【第3483回】



冬を暖かいと思い、小便を出ないように

しようと努力するのと同様である。

(中略)

大人が小児を扱うときに、その小児の心にならないで、

自分の心をもって

これに当てはめようとするのもこれと同様である。

(中略)

多くの人は不思議なことをかえって不思議と思っていない。



(p.178「神経衰弱と強迫観念の根治法」

 森田正馬 白揚社 原書1926年)



引用は「思想の矛盾」、

ということを説明するのに

述べられたものです。


うつでも強迫症でも良いですが、


健康な人が患者に

アドバイスするときに


「考えすぎるな」


という言い方をするもので

引用のような意味でしかない

と言います。


「偉い人になりたいが

勉強は苦痛でやりたくない」、


そういう主観と客観の

矛盾もその中に含まれていて、


それを無理に

実行しようとすれば


精神に影響が及ぶ結果と

なるわけです。





生の欲求があるほど

死の恐怖は強まり、


生の欲求が弱いほど

死の恐怖はなくなりますが、


それは自分の生に対する

相対的な感じ方でしかなく、


死の恐怖だけを

取り除こうとしても


生に対する態度まで

変えてしまいます。


つまり、


生と死に対する態度を

問題にするから


恐怖や欲望といった


精神的な問題を

解決できないのです。


問題は生や死にあるのではなく、


夢中になれるものが無い

ということに起因しており、


例えば、


ギャンブル依存症を治したい

と考えているうちは

決して治るものではなく


ただただ、薬物療法や

認知行動療法のような


我慢する方策だけに

終始してしまいます。


それでは依存症という意識から


いつまでも離れられません。




夢中という状態を

別の言い方で言うなら


いちいち意識しないでも

やれるほどに


目的に集中している

ということです。


たとえば、水を飲む時


コップを手に取って

蛇口回して、

うまく水を入れて、

口に注ぎ込んで、

飲み込む、


なんて考えるまでも

ありませんが


目的に自分がきちんと

向き合って対応しているから


実行できる


と言うことができます。


車や自転車の運転だって

同じことです。


目的があって

そこに注視すればこそ


全体のバランスが調和され、

実行が可能になります。





現代のビジネスは

顧客の依存を目的としています。


その方がはるかに

儲かるからです。


依存をさせるためには、まず

行動に対する矛盾をつくり出して


振り子のように

右へ左へ動かし続けるもので


つまりは、思想の矛盾を

誘引することになります。


「いいね」をもらうほど

他者の評価が気になって


ますます「いいね」に対する

飢餓感が増すようなものです。


終わりがありません。


富豪の飽くなき金儲けも

同じ構造と言えます。


こうして精神疾患、

強迫症がなされるのです。


ご参考まで。