世見
2023年11月18日(土曜日)

恋  

水仙の別名はキンセンカ。冷たい風がよく似合うお花です。
野山で美しく咲き始めるのが今頃です。
この花は寒さに強く、雪の中でも咲くことから「雪中花」とも呼ばれています。
今日から21日頃まで、五十七候では「キンセンカ香シ」と言われています。
このお花は中心の花弁が黄色いことから、「黄金の杯」とも言われていて、目にとまると心を奪われる不思議なお花です。
風流に花瓶に一輪、水仙を生けてみたくなります。
秋はやはり風流が似合います。
「風流とは 俗っぽくなく趣があること」
現代人はどうも風流を忘れかけている気がいたします。
私ね、今頃の季節になると、「百人一首」の世界に浸りたくなります。
百人一首には、恋のうた、季節のうた、旅のうたと、人間本来の姿が見えて来ます。
「五 七 五 七 七」の形式の中に思いを込めていました。
恋をした日のことを思い出させてくれるのが、
「逢ひ見ての 後(にち)の心にくらぶれば 昔はものを思はざりけり」
恋多き敦忠はどなたのことを想い、この和歌を残したのやら。
「あなたと出逢い契りを結んだ後のこの切ない気持ちに比べれば、お逢いする前の恋煩いなどたいしたことではありません」
あの時代、男女が結ばれた翌朝、男の人は自宅に戻るのですが、帰ると直ぐに彼女の元にラブレターを贈るのがマナーでした。
今ならメールなのかもしれませんが、あの時代ですよ、このラブレターをどのような方法で彼女の元に届けられたのやら‥‥。38歳の若さでこの世を去った藤原敦忠。
あの頃の恋心も現代も、人の世でのこと、同じだと私は思います。
秋の夜はスマホに戯れるより、ご自分の恋心と戯れてみられては如何ですか。
「恋」とは本当に不思議です。
恋心だけは幾つになっても忘れたくはありません。
恋ですよ、
恋ですよ!