【第3507回】




野球選手のイチローさんが


「自己肯定感という

言葉が気持ち悪い」


と語っている動画を

見かけました。


その意図は、


「肯定しても成長しないし、

人間として厚みが増さない」


ということだったと思いますが

この話自体、非常に微妙で、


言い回しひとつで

別の意味になるものとして


自己啓発の落とし穴を

よく表していると感じます。


名著である

「人を動かす」の翻訳では


「自己重要感」

と表現されていますが


ある意味、

ここで用いられた意図は

人を動かすためのものであって


「お前は重要だよ」

というメッセージによって


自己肯定感のない人を

引き寄せるものなのです。





本当に、自己重要感、

あるいは自己肯定感のある人は


まず、この言葉に反応しません。


他人からの評価にも

客観的な意見として見るものの


喜ぶことはありません。


知識として得るものは

確かにありますが


自己肯定感を意識すればするほど


肯定感は、他者からの評価に

依存するがゆえに

無くなっていくのです。





別の角度で言うならば


肯定感があればこそ、

自己否定することを恐れません。


恐れず、悩まず、

自己に対する解決を

考えることができます。


肯定感があればこそ

孤独も恐れません。


肯定しなければならない自己


それが人生を阻害します。


なぜそうなるかというと、


幼児期の愛情体験の欠落が

その原因です。


親から真の意味で


寛容に抱擁され、

安心して、自由な気持ちで


評価も気にせず生活できたか、

それが可能であったか


ということが

バロメーターになります。





自己肯定感に関わらず


上記の態度をもった

別の人もいるので注意が必要です。


それがサイコパスであり、


自己肯定感の態度を

他者からの評価のために実践する

神経症の人になります。


愛情体験をもとにした人なら


他者、とりわけ身内に対して

真に寛容な態度が取れますが


間違った自己肯定感の人は


身内を傷つけるし、

身内に裏切られます。





後天的に肯定感を

獲得するために必要なことは


自分が自分であることを


他の誰でもない、

「自分」が認めるようにする

ことにあります。


そのためには、

本当の自分がどんなものかを

学問して発見するしかありません。


その大きな手掛かりが

「夢」の存在であって


フロイトやユングが示した

分析が役に立つのです。


ご参考まで。