今放映中のアニメ「ようこそ実力至上主義の教室へ 3rd」
を見ていて思い出したことがある。
(面白いアニメだから見てね)
 
もう10年近く前の話だけど、その頃私は某病院の○○課で、
責任者をしていた。
ある日事務長に呼び出されて、事務長室に行くと
「派遣社員をひとり辞めさせてください」と言われた。
今期の収入は1割ぐらいダウンしてるし、そんなに人は
いらないでしょう、って言う理由。
言いたいことはいろいろあったけど、この事務長
人の意見を聞くようなタイプじゃない、そうせ院長命令だろうし。
猶予は1週間、それまでに誰を辞めさせるか決めるようにと。
いわゆる派遣切り。
これまでも、誰かを退職させるみたいなことはあった。
何か問題を起こしたり、勤務態度が著しく悪かったりだけど。
今回は違う、このところ○○課は人間関係もうまくいっていて、
仕事も非常にうまく回っている。
それだけに難しい。
 
誰に相談できるわけでもなく、5名の派遣社員の顔が目に浮かぶ。
「みんないい人なんだよな」
仕事への貢献度、知識、将来性で選ぶ?
それとも家庭の事情もあるだろうし、そのあたりを考慮する?
ひとり仕事があまりできない人で、2、3回大きな失敗をしている人の
名前が浮かんだ。
「○○さんかな」
そんなことで決めてしまっていいの?
自分でもよくわからなくなってきた。
 
結局決められず、期限の前日に5名の派遣社員を集めて話し合うことにした。
集まってもらった理由を説明すると、みんな沈黙。
最終的にはくじ引きで決めようかとも思ったけど、
それって責任者が責任を放棄してるんじゃない?
しばらくして、それぞれの家庭の事情を聴こうかと思った時、
Aさんが手を挙げた。
「私、辞めてもいいですよ」
Aさんは5人の派遣社員の中で一番優秀。
年齢も25歳と若い、派遣期間が終わったら正職員にしようと考えていた人。
「実は来年、臨床検査技師の専門学校へ行こうと考えていたんです。
今職場で学んでることを将来に生かそうと思って、
半年早くなるだけなんで、その間アルバイトでつなぎます」
重苦しい沈黙が一気に和んだ。
「そうよね、Aさん優秀だからステップアップするべきよね」
「Aさんなら大丈夫、きっと国家試験にも一度で合格できるよ」
もう既にAさんが辞める前提で、話が進んでしまっている。
 
「Aさん、それで大丈夫なの?」
少し気にかかったのでAさんに問いかけてみた。
「大丈夫ですよ、たぶん」
たぶん?が引っ掛かったけど、いろいろ聞ける雰囲気でもなくなっていた。
彼女を温存できたところで、状況は変わらない。
私がその時、勇気をもって決断できなかっただけなんだよね、責任者失格。
結局2週間後、彼女は退職して行った。
結果往来?
その後、4名になった派遣社員は、何事もなかったように仕事をしていた。
 
今でも引っ掛かるんだよね。
Aさんは本当に専門学校に行こうと思っていたのかな。
性格もいい子だったからね。
その後、確かめる機会もなかったし。
あった所でどうにもならなかったんだけど。
 
結果的には優秀な職員を一人失っただけだった?