[縞ちゃんが来た]     


縞ちゃんは突然やって来た
 

去年(2021年) 初冬 庭仕事をしていた時


南の塀を軽々乗り越え、うちの庭に降りた
ちっちゃ~い猫!
 

グレーの地毛に全身黒の縞模様
スリムで精悍なボディだったが

何とも地味~で、ちっちゃい
 

この猫、冬を越せるのかな、と思う
 

うちのおばさま猫は7kgの

メイン・クーンなので
 

特に “小さい” と感じたのかもしれない
 

 

後に判明した縞ちゃんの体重は3.5kgだった

 

 

冬の薄暗い庭に溶け込んでしまいそうな程
地味~な猫の縞ちゃんはその時、
 

豊かな声量と美しい声で鳴いた
 

“ご飯ちょうだ~い!”
 

 

庭中、ご近所中に響き渡るような美声
猫界のパバロッティか... 

 

(実は女の子でした)
 

 

縞ちゃんはずっと鳴いている
“ご飯ちょうだい!てば‼”

ご飯をあげたらどうなるのか、と
頭の中を思考が駆け巡る
 

当惑している人間などに構わず、

縞ちゃんは鳴く
 

“ご飯、ご飯 ごはんだよ~!”

仕方ない... 

 

 

うちのおばさま猫が飽きて
放棄した餌があったはず、と
 

家に入るために移動すると

 

縞ちゃんは2mくらいの距離を

微妙に保つ
 

キャットフードを器に入れて庭石に置く
 

縞ちゃんは私との距離が

十分にとれてから食べ始める
 

“ガツ ガツ ガツ”
とってもお腹が空いていたんだね

 

 

チラチラ見ながら庭仕事をする
 

 

あれ? 食べ終わったけど動かない
え、まさか足りない?
 

多めにあげたつもりだったけど...と追加
 

もち論、縞ちゃんは距離を保つ
 

チラ見しながら庭仕事をしていたが
いつの間にかいなくなっていた 完食
 

あの小さい体でこんなに食べて行った...
また来るのかな、と少し不安になる

 

 

 

   [うちのそと猫になった縞ちゃん]   


不安的中 縞ちゃんは再びやって来た
 

いや、少しは期待していた 

心配もしていた
 

「やっぱり来たのね」
ご飯を準備している間中、ずっと鳴いている
 

“私、来たよ~! ご飯、早く~!”
 

素晴らしい音量と美声 

自分でもきっと自慢なのだ


何日か経過   朝、晩   朝、昼、晩 
 

不定期だったが朝はたいてい廊下の

カーテンを開けると待っている
 

植木の下にいると分からないが 

“私、ここよ~” と鳴く
 

「あら ちゃ~んといたのね 縞子」

 

ある朝カーテンを開けると

 

縞ちゃんを含め、ちっちゃいのから

大っきいのまで四匹の猫が待っていた
 

「え――――ッ! 噓! どうするの... 」

衝撃が走る
 

とりあえずご飯を出してみると

一番大きい猫が近づく
 

と、縞ちゃんはその猫にパンチ!
 

“あんたが先じゃないわ!”
 

自分よりふた嵩程大きい猫にパンチ... 
 

そして小さい猫二匹を

促すような素振りをしたが
 

小さい猫達は人間(私)を怖がって

逃げ腰になる
 

 

なので距離をとって見ていると

四匹それなりに食べていたようだ
 

最初は譲っていた縞ちゃんも

空腹に耐え兼ね
後からは割り込んでいたし

 

チビ猫二匹はさておき、

大きいのはオス猫らしい
 

猶予はならない 

 

発情期が来る前に

不妊手術をしなければと
 

年末、なんとか縞ちゃんを捕獲した
 

大変だった...

 

 

 

   [縞ちゃんはうち猫になった]   


人間も大変だったが

縞ちゃんも大変だったらしい
 

最初のパニクリようはすごかった
 

が、茶の間とガラス戸で仕切られている

廊下で暮らすことに少しずつ慣れていった
 

メインクーンが体重と年齢で放棄していた 

キャットタワーのてっぺんが

気に入ったらしい


縞ちゃんを捕獲してから

他の猫は姿を見せなくなった
 

猫の不妊・去勢手術に補助金が出るとは言え
「四匹かあ.. 」と、ため息だったが 
 

来ないなら... と ほっとする
 

 

こんなに野良猫がいるなんて 

 

みんな何処でどんなふうに

暮らしているのだろう


うち猫になった縞ちゃんはお利口だった
 

廊下の端に置いた屋根付きトイレと

おまるトイレ
 

屋根付きトイレにはうんたんをした 

臭~~い!
 

鼻が曲がりそうだった
 

野良猫だからいろいろな物を

食べていたのだろう
 

日が経つにつれ普通の臭いになった
 

 

おまるトイレにはおしっこをする
 

おしっこの後におしっこシートをたたむ
おしっこがシートから流れて少し迷惑
 

 

爪とぎはキャットタワーにする 

隣の箪笥にはしない
 

小さい体を踏ん張って、ガリガリガリと
パワフルな爪とぎだった
 

 

夕食前のお経の時は

家人が経を詠んでいる間中、
 

キャットタワーのてっぺんでずっと鳴いている
 

―――― あの美声で 
張り合ってる?

 

 

 

  [メインクーンと縞ちゃんの関係は分からない]  


縞ちゃんは猫付き合いが豊富だったらしく
 

(東隣の家の去勢済みのオス猫とは窓越しに
 よく遊んでいたとか)
 

メインクーンにしきりにアプローチする
 

“遊んで! 遊んで! おばさん‼”
 

ガラスに体をスリスリしたり、

飛び跳ねたり
 

メインクーンが移動すると

ガラス越しについてゆく
 

体を仰向けにして恭順の意を示す
 

猫との付き合いがほぼなかった

メインクーンは
 

どうすればいいのか、分からない(らしい)
 

唸ってみたり、背を向けてみたり
 

あまりうるさいと無視を決め込む


縞ちゃんは猫なので

当然のことながら夜行性だった
 

が、メインクーンは人間と一緒に

夜はしっかり寝る
 

そしてある時から縞ちゃんは

メインクーンに関心を示さなくなった
 

歳の差があり過ぎたのか...
 

 

メインクーンは少~し食欲が落ちている
 

運動能力が高く活発な縞ちゃんに

押されている



年が明けて1月19日 

縞ちゃんはさくら猫になった
 

耳のⅤ字カットは痛々しかったが
食欲は旺盛 元気でひと安心
 

動物病院に迎えに行った家人が言うには
 

ケージの隅で何としても動かないので


「さっ、お家に帰ろう、縞ちゃん!」

と言ったら
 

サ、サッ! ポン!と

キャリーバックに入ったとか
 

ホントかね?

 

 

 

   [縞ちゃん、再びそと猫になる]   


手術後10日分の抗生物質が出されていた
 

縞ちゃんは外の景色を見ている
 

縞ちゃんの体は徐々に回復してきている
 

縞ちゃんは身体能力が高く、若い
 

縞ちゃんの気持ちが痛いほど分かる
 

10日分の抗生物質の最後を与えてから
サッシを少し開けた
 

そして縞ちゃんは外に出た

狂喜乱舞だった


庭木を駆け上がり、駆け下り、飛び移り
ブロック塀の上を全力疾走する
 

沙羅双樹に登った時はバランスを崩し
前脚一本でぶら下がる 多分、爪三本で
 

思わず「縞っ‼」と、大きな声が出た
 

と、縞の様子を呆然と見ていた

メインクーンが
 

“ビクン!” と体を縮める
 

「違う、違う あなたじゃないよ 縞だよ」


薄暗くなってから 
 

“ただいま――――!” 

と大きな鳴き声がした
 

ご飯をガツガツと食べ、

 

キャットタワーのてっぺんで
“あ~ 疲れた もう寝る” 

 

と言って丸くなった


帰って来てくれた よかった
縞ちゃん、ここはあなたのお家だよ...


次の日、朝食を食べて出て行った
 

 

 

しばらくbed&breakfast+dinnerの

日が続き
 

後、外泊するようになった
 

 

朝、「ごはんだよ~ しまあ~」と

家人が呼ぶと
 

あの美声で鳴きながら走って来る
 

家人はそれが何とも言えず可愛いと言う
 

 

いつも東隣の家の方から来るので

東隣の人に聞いてみると
 

お兄ちゃんが物置に寝床を

作ってあげたそうだ
 

ま、これはこれでいいのかも
縞の選択は少し悔しいけれど 

 

よかったね、縞ちゃん

 

 

 

   [そと猫の縞ちゃんの暮らし]   


縞ちゃんは外で暮らし、自由を謳歌している
 

三食ご飯をねだりに来ることもあれば

来ない日もある
 

今日は姿を見せないな、と思いながら
庭仕事をしていると、

 

どこからともなく現れ
 

“ご苦労様~” と言う
 

距離をとるのは以前と同じ



縞ちゃんは縄張り意識が強いらしい
 

庭のあちらこちらにおしっこをする
 

引き抜いた雑草をまとめていたら
そこにもおしっこをした
 

縞ちゃんはクンクンと匂いを嗅いで
前脚でフミフミし雑草の上に乗る
 

後ろ脚を思い切り広げて

背中をヒョイと伸ばし体を大きくし、

顔を横向きに上げて用を足す
 

「???」
 

メインクーンは物陰のトイレで

大きな体を縮めて
顔は下向きで用を足す
 

トイレ中に行き合うと

恥ずかしそうにもう一段体を縮める
 

猫もいろいろだなあ...
 

大胆な縞ちゃんのトイレスタイルでした

 

 

 

そんなこんなで日は過ぎて

七月に入って間もなくのある日
 

縞ちゃんとそっくりな猫が現れた
 

いや、似ているけれど、

小さい縞よりもっと小さくて
 

ガリガリに瘦せ、毛もボサボサ 

見るからに野良猫
 

しかも尻尾が中程で折れ曲がっている


骨折しているのだろう 

痛かったろうなあ...
 

と思うのだが、

何とも貧相でみすぼらしい猫だった
 

縞ちゃんとその猫は仲良しらしい
 

追いかけっこをしたり、

じゃれ合ったりしている
 

 

兄弟か? 姉妹か? 

 

尻尾を上げてくれないので性別が分からない

 

しかし大きさからメスかと思う

 

 

 

 

 

野良猫の縞ちゃんとの出会いと別れ ➁

            [縞ちゃんとの別れ] に続く