のんびりと正月を過ごしていたところ、いきなりトランプ大統領がやってくれました。3日の日本のテレビ、ラジオでも大々的に「ベネズエラの首都カラカスなどを地上攻撃した」と報じていました。3日付の読売新聞の記事「トランプ氏「ベネズエラへの攻撃成功」、マドゥロ大統領を拘束…政権転覆へ国外追放」によると、

米国のトランプ政権は3日未明、南米ベネズエラの首都カラカスなどを地上攻撃した。複数の軍事施設などが破壊された模様だ。トランプ大統領は自身のSNSでベネズエラへの大規模攻撃が成功したと発表し、同国の反米左派ニコラス・マドゥロ大統領が妻と共に拘束され、国外に移送されたと明らかにした。

と伝えています。
昨年の秋ごろからベネズエラの船舶を麻薬船だとして攻撃したり、ベネズエラのタンカーを拿捕していました。まさかここまでのことをするとは思っていませんでした。その後だんだんと詳細が報道されました。

読売新聞 2026年1月4日: 米国が拘束のベネズエラ・マドゥロ大統領がニューヨークの空軍基地到着、拘置所に移送か…米報道
読売新聞 2026年1月5日: ベネズエラ大統領の警護チーム「大多数が死亡」…国防相「市民や軍人も冷酷に殺害された」
読売新聞 2026年1月5日: ベネズエラ攻撃、死者80人に…軍や警察で任務に就いていたキューバ人32人が死亡

BBC 2026年1月3日: トランプ氏、ヴェネズエラの大統領夫妻を拘束し国外移送と発表 米軍が首都を空爆
BBC 2026年1月4日: トランプ氏、「我々がヴェネズエラを運営する」 マドゥロ氏はNYに到着
BBC 2026年1月5日: トランプ氏、ヴェネズエラ暫定大統領に警告 米国に従わなければマドゥロ氏と同じ運命と

CNN 2026年1月4日: 米国がベネズエラを「運営する」とトランプ氏 マドゥロ氏の拘束後に発表
CNN 2026年1月4日: ベネズエラ大統領拘束、米当事者らが明かす作戦の内幕
CNN 2026年1月5日: 【分析】トランプ氏によるベネズエラへの攻撃と大統領の拘束は合法か

CNN 2026年1月6日: ベネズエラ巡り安保理緊急会合、中ロが国際法違反と非難 米は反論


当然航空機などで攻撃したので軍関係者の被害だけでなく一般市民にも被害があったようです。被害がなかったのはアメリカ軍のみのようです。
マドゥロ・ベネズエラ大統領は独裁者で、選挙も不正で当選したとして問題のようですが、それでも他国を攻撃してまで拘束、移送していいのかということは疑問です。国際法にも問題がありそうです。そのためでしょう、国連安保理で緊急会合が開催されました。当然アメリカは正当性を主張し、ロシア、中国は非難しています。しかし、アメリカは拒否権を行使できるので意味がないでしょう。フランスも非難はしていますが、アメリカの庇護が必要な欧州は反対できるはずがないですね。当然日本の高市早苗首相は、

首相は日本政府の立場について、「これまでも、一刻も早くベネズエラにおける民主主義が回復されることの重要性を訴えてきた。我が国は従来から、自由、民主主義、法の支配といった基本的価値や原則を尊重してきた」と説明。その上で、「こうした一貫した立場に基づき、G7や関係国と緊密に連携しながら、ベネズエラにおける民主主義の回復、情勢の安定化に向けた外交努力を進めていく」と語った。

と5日付の読売新聞の記事「ベネズエラ情勢巡り高市首相「関係国と緊密に連携」、法的評価に踏み込まず…日中関係は「国益の観点から適切に対応」」が伝えています。「法的評価に踏み込まなかった」ということです。少なくとも「法の支配」には反していると思います。軍事力をアメリカに全部任せているとはいえ、こんな態度でいいのでしょうか。良い世界にはならないことだけは確かなような気がしますが。

アメリカ国内の法などでも問題があるようです。上記の5日付のCNNの記事「【分析】トランプ氏によるベネズエラへの攻撃と大統領の拘束は合法か」では(長いですがほとんど全文転載します)、

米軍を使用して体制を転覆した直近の主要な事例といえば、当然イラク戦争だ。あの戦争は2002年に連邦議会で承認された。
それ以降、歴代政権は中東における複数の軍事行動を正当化しようと、時に疑わしい権限を行使してきた。しかしベネズエラは、全く異なる領域に属する。
多くの人々はベネズエラでの取り組みに関してイラクを引き合いに出すが、より適切な比較対象は1989年のパナマだ。
ベネズエラと同様、当時のパナマの指導者だったノリエガ将軍は麻薬の密輸を含む罪により米国で起訴された。さらにベネズエラと同じく、作戦は大規模な戦争というよりも指導者を権力の座から追い落とすためのごく限定的な取り組みだった。
司法省法律顧問局(OLC)は80年の時点で、連邦捜査局(FBI)には外国人を逮捕・誘拐して裁判を受けさせる権限はないという結論を下していた。しかしジョージ・H・W・ブッシュ政権下のOLCは89年の夏、その結論をこっそりと覆した。
後にブッシュ政権と第1次トランプ政権で司法長官を務めるウィリアム・P・バー氏が記したメモによれば、大統領には固有の憲法上の権限があり、FBIに対して外国での人々の拘束を命じることができる。たとえそれが国際法違反であってもだ。
当該のメモは今日に至るまで物議を醸している。それは異常なまでに権限の付与を拡大する内容でもあり、適用すればどこにでも米軍を送り込める事態になりかねない。

と解説しています。
司法省法律顧問局(OLC)が「外国人を逮捕・誘拐して裁判を受けさせる権限はない」と結論を出していたにもかかわらず、「国際法違反であっても」「大統領には固有の憲法上の権限がある」というものに覆しているのです。すごいですね。これでは、政府転覆は思い通りにできるということです。そのためでしょう、4日付の時事通信の記事「北朝鮮、日本海に弾道ミサイル 変則軌道か、EEZ外に数発」が、

韓国軍によると、北朝鮮は4日午前7時50分ごろ、平壌付近から日本海に向けて弾道ミサイル数発を発射した。日本の防衛省も北朝鮮から少なくとも2発の弾道ミサイルが発射され、日本の排他的経済水域(EEZ)外に落下したとみられると発表した。

と報じました。


5日付のBBCの記事「【解説】 トランプ氏の行動は世界中の権威主義国家にとって前例となる可能性 BBC国際編集長」では、

アメリカのヴェネズエラ介入は、トランプの世界観がどういうところからわき出ているのか、はっきり浮き彫りにした。
彼は、自分が他国の鉱物資源を欲しがっていることを隠そうとしない。
トランプはすでに、軍事支援と引き換えにウクライナの天然資源から利益を得ようとした。
トランプは、ヴェネズエラの膨大な鉱物資源を支配したいという欲望を隠さない。ヴェネズエラが石油産業を国有化した際に、アメリカの石油企業から利益を盗んでいったと信じていることも隠さない。
「我々は地中から膨大な富を取り出すことになる。そして、その富はヴェネズエラの人々に、かつてヴェネズエラにいた国外の人々に、そしてアメリカ合衆国にも補償という形で、渡されることになる」


と解説しています。
結局ベネズエラ大統領夫妻拘束の目的がベネズエラの石油資源だったということです。そして、この延長線上にグリーンランド併合、グリーンランドの天然資源があるということです。

トランプ大統領は、天然資源のために、「国際法違反であっても」他国の政府要人を拘束、移送することができると考えているということです。そして、この政権の閣僚の考え方も同じだということです。そして、この考え方が拡大していきそうな印象を受けます。アメリカの建国そのもののようです。建国後に力、軍事力でアメリカの国土を原住民から奪っていったのですから。今年もトランプ大統領に世界は振り回されることは確かなようです。そして、今回の事件は世界の政治は法治主義ではなく力の政治だということを改めて示したことになります。アメリカは元々そういう国だったとはいえ、悪い前例を作ったことだけは確かです。