主にベンチから登場してチームにエネルギーをもたらせる選手、試合の開始時にはベンチから控え、途中出場ながらもスターターと同様の活躍を見せ、チームの勝利に貢献する選手、それがシックスマンです。強豪チームには必ずと言っていいほど、優秀なシックスマンが在籍。得点だけでなく、アシストや守備などに特化したシックスマンも存在しており、多用な魅力を見せてくれます。NBAでは毎シーズン、「Sixth Man of the Year」が贈られ、ベンチからの貢献をたたえます。今回はそんな魅力的な選手を4人紹介したいと思います。

 

 

 

マヌ・ジノビリ/Manu Ginobili

198cm/92kg
2007-08シーズンに受賞/スパーズ
19.5pts、4.8trb、4.5ast、1.5stl、3P40%(2.1本成功)

 

NBAのシックスマンと聞いて最初にジノビリの姿が思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。スパーズにて16年間所属し総出場試合数は1057試合、その67%は主にベンチからの出場でした。そうでありながら、殿堂入りまで果たしてしまう事実が、ジノビリがシックスマンとしてオールスター級のレベルを保持していた証拠でもあります。このシーズンも上記の通りオールスターに出場しても違和感のないスタッツを残し、スパーズの56勝に貢献しました。

 

このシーズン、ジノビリは「スパーズで最も人気の選手かもしれない。しかし、NBAでは最も嫌われている選手かもしれない」と報道されました。これはそのまま聞くと悪口のようにも聞こえますが、実際にはジノビリが相手チームから脅威に感じられているという内容です。アウェイの試合でジノビリに対して猛烈な大ブーイングが起こっていると述べられています。彼の勝利のため、チームのためならば何でもやってやろうという姿勢が敵チームに恐れられている証拠なのでしょう。2005年のプレーオフでは対戦相手のジョージ・カール監督がジノビリにイラつきながらも、賞賛したことがその結果に現れているように思えます。

 

 

 

 

ボビー・ジョーンズ/Bobby Jones

206cm/95kg
1982-83シーズンに受賞/シクサーズ
9.0pts、4.6trb、1.9ast、1.1stl、1.2blk

 

シックスマン賞は1983年から始まりました。そして、ボビー・ジョーンズこそが、初代シックスマンなのです。ニックネームは"The Secretary of Defense(国防長官)"。その名に相応しい11度のAll-Defensive-Teamに選出され、このシーズンも1st-Team入り。ベンチから出場してディフェンスで流れを変えるタイプの選手でした。ジョーンズのディフェンスはラフプレーに頼らず、監督がラフプレーを指示しても断固として断るなど汚いことはしないのが信条。そのスタイルは選手間でも賞賛されていたといいます。

 

このシーズンのプレーについて多くの評価を得ており、敵チームであるセルティックスのGM、レッド・アワーバックは「彼のやっていることの多くは、ファンには理解しにくいし、評価もされにくい。彼の貢献は必ずしもスタッツに表れるものでは測れない。ボビーがコートで存在感を示すだけで、十分に勝てる」と絶賛しています。ジョーンズはプロ入りして5年間は不動のスターターであり、シクサーズ運営人はジョーンズにどうやって、シックスマンの役割を受け入れてもらえるだろうと悩んでいたそうです。しかし、ジョーンズは30秒ほど悩んだのちに了解したそうです。ジョーンズは「どうせ精神的なものがほとんどだから、ベンチから出ることに慣れるのは2、3試合しかかからなかった。流れを分析するチャンスになるし、出場したときに何が一番必要なのかがわかる。得点をたくさん取らなくても、チームを勝たせる方法は他にもある」と語っています。ん~これぞ理想のシックスマン!

 

 

 

 

トニー・クーコッチ/Toni Kukoc

208cm/87kg
1995-96シーズンに受賞/ブルズ
13.1pts、4.0trb、3.5ast、FG49%、3P40%(1.1本成功)

 

クロアチア出身のオールラウンダーな選手。ブルズの後期3連覇のいずれもシックスマンとして活躍しました。複数のポジションをこなせる柔軟さと、視野の広さを併せ持ちます。国際大会での実績も豊富で2017年には殿堂入りも果たしました。

 

このシーズン、シックスマン賞を受賞したクーコッチは喜びと共に本音を語っています。「自分の役割を認めるつもりはない。フィル・ジャクソンが僕に望んでいることは、すべてやるつもりだ。だから、自分のプレーを向上させれば、(受賞したことによって)いつかはスターターになれると信じる理由ができたんだ」。ジョーダン、ピッペン、ロッドマンがいた時に全盛期を過ごしたクーコッチからすると、やはりNBAの大舞台でスターターとしての役割を果たしたかったというのが本音だったのでしょう。しかし、ブルズの優勝に大きく貢献したことには変わりありません。

 

 

 

 

ボビー・ジャクソン/Bobby Jackson

185cm/83kg
2002-03シーズンに受賞/キングス
15.2pts、3.7trb、3.1ast、FG46%、3P38%(1.5本成功)

 

ドラフトで加入したナゲッツ、ウルブスを経て、キングスでシックスマンとして活躍し評価を得たコンボガードです。クリス・ウェバー率いる強豪時代のキングスで一貫してシックスマンとして活躍し続けました。この時代のキングスは控えメンバーだけでも勝てると言われるほどに強力で、ジャクソンはその中心選手でした。

 

このシーズン、ジャクソンはマイク・ビビーの控えとしてプレー。両者の強みはそれぞれに違い、その違いが相手チームを混乱することができると当時、控えセンターだったスコット・ポラードが語っています。「マイクがいるとき、僕たちはフロアの正しいポジションにいることが多いんだ。ボビーがいるときは、僕らはニワトリのように走り回っているんだ。マイクはファーストチームを率いるのに最適な男だし、ボビーは鶏たちを率いるのに最適な男だ」。ジャクソンは30歳を迎えビビーより6歳年上なのですが、二人の関係は良好だったようで一緒に最寄りのショッピングモールにCDを買いに行くこともあったといいます。ジャクソンはディフェンスでも粘り強さを見せる選手ですが、シュート力もこのシーズンに向上したとコーチ陣は評価しています。「ボビーは努力しています。去年の夏、キングスの練習施設に毎日、一人で出かけてはシュートを打っていました。昨年の夏、彼はキングスの練習施設に毎日、一人で出かけていたんです」

 

 

 

 

最後に惜しくも、シックスマン賞を受賞できなかった選手を1名紹介したいと思います。

 

 

 

ダン・マーリー/Dan Majerle

198cm/97kg
1990-91シーズン/サンズ
13.6pts、5.4trb、2.8ast、FG48%

 

1994年の世界選手権にてドリームチームⅡのメンバーの一員として金メダルを取得したフォワードです。全盛期には入ると止まらないスリーポイントを放ち、サンズのプレーオフファイナル出場に貢献しました。このシーズンは3年目の時で、翌年にはオールスターに出場します。このシーズンのシックスマン賞はデトレフ・シュレンプが受賞しましたが、わずか1票差!と非常に接戦でした。