昨日のブログからの続きです。
昨日米不足になっいる原因は、

「去年の猛暑の影響でコメの品質が低下し、お米が小粒になった。そのため、精米すると重量が減り、お米の量が減った。供給量が減った。片や、インバウンドが増えたので消費が増えたことで需要は増えた。そのため価格が上昇した」

と書きました。
消費を減らすことはできないので消費が増えたことはひとまず置くとして、米の質を含めて供給量が実質少ないということです。

それであれば、「備蓄米」があります。NHKの記事の「90%以上、値上がり」したのであれば、政府が備蓄米を出せばいいのです。
農林水産省のQ&Aによると、備蓄米とは、

「いつでもお米を供給できるよう、1995年からは、法律により、国によるお米の備蓄を制度化」

したものです。2014年年度のデータですが、日本の米の年間消費量は「796万6,000トン」、備蓄米は「100万トン」で、年間消費量の1割以上もの備蓄米を保有しています。備蓄米があるので簡単には「米不足」になるはずがないのです。
それなのに。90%も値上がりしているのに供給していない。ということは、農林水産省は、備蓄米を出すほどの「米不足」ではないと認識しているということです。


では、昨年の収穫量を調べてみます。2023年11月11日付の日本農業新聞によると、

「農水省は10日、2023年産主食用米の予想収穫量(10月25日現在)が前年実績比1・4%減の661万トンになったと発表した。前回発表の9月25日現在から、1万4000トン下方修正した。同省が示した適正生産量より8万トン少なく、需給がより引き締まる。一方、全国の作況指数は「平年並み」の101となった。各地で大粒の米が多く、前回から1上げた。」

です。
農林水産省が適正生産量「669万トン」(これが予定の消費量と解釈しました)よりも「8万トン」少ない「661万トン」だということです。適正生産量の98.8%の収穫量で、1.2%少ないということです。
昨日「お米が小粒」が原因の一つだったのに、こちらの記事は「各地で大粒の米が多い」ことになっています。違っています。どちらが正しいのでしょうか。

そこで、この記事の作況指数を見てみると、

「全国の作況指数は「平年並み」の101」

です。
北陸農政局統計部生産流通消費統計課が出している作況指数の調査方法を説明した資料「水稲収穫量調査のしくみ - 農林水産省」(PDF資料)によると、

「収穫量は1.70mmの「ふるい目幅」で計算」
「県ごとに生産現場で最も多く使われている「ふるい目幅」(新潟県・石川県1.85mm、富山県・福井県1.90mm)で計算」

されています。「ふるい目幅」以上の米を収穫量として計上しているということです。つまり、米の粒のサイズを考慮しているのです。

そして、農家は農協以外の業者へ出荷する場合は、玄米を「ふるい目幅」で選別して、「ふるい目幅」以上の玄米を納品します。農協の場合は、コンバインで刈り取ったもみ殻付きの米のまま納品しますので、農協内部で選別していると思います。
つまり、通常流通している玄米の粒は一定基準の大きさを持っています。年によって大きく変わることはありません。「ふるい目幅」で選別するためです。

作況指数に戻ります。この記事によると、作況指数が「やや不良」の県は、

秋田県、新潟県、富山県、福井県、愛知県、滋賀県、鳥取県

の7県です。これが「一部の産地や銘柄で、コメの流通量が減っている」という理由でしょう。とはいえ、新潟県で「95」ですから、例年の95%を収穫したということです。昨年、2023年の都道府県別収穫量(水稲)のデータから新潟県の場合、例年の主食用米収穫量は「569,600トン」(作況指数から算出)のところ「541,100トン」で、約「30,000トン」少ないことになります。

もう一つ粒の大きさに関するものとして等級があります。上で説明しましたが玄米で納品する場合に一定基準サイズ以上にするのですが、その選別機の性能などが原因で、基準以下のものが混じります。不作の時、作況指数が悪い時には基準以下のものが混じる割合が増えます。そのため、整粒、基準以上の粒の割合が減ります。等級が下がるということです。二等、三等米が多くなり、一等米が少なくなります。
確かに作況指数が「やや不良」の7県は等級が悪いものが多いのかもしれません。

しかし、

「先月後半の段階で、「関東地方のコシヒカリ」は、60キロ当たり2万5958円と、前の年の同じ時期に比べて90%以上、値上がり」

になるほどの供給量の減少とは考えられません。


ところで、別のNHKの首都圏の記事で、日本国際学園大学・荒幡克己教授が、

「主に加工用に使われるコメが少なく、代わりに低価格帯のコメの引き合いが増えたことなどが、価格を押し上げている」

と説明しています。
「猛暑の影響」が原因ですが、なんだか少し違った印象を受けます。

そして別の記事も見つけました。
長くなるので再度明日に続けます。