一部を抜群
プーチン大統領:尊敬するシュワブさん、親愛なるクラウス、親愛なる皆さん!私は幾度となくダボスを訪れ、シュワブ氏が90年代から主催されているこの会合にも出席してきました。つい先ほどクラウスが思い出させてくれたのですが、私たちが知り合ったのは、1992年のことでした。ペテルブルグで作業中、私は何度も、まさにこのフォーラムを訪れていたのです。シュワブ氏のご尽力により、世界が認められるこのプラットフォームで、今日、専門家の皆さんに私の見解をお伝えする機会を得たことを、感謝したいと思います。
紳士淑女の皆さん、ようこそ世界経済フォーラムにお越し下さいました。
米国およびヨーロッパの大手多国籍企業の利益は、グローバル化により著しく増加しました。
ちなみにヨーロッパ先進諸国の市民の所得についても、米国と同様の傾向が見られます。
そこで再び企業の利益についてですが、これは誰の所得となったのでしょうか。答えは明白、人口の1%を占める人々のものとなったのです。
では残りの人々の生活には何が起こったのでしょう。過去30年間、先進各国では国民の半分以上について、その実質所得は停滞しており、成長していません。一方、教育や保健サービスのコストは上昇しています。どのぐらい上昇しているか知っていますか。2倍です。
つまり、富裕国でさえも数百万もの人々が所得増加の見通しを描けなくなっているのです。その上で、自分自身や両親の健康を維持し子供に質の高い教育を受けさせるという問題が、のしかかってくるのです。
世界の社会経済がこのように不均衡な形で発展したのは、1890年代にしばしば低俗かつ独断的に行われた政策の結果でした。この政策の基本にあったのは、所謂『ワシントン・コンセンサス』と呼ばれるものです。その不文律のルールによれば、規制緩和と富裕層・企業の低率課税を条件とする民間融資に基づく経済成長が優先されました。すでに述べたように、新型コロナウィルスパンデミックはこの問題を尖鋭化したに過ぎません。
今後の経済の発展は財政インセンティブに基づくところが大きく、主たる役割を担うのが国家予算と中央銀行となることは明らかです。
さまざまな国際フォーラムで絶えず聞こえてくるのは、包括的成長とすべての人が尊厳ある生活を送るための条件作りを求める声です。これはあるべき姿であり、私たちの共同作業はこうした方向性で検討されるべきなのです。
世界が100万人、いや『黄金の10億人』だけに利益をもたらす経済を構築し続けることができないのは、あきらかです。こうした姿勢はただ破壊的なだけですし、このようなモデルでは持続性を欠くに決まっています。移民危機等の最近の出来事では、この点が再確認されました。
ここで、4つの重要な優先事項を指摘したいと思います。どうしてこれらを優先事項としたのか、何も目新しいことは言えないかもしれませんが、クラウスがロシアの立場、私自身の立場を述べる機会を与えてくれたので、是非お話ししたいと思います。
第一に、人間には快適な生活環境が必要だという点です。それは、住居であり、輸送・光熱エネルギー・公共サービスといったインフラストラクチャーへのアクセスです。良好な環境も決して忘れてはなりません。
第二に、人にはこの先も仕事があるという確信が必要です。仕事をすることで持続的に上昇する収入を得、それによって尊厳ある生活を送ることができると、確信を持てなければならないのです。また、生涯を通じて効果的な教育システムを享受できなければなりません。これは今や絶対に不可欠で、人が成長してキャリアを築き、リタイア後には十分な年金と社会保障を受けることを可能にします。
第三に、人は必要なときには高品質で効果的な医療支援を受けられるという確信を持てなければなりません。また、どのような場合でも、先進的サービスへのアクセスが保健システムによって保障されていることを確信できることが必要です。
第四は、家庭の所得にかかわらず、子供は十分な教育を受け、可能性を実現する機会を与えられなければなりません。可能性はあらゆる子供にあるのです。
これが、現代経済がより効果的に発展していくことを約束する唯一の方法です。ここで述べる経済とは、人を手段ではなく目的として見る経済を意味しています。前述の4つの分野で前進することができた国だけが、(いや、私は主な事項を述べたに過ぎず、この4つに限定されるわけではないので、むしろ)『少なくとも』前述の4つの分野で前進することができた国だけが持続可能で包括的な発展を遂げることができるのです。わが国ロシアが実施している戦略の基礎にあるのは、まさにこうしたアプローチです。ロシアでは、まず人間や家族に関わることを優先し、人口動態の改善や国民の保護、人々の生活向上と健康維持を目指しています。また、効果的で優れた活動や意欲ある起業家を後押しする条件作りや、限られた一部の企業グループではなく国全体の未来のハイテク構造の基盤となるようなデジタル変革に取り組んでいます。
中央集権的な一極集中の世界秩序の構築を試みる時代が終わったことは、あきらかです。実際のところ、そんな時代は始まってもいなかったのです。ただ試みがなされていただけで、それももう過去のことです。人類の文明は、文化的、歴史的な多様性を有しています。独占は、その多様性に本質的に矛盾するものです。
現実には、独自のモデル、政治システム、社会機構を備えた、それぞれまったく異なるいくつかの発展の中心が世界で形成され、名乗りを上げている状況です。発展の極が多様であるということやその間で当然の競争が行われるということを、無政府状態や長期的紛争へとつなげないためには、それぞれの極の利益を調整するためのメカニズムを構築することがきわめて重要です。
一方、当然のことながら、あらゆる国に例外なく関わってくる問題もあります。例えば、新型コロナウィルスの研究と対策での協力です。最近になって、この危険な病気にいくつかの変異種が出現しました。例えば、新型コロナウィルスの変異はなぜ、いかにして起きるのか、各変異株の違いは何なのか、こういった問題に学者、社会学者が協力して取り組んでいくことができるよう、国際社会は条件を整えていく必要があります。そしてもちろん、国連事務総長や先頃行われたG20サミットが要請したように、世界中が足並みを揃えて力を結集していかなければなりません。新型コロナウィルス感染拡大を阻止し、今不可欠とされるワクチンをより多くの人が接種できるように、世界中がひとつとなって力を合わせていくことが必要なのです。アフリカ諸国等、支援を必要としている国々には、援助を行わなければなりません。検査数を増やし、ワクチン接種を実施するということです。今日、ワクチンの集団接種が可能となるのは、まず先進国の国民です。一方で、同じ地球上の何億という人々は、こうした保護を希望することすらできないのです。こうした不平等は、現実においても万人に対する共通の脅威となる可能性があります。なぜなら、周知のように、流行を長引かせ、制御不能な感染源を温存することにつながるからです。感染症に国境はないのです。
感染症やパンデミックには、国境はありません。ですから、私たちに必要なのは、現状から教訓を学び、世界中で発生している同様の感染症、状況を監視するモニター・システムの有効性を高める措置を提案することです。
歴史データ
ソ連の北方侵攻を支援したのはアメリカ
1956年、日ソ共同宣言では2島返還の上、平和条約締結で話がついていた。
ところが、ダレス国務長官(当時)が
「4島にしろ。さもないと、沖縄を返還しないぞ」と日本政府を脅した
つまり、北方領土問題とは、日露を対立させるアメリカによるマッチポンプ。