コメの価格を上げるために供給面の対策(入り口対策)として巨額の税金をつぎ込んで主食用米減らしを行い、5年産では72万tものコメを餌用に振り向け、政府備蓄米として20万tを買い上げた。さらにあれほど行わないと言っていたにも関わらず、いつの間にか過剰米対策(出口対策)も行うようになった。周年安定供給対策の名のもとに余ったコメを国が保管料を出して市中に出回らないよう隔離するということも行っており、本来なら今年10月までに出回るべき5年産が11月以降に持ち越されるようになり、その分需給ひっ迫に拍車をかけている。この結果、目論見通り以上にコメの価格が上がった。
しかし、この値上がりの代償は大きく、確実に重い病状を発症することになる。病状の一つはコメ加工食品業界の原料米不足による苦境である。
伝統的な米菓、味噌、穀粉、清酒、焼酎などのコメ加工食品業界は、伝統的であるが故、中小業者が多く、資本力が乏しいこともあって高騰する原料米を購入することが出来ず、製造を断念するところも出始めた。これら業界が使用する原料米は価格の安い特定米穀が多く、5年産米はその発生が少なかったという面もあるが、それに拍車をかけたのがコメの全体需給がタイト化したことによって本来加工原料に使用されるべき品位のコメが主食用米に吸収されたことも大きい。
さらに主食用米の価格が大幅に値上がりしたことによって、産地では6年産米で加工用米の生産を止めて主食用に振り向けるという動きが出始めた。生産者にとっては少しでも手取りの良い用途に生産をシフトするというのは当たり前の経営判断である。実需者が加工用米の契約を望むのであれば主食用米の手取りと同じ程度になるように加工用米の価格を値上げしてもらわなくてはならず、実際にそうした動きになっている。需要者側からすれば需要に応じた生産がなされず、需給のミスマッチは益々拡大しているとしか言いようがない。
これらコメ加工食品業界は国の施策に沿って輸出に力を入れ、順調に輸出量を増やしてきたが、原料米の価格が上がると商品の輸出価格を値上げせざるを得ず、国際的な競争力が低下する。典型的なものがパックご飯で、この商品は最も輸出拡大が期待されている商品で、新たに輸出専用の製造ラインを作ったメーカーもある。しかし、そのメーカーでさえ、原料米の高騰に強い懸念を持っている。それは、パックご飯は韓国等でも製造しており、現状でも価格競争で不利な状況にあり、原料米高によりさらに競争力が低下する。国内の食品産業の競争力を高めるような施策を講じなければならないが、まったく逆の施策が推進されている。
政治家と行政と商社がお米で金儲け