【第3519回】




一本道の科学では新すなわち正ということが、

ある程度において言われるかもしれませんが、

発展の道が入り組んでいろいろ分かれる以上は

また分かれ得る以上は西洋人の新が

必ずしも日本人に正しいとは申しようがない。



(p.139「社会と自分 漱石自選講演集」

 夏目漱石 筑摩書房 1913年初刊行) 




「一本道の科学」という言い方は


つまり物的な積み重ね、

数の積み重ねで進歩する


そういう性質を

指しているでしょう。


ただし、発展という

ある方向性を見出す場合


歴史の前提から

逃れることはできませんし、


その前提を無視する

ということは「模倣」によって

無理やり方向付けるので


そこでも歴史の前提が

まったく紛れ込まない

わけにいきません。





ネットニュースで


「元財務官僚でエコノミスト」

の髙橋洋一さんの

意見を見かけました。


そこでは、世界的IT企業が

日本で育たない理由として


同調圧力によって芽を摘まれる


という髙橋さんの意見が

述べられていたのです。


例えば、


「ホリエモンがフジテレビを

買収していたら

アマゾンプライムみたいに

なったかもしれない」


という言い方をされており、

そこに僕は違和感がありました。


もちろん、

「フジテレビが素晴らしい」


なんて言うつもりも

ありませんが


なぜ、アマゾンプライムが

善として語られるかというと


経済支配がなされるからです。


現に、アマゾンはある領域で

支配しています。


しかしそれば、IT企業よろしく

多くの雇用をする

産業ではありませんし、


(絶対数が多いとしても

生産や工業では桁が違います)


にもかかわらず、資本は

同等かそれ以上を

集めるわけなので


格差の温床、富裕層にとって

テコがかかって

金が集まる仕組み


としか言えないのです。


「サービスが最高だから

それでかまわない」


という意見もごもっともですが


では、そのサービスが

無かったら、


我々の人生は

味気ないことにしか

時間をつかえないものなのか


よくよく考える必要があります。


言い換えれば、

過去の人びとの暮らしは

つまらないものだったと


言いきれるかどうか

ということです。


アメリカの発展は善と

言い切る前に


そして経済支配が善と

言い切る前に


考えるべきことはあるし、


そこには歴史という前提が

深くかかわっています。





時代のドグマは

支配者層から発せられます。


間違っても、大手メディアで

叩かれているような

価値観ではありません。


プロパガンダは、気づかれず、

肯定されるからこそ


プロパガンダなのです。


個人的な意見として

ご参考まで。