昨日は「第三者委員会」のメンバーの委員の資質に問題がある、と書きました。
そして調査主体が「設置者・学校」だということも問題ではないかと書きました。これは罰を与えるための捜査機関ではないので仕方ないのかもしれません。

やはり、「第三者委員会」の目的がわからないと全てがあいまいになると感じます。
そこで、「第三者委員会」の目的なのかどうか不明ですが、昨日少し書きました「いじめ防止対策推進法」第二十八条の条文、

(学校の設置者又はその設置する学校による対処)
第二十八条 学校の設置者又はその設置する学校は、次に掲げる場合には、その事態(以下「重大事態」という。)に対処し、及び当該重大事態と同種の事態の発生の防止に資するため、速やかに、当該学校の設置者又はその設置する学校の下に組織を設け、質問票の使用その他の適切な方法により当該重大事態に係る事実関係を明確にするための調査を行うものとする。
一 いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。
二 いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。
2 学校の設置者又はその設置する学校は、前項の規定による調査を行ったときは、当該調査に係るいじめを受けた児童等及びその保護者に対し、当該調査に係る重大事態の事実関係等その他の必要な情報を適切に提供するものとする。
3 第一項の規定により学校が調査を行う場合においては、当該学校の設置者は、同項の規定による調査及び前項の規定による情報の提供について必要な指導及び支援を行うものとする。

を見てみます。
ここでは、調査する主体は「学校の設置者又はその設置する学校」です。「組織」を設置して、調査することになっています。そして、その調査は、

「事実関係を明確にする」

ためとなっています。その結果をもとに、

「いじめを受けた児童等及びその保護者に対し、事実関係等その他の必要な情報を適切に提供する」
「必要な指導及び支援を行う」

ことになります。この三つ、

「事実関係を明確にする」
「いじめを受けた児童等及びその保護者に対し、事実関係等その他の必要な情報を適切に提供する」
「必要な指導及び支援を行う」

が「第三者委員会」の目的になるのでしょうか。
昨日取り上げた、講演録「いじめ調査に関する第三者委員に学ぶ」(PDF文書)の「湯河原町いじめ自死事件」の「湯河原町いじめ調査委員会」委員・影山秀人弁護士が、

「調査報告書の内容を精査する」

目的で立ち上がられたと述べられています。神奈川県教育委員会主導のもと湯河原中学校支援対策本部が

「いじめはあったが自死との間の因果関係は不明である」

という調査報告書(非公開)を提出しました。その調査結果を精査することが目的ということです。
また、「足立区のいじめに関する調査委員会」委員・関哉直人弁護士は、

「事実調査をしてほしいという遺族の意向」

で設置されたということです。こちらも、学校側の報告書に

「自死との間の因果関係について触れられていなかった」
「報告書に記載されない事実関係を知りたい」
「自死との因果関係を認めてほしい」

という気持ちがあったのではないかと述べられています。
やはり「事実関係を明確にする」というのが第三者委員会の目的だと思います。

「事実」の調査は学校、警察も実施しています。そして、第三者委員会でも実施します。そこまでしても、結局「事実」がわからないということなのでしょう。

そして、講演録「いじめ調査に関する第三者委員に学ぶ」(PDF文書)の影山弁護士によると、

「第三者委員会には法的な資料入手権限がない」

ということで、加害少年らの供述調書等の送致記録を参照した時は、

「遺族が閲覧・謄写した記録を遺族から提供」

してもらったと述べています。「事実関係を明確にする」が目的の第三者委員会が閲覧権限がないのはおかしいと感じます。プライバシーの問題があるのでしょうが、そのような状況で「事実関係を明確」にできるのでしょうか。第三者委員会では事実関係を明確にする」ことはできないと思います。

穿った見方をすれば、学校、警察、第三者委員会が「事実関係を明確」にするので、「事実」が明確にならないはずがない、と国民に納得させるだけの制度ではないかと考えてしまいます。それぞれ、問題があったので、その都度パッチでふさぐように対応してきた、と受け止めてしまいます。

非行事実があった場合は家庭裁判所へ送付になります。「事実」が重要であれば、学校、警察、第三者委員会、家庭裁判所でのタスクフォースを作って「事実関係を明確にする」だけを目的に調査することもあり得ると思います。未成年者の犯罪なので一般の犯罪と別に考えてもよいのではないでしょうか。

問題は各機関、学校、警察、第三者委員会、家庭裁判所のかかわりが発生する時期に違いがあることです。しかし、聴取側の人員をうまく選別するなどで聴取される方の負担も減る可能性もあります。弁護士も同伴することもできる、また、警察の取り調べ時の設備で録画もできるので人権にも配慮できる可能性もあります。うまく制度を作ればもっと良いシステムが構築できると思いますが。

 

ただし、ただ一つ言えることは、どんな制度、システムを作っても結局結果は運用する人に依存するということです。運用する人の資質、自覚、想いで結果が違ってくることは確かです。