【第3404回】





カントはある著作中に

「気違いは、目を覚ましたままで

夢を見ている人間である」といい、


クラウスは「狂気は感覚が目覚めたままの

状態内での夢である」といい




(p.118「夢判断(上)」

 フロイト 新潮文庫 原著1900年)



引用は字のとおり

フロイトが紹介したものです。


これは、僕も学問する中で


「ひょっとしたら

そうではないか」


と疑っていたことでもあります。


夢とは無意識の世界であり、


目が覚めているときは

脳の機能によって

現実へと意識が統合され


潜在化しているからです。


例えば、ジョンレノンの

覚せい剤の体験談を聞くと


たしかに、目が覚めたまま

夢を見ているような状態に

陥ったことを述べていますし、


あるいは統合失調症の人と

接したときには


ある夢のイメージが

現実に入り込んで

記憶を改ざんしているような


そういう言い方に聞こえます。


つまり、リアルタイムで

見た夢が、現実の体験として

記憶されることで


幻視したことすら

気づかないのです。


だから、おそらく

彼等の体験には


わずかに無意識を見る分の


タイムラグがあるだろう


と思います。


脳機能という観点であれば


統合失調症が遺伝と関係する

という研究も理解できるし、


機能的な脆弱性に対し、

過度なストレスによって

発現する病気だと思えば


やはり、無意識とも

切り離せない問題でしょう。





先に述べた通り、

脳の機能は


現実に意識を向けるために

記憶やイメージを統合する

役割があるわけで、


それを覚せい剤で

無理やり夢を表すなら


脳の機能障害を起こしても

全くおかしくありません。


芸術家にとっては


自分の無意識を鮮明に見て

記憶することで


表現に対して情熱すら

もたらしますし、


シャーマンのような

神的イメージを得ようとするなら


マリファナなどのような

薬物が奏功するのは

よく分かります。


だからこそ、ビートルズ時代の

ジョンレノンの傑作は


音楽でありながら

コラージュの絵画のような

有様だったわけです。


芸術系の学校で、


スチュアート・サトクリフ

という夭折した前衛絵画の天才と

友人だったジョンにとって


そのイメージはもともと

あったのでしょうけど。


そりゃ、ミュージシャンとして

追随しようとしても


その表現に勝てる

わけがありません。


ゴッホにしても


その雷のように現出する

精神の病があればこそ


心象風景として

原始的な表現が可能に

なったとも言えます。





意識と脳の役割は


夢とその関連から

見てとれるものであって


占いとか予言のような

範疇では語れません。


ご参考まで。