【第2758回】



休暇が増えるほど、追加的な日数のありがたみが薄れ、

休暇が一日増えても、その価値は前より小さくなる。


同様に、所得が増えるほど、追加的な所得のありがたみは薄れる。

したがって、休暇を一日増やすために、

より多くの所得を引き換えにしてよいと考える。



(p.110「ファスト&スロー〔下〕」

 ダニエル・カーネマン 早川書房)




豊かになるほど成長が止まる


ということの

理由にもなるでしょう。


だからこそ、大きな格差を

強制労働の装置として


資本家層が狙うことになります。


あまりに所得を与えても

一生懸命には働かないし、


休むために所得を減らしても

困らない人が増えると


企業としては人材を得るのに

苦労するのです。


そういう意味で、


労働者を低所得に抑えて、

内部留保を拡大することは


人材確保や不景気対策として


有効な手段だと捉えても

不思議ではありません。





高度経済成長時に


一億総中流でも日本人が

一生懸命働いたのは


車や住居のローンを

組まされたからです。


いくら高所得でも

それを上回るローンを組めば


生活に不安が出るので

一生懸命に働きます。


それは現在でもしっかり


労働を強制させるために

機能している価値観で、


もし、そのようなことを

狙わなければ


とっくに豊かで

文化的な暮らしをできるほど


衣食住の能力を

人類は持っているのです。





しかし近ごろでは

能力主義で人間を測るが故、


結婚のハードルが高まり、

結婚できない男女が増えました。


こうなると、


子どもの養育、学費、

マイホームローン、

高級ミニバンなどの


家庭持ちならではの

必要所得が不要になるため、


単身世帯で満足する

人間が同時に増えるのです。


言い換えれば、低所得でも

豊かに暮らせるが故、


働く動機の薄い人材が

増加することになります。


その解決策としては


もちろん、さらなる

極端な格差をぶち込む

ことになるでしょう。


派遣労働の分野の拡大は

その良い例です。


それが就職氷河期に現実化し、

一気に社会に浸透しました。


こうして、働いても

ようやく暮らせるだけで、


結婚がさらに遠ざかる

結果となったのです。





成長に対して、

文明や技術に対して、


強迫的な社会にあっては


決して止まることが

できません。


その強迫が、格差を必要とし、


人間の強制労働を

必要しています。


引用の様な人間の

普遍的な心理でさえ、


成長の妨げになるとして

悪意で捉えるのです。


そういう意味で、


プーチンや、ルペンや、

トランプなどの


反グローバリゼーションの

動きに対して


メディアのベクトルは

あくまで悪意に報じています。


戦争の在り方にしても


情報戦と捉えるなら

メディアの誘導で

理解すべきではありません。


文明社会の権威は嘘をつかない

と信じるのは


大人としてあまりに

ナイーブ過ぎるでしょう。





極端な格差は

グローバル経済において

拡大しているのは明白で


それが人間の生きる道を

狭めています。


こうした一面を

公平に知るべきです。


ご参考まで。