ポンペオ演説の気になる中身
この日のポンペオ演説は非常に長いものだったので、以下、箇条書きにして、主な発言を紹介する。
・このスピーチは明快な目的、真の任務を持っている。それは米中関係の異なる側面――この何十年もなおざりにされてきた膨れ上がる不均衡と、中国共産党の覇権への指針を説明することだ。
・われわれの目標は、アメリカにとっての脅威をはっきりさせることだ。それはトランプ大統領の対中政策がはっきりさせている確立された自由を守る戦略だ。
・われわれは、中国への関与が共生と協力の明るい未来になると想像していた。だが今日、われわれはいまだにマスクを付け、パンデミックが広がっていく人数を数えている。それは中国共産党の世界への約束の失敗によるものだ。
・われわれは毎朝、香港と新疆ウイグルの新たな抑圧についての見出しを読んでいる。
・われわれは中国軍がますます強大になり、ますます確かな脅威となる様を見ている。
・対中関与政策から50年を経て、アメリカ人が目にさせられているものは何か? アメリカの歴代政権が目指した中国の自由と民主への進化が実現しているか?
・もしもわれわれが自由な21世紀を望むなら、そして習近平が夢見る中国の世紀にならないことを望むなら、やみくもな対中関与という旧いパラダイムは何もなさないだろう。
・(対中関与政策を決めた)ニクソン大統領は中国にとっての、また激しい冷戦時代の優等生だった。そしてわれわれ皆がそうであると思われるように、中国国民にとっての崇拝者にもなった。
・ニクソンは1967年、『フォーリン・アフェアーズ』にこう寄稿した。「長期的視野に立てば、中国を永遠に仲間の国々から引き離しておくわけにはいかない。中国が変わっていくまで、世界は平和ではいられない。そのためわれわれの目的は、ある程度、状況に影響を与えねばならない。目標は変化を導くことだ」。こうして北京への歴史的外遊を伴ってニクソンは関与戦略を始めた。
・だが中国人に拳(こぶし)を振り下げてみたら、われわれが目にしたのは中国共産党がわれわれの自由で開かれた社会を悪用したことだった。中国はアメリカの記者会見、研究所、高校や大学、果てはPTAの会合にまでプロパガンダを送り込んだのだ。
・われわれは台湾という友人を阻害したが、後に活発な民主主義の花を咲かせた。一方の中国共産党とその政権には最恵国待遇を与えたが、そこで目にしたのは、西側の企業に中国への入場券を与える代わりに、中国共産党の人権侵害に沈黙を強いることだった。
・中国はわれわれの貴重な知的財産と企業秘密を取りはがし、それはアメリカ全土の何百万人もの雇用に影響を与えた。そしてアメリカからサプライチェーンを引き抜き、奴隷労働によって作られた製品を加えた。
・ニクソン大統領はかつて、世界を中国共産党に明け渡した時、フランケンシュタインを作ってしまったかもしれないと恐れた。だがいま存在しているのが、まさにそれだ。
・北京は「平和的台頭」と言っていた。だが理由はどうあれ、何であれ、中国はいまや、自国では権威主義を強め、国外では至る所で敵意を剥き出しにしている。
・数週間前(6月17日)、楊潔篪(中国外交トップの中央政治局委員)に再会するためホノルルへ旅したが、旧い同じ話だった。多弁だったが、文字通り態度を変えようという申し出は何もなかった。
・中国共産党の体制はマルクス・レーニン主義の体制であり、習近平総書記は破綻した全体主義思想の信奉者であるということに、われわれは心を留め置かねばならない。
・このイデオロギーこそが、中国共産主義のグローバルな覇権という習近平総書記が何十年にもわたって望んできたことを知らしめるものだ。
・共産中国を本当に変化させるには、中国のリーダーが語ることをもとにするのではなく、どう振る舞うかをもとにして行動することだ。
・レーガン大統領は、「信頼と検証」に基づいてソビエト連邦に対処すると言った。それで言うなら中国共産党に対しては、「不信と検証」によらねばならない。
・自由を愛する国々は、かつてニクソン大統領が望んだように、中国で変化を起こさせるようにしていかねばならない。
・われわれは、アメリカ国民とそのパートナー国が、中国共産党をどう認識するかということを変えることから始めねばならない。
・真実を話さねばならない。中国という化身を、他国のように普通の国として扱うことはできないのだ。
・中国との貿易は、普通の法に則った国との貿易と同じではない。
・同様に、中国共産党がバックにいる会社とのビジネスは、例えばカナダの会社などとは同じではない。
・われわれはまた、われわれの企業が中国に投資したら、知ってか知らずか中国共産党の重大な人権侵害に加担するかもしれないことを分かっている。
・あまりに多くの中国人学生やビジネスマンが、ここへ来て知的財産を盗み、自国に持ち帰っている。
・人民解放軍もまた、通常の軍隊ではないことをわれわれは知っている。その目的は中国共産党のエリートの絶対的な支配を維持し、中華帝国を拡大することであって、中国国民を守ることではない。
・われわれは2週間前、南シナ海で国際法に敬意を示すことに関して、8年ぶりに方針を転換した(中立の立場から中国非難に変えた)。
・われわれはまた、中国共産党とは完全に異なり、ダイナミックで自由を愛する中国人に関わり、力を与えていかねばならない。
・私が陸軍時代に学んだことが一つあるとすれば、それは共産主義者というのは、ほぼいつでもウソをつくということだ。最大のウソは、彼らが監視し、抑圧し、ほとんど声も上げられなくしている14億の民のために話していると考えていることだ。
・事実は全く逆で、中国共産党は、中国人が正直に意見を言うことを、どんな敵にも増して恐れているのだ。
・もしも武漢の医師たち(故・李文亮医師ら)に、新種のウイルスが流行するという警鐘を鳴らすのを許可し、それらの声に耳を傾けていたなら、中国国内の人々は言うに及ばず、世界はどれほどよくなっていたかを考えてみてほしい。
・何十年にもわたって歴代のリーダーたちはこうしたことを無視してきたが、われわれはもはや無視しない。
・だが中国共産党の振る舞いを変えさせる使命は、中国人だけが持っているものではない。自由な国家は自由を守るために行動しなければならない。
・中国共産党は、ソビエト連邦と同じ間違いをいくつか繰り返している。潜在的な同盟国を疎外し、国内外の信頼を破り、財産権と予測可能な法の支配を拒絶するといったことだ。
・香港人を見てほしい。中国共産党が誇り高い都市の手綱を引き締めるので、海外への移住を叫んでいる。そして彼らは、アメリカ国旗を振っているではないか。
・確かにソビエト連邦と違って、中国はグローバル経済に深く統合されている。だがわれわれが彼らに依存する以上に、北京の方がわれわれに依存しているのだ。
・いまこそ自由国家が行動する時だ。すべての国は、中国共産党の触手から、いかに主権を守り、経済的繁栄を保護し、理想を維持するかということを理解していかねばならない。
・だが私がすべての国のリーダーに呼びかけたいのは、アメリカ方式から始めてほしいということだ。すなわち、シンプルに相互主義、透明性、説明責任を要求していくということだ。自由国家はやり方を改め、同一原則で行動するのだ。
・まさにこれこそが、アメリカが最近、中国の不法な南シナ海での主張を一度完全に拒絶したことなのだ。
・われわれは過去のミスを繰り返すわけにはいかない。中国の挑戦は、民主国家――ヨーロッパやアフリカ、南アメリカ、それに特にインド太平洋地域――に努力と労力を要求するものだ。
・もし今行動を起こさなければ、最終的に中国共産党は、われわれの自由を侵食し、われわれの社会が懸命に築き上げてきたルールに基づいた秩序をひっくり返すだろう。いまわれわれが膝を屈したら、孫たちは中国共産党の慈悲の傘下に下るかもしれない。それほど中国共産党の行動は自由世界にとって喫緊の挑戦だということだ。
・われわれが許さない限り、習総書記は中国内外で、永遠に暴君でいられる運命ではないのだ。
・これはこれまで直面したこのない複雑で新たな挑戦だ。ソビエト連邦は自由世界から閉鎖されたが、共産中国は、すでにわれわれの国境の中に入ってきているのだ。
・そのためアメリカ単独では立ち向かえない。国連、NATO、G7、G20など、われわれの結合した経済力と外交力、軍事力によって、明確に大きな勇気を持って指針を示していけば、この挑戦に必ずや、十分対処していける。おそらく、志を同じくする国々が、新たな民主の同盟を作る時なのだ。
・自由世界が変わらなければ、共産中国が確実にわれわれを変えてしまうだろう。
・中国共産党から自由を守ることは、われわれの時代の使命である。そしてアメリカは完全に、これをリードしていく。なぜなら建国の原則が、機会を与えてくれるからだ。
・確かに、リチャード・ニクソンは1967年、正しいことを書いた。「中国が変わるまでは世界は安全にならない」。いまこそこの言葉に心を留めるべき時だ。
