塗料には、鉄を錆びさせないようにするためには、ある一定の厚みで塗る必要がある。
この点に眼をつけ、スプレーで塗装している最中に、ある一定の厚みになると、色が変わる塗料が開発された。
以下は、この塗料が、ある大きな海洋構造物を建造するプロジェクトに採用されたときの話である。
その物件の発注者は、北欧の会社だった。建造するのは日本の造船所。
その塗料は、ある一定の厚みになると、「青さの変化」が見える。
塗装後、発注者の現場監督は、あちこちに、やり直し箇所をチェックした。
現場監督は、10人弱のメンバーだったが、北欧の人達ばかりで構成されていた。
彼らは、青色の変化をとらえ、厚すぎるところや、薄すぎるところをチェックしたという。
しかし、日本人にはその変化が分らない。
何人も寄ってたかって見るのだが、判別がつかないのである。
色々調べた結果、黒い瞳を持つ東洋人には、青色の識別限界があるという。
そこで、造船所は、塗料メーカーに依頼して、識別色を「赤色」に変更した。
今度は、日本人には、その変化が良くわかるが、北欧人の監督達には識別できなかった。
どうやら、青い瞳をもつ北欧人には、赤色の識別限界があるようだった。
ということは、我々が当たり前だと思っている、景色も人種によって違って見えているということなのだろう。
日本の紅葉の素晴らしい景色も、北欧の人々には感動が半減して見えている可能性もある。
もっと言うと、それは個人個人のレベルでも異なっており、色はこういうものだという、当たり前と思う感覚自体が、当たり前でないということが真実なのかもしれない。