。



$犬心あれば猫心あり


「なんだよこの模式図・・・」

子どもの絵みたいですが、ほかの人の著作物を使うわけにもいきませんので、お許しください。


こちらは胆嚢の模式図になりますが、胆嚢は肝臓で作られた胆汁を一時貯蔵し、食事のタイミングで胆汁を排出して、主に脂肪や脂溶性ビタミンの消化・吸収に役立っています。

肝臓に囲まれた袋状の臓器です。


ただの袋かと思いきや、肝臓で作られた胆汁の成分を調整したりする優れものです。


胆嚢の状態を調べる検査としては、胆石など、よほど固くならなければレントゲン撮影検査ではわかりません。


超音波で調べることができます。



$犬心あれば猫心あり


(カメラ目線のモモちゃんです。あと私の後ろ姿です)


しらい動物病院では東芝のエグザリオ(Xario)を備え、美しい超音波映像を得ることができます。

また、得られた画像および動画を交えながら検査結果を飼い主様に説明させていただいております。






この部位で超音波検査を行い、よく見つかる病気トップ3


1位:胆泥症


2位:胆嚢粘液嚢腫


3位:胆嚢炎





といったところです。


胆石は4位か5位くらいでしょうか


人間だと胆石が見つかることが多いようですが、ペットでは石ではなく、どろどろした「胆泥(たんでい)」という泥がたまってしまいます。


胆石はコロコロとしていて詰まったりしますが、胆泥は塊になっていないことがほとんどなので、どろどろと腸管に流れ出ていってくれることもあります。

犬心あれば猫心あり
こちらが胆泥症の超音波画像になります。


丸くて黒いのが胆嚢で、その周りが肝臓ですね。



犬心あれば猫心あり
胆嚢の中(ピンクの○で囲った部分)にグレーのものがあり、重力に従って水平に胆嚢内に貯留していることが分かります(ピンクの点線の下の部分)。

※わんちゃんは横になっているので、写真では水平に貯留しているように見えません







この動画は胆石症および胆嚢粘液嚢腫を併発しているワンち­ゃんです。



12歳の雄のヨークシャーテリアで、検査時は2週間に1回程度、嘔吐がみら­れるのみで、元気食欲や排便・排尿に以上は認められていません。


ソフ­トの関係上、動画はやや短めになっています。


画面中心の黒いところが胆嚢、周辺のグレーの部分が肝臓です。胆嚢は通常では胆汁とい­う液体成分のみが含まれますので、正常な胆嚢の超音波検査では胆嚢内はほぼ均一な真っ­黒な像として得られます。


この動画内で、ワンちゃんの胆嚢は一時フルーツを輪切りにした断面のような、放射状の­白い筋が胆嚢内に見えることがわかると思います。その白い筋を持って、胆嚢粘液嚢腫で­あることが診断されます。


また、動画後半に白く光っている部分が胆嚢内に確認できると思います。

加えて、その白­い領域の画面下の部分は、黒く影を引いていて、肝臓がよく見えないことがお分かりにな­ると思います。



これは、超音波の音波が跳ね返るほど固いものが白い部分にあることを示­し、それより先には音波は届かないので、黒く影を引く形になります。



体の中でこのよう­に影を引くほど固いものは正常では骨・軟骨・食べたごはん・もしくは腸管内の空気など­です。胆嚢や膀胱内にこのような像が得られた場合、胆石であると診断されます。


これらの病気の原因について触れて、診断編の記事を終えたいと思います。


胆泥および胆石が貯留する原因は大きく分けて2つあります。

一つは食べ物中のコレステロールなどの脂質が多い

もう一つがそのわんちゃんの遺伝的な要因です


泥がたまっているからと言って、砂や石を食べてしまうことが原因ではありません。


予防するためにはおやつや人の食べ物を極力控えることが有効だといわれています。


また、胆嚢炎に関しては胆泥や胆石症による刺激により炎症が起きる場合や、腸管から細菌が逆流したことによる細菌感染による炎症が多いようです。

検査場では明らかな胆嚢炎があるにもかからず、症状を示さないわんちゃんもいます。


ここでいう症状とは、主に食欲不振・元気消失・嘔吐などをさしています。


(膵炎から波及することなどもなくはありませんが、検診の時に見つかる理由としては上にあげた二つが主です。)

胆嚢粘液嚢腫に関しては、はっきりとした原因はわかっていませんが、胆泥や胆石による刺激、細菌感染による刺激などが誘引しているという考えと、遺伝的素因があるのではという意見も出ています。



この記事の続きは、治療編でお話ししていきたいと思います。






※「ペット医療」の情報について※

この情報では病気や症状をピックアップして、一般的な診断法や症状、オーソドックスな治療法について記載していきます。


獣医療は人間の健康保険のように公的保険制度がありませんので、一つの病気に対して各病院で使う薬剤、薬剤量及び治療法の選択基準(即手術をする医院もあれば、内科で病気を散らすことを第一目的として行うなど)が異なります。

そのため、当院で一般的に行われる診断や治療が、現在あなたのかかっている動物病院と異なる可能性はあります。

その場合、ここでの情報をお読みになった時に、

「インターネットで書いてあることと違うことをされた!」

もしくは

「私のわんちゃんが受けた治療とは違うことがここに書いてある!」

と問題として取り上げるのではなく、参考として読んでいただければと考えております。


千葉県佐倉市のJAHA認定病院:志津・佐倉しらい動物病院




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