こんばんは!
最近ハイブリッドカーが売れていますね。環境志向か、はたまた経済的な理由からか。
私の東京に住んでいる友人もプリウスを購入したようで。うらやましいかぎり。
さて今回は、
This car sells well.
という文章を紹介しましょう。
This car sells well.
「この車はよく売れる」
上の文章における動詞 sell をよく見てみましょう。
本来 sell は 「~を売る」 という意味の他動詞です。
他動詞は目的語をとり、それ単体だけでは文が成立できません。
(その意味で、「他」に頼る動詞、という名前になっています)
This car sells well. という文章には、sell の目的語がありません。
(well は「よく」「上手に」という副詞なので、名詞であるべき目的語ではありません)
『総合英語 Forest 6th edition.』(2013: 桐原書店)では、
「英語の自動詞の中には、受動態の形をとっているわけではないのに、日本語で考えると受動的な意味を表すものもある」 (pp. 160-161)
と説明されていますが、
sell という他動詞が、目的語を必要としない自動詞のように解釈されるのは何か府に落ちませんし、
「~される」(売れる)のように受け身の形で訳されるのもよくわかりません。
ではなぜ This car sells well. という文章が成立できるのでしょうか。
実はこの文章にはもともと再帰代名詞 (~self) が存在していたと考えられており、この文章も、
This car sells itself well.
「この車は、それ自身をよく売っている」
という文章だったと考えられるのです。
「自分自身を~する」 という言い方は 代名態 (pronominal voice) と呼ばれており、ヨーロッパ言語では頻繁に使われる用法です。
私が唯一分かるヨーロッパの言語、スペイン語の例を見てみましょう。
Me acuesto. (myself + I lay)
「(私は)私自身を横たえる」 ⇒ 「(私は)横たわる」
このような用法、英語にもありますよね?
I lay myself.
「(私は)私自身を横たえる」 ⇒ 「(私は)横たわる」
上の文章では、他動詞の lay 「~を横たえる」 の目的語として再帰代名詞の myself が使われており、
「自分自身を横たえる」
から
「横たわる」
という意味になっています。
しかし英語では、このような oneself を使って「自分自身を~する」という言い方が廃れてきて、次第に oneself という再帰代名詞を省略してしまうことが多くなってきました。
その結果、
This car sells itself well.
が
This car sells well.
という形に取って代わるようになったのです。
上のような oneself が抜けて目的語が無い他動詞だけが残った結果、一見すると 能動態 (active voice) なのか受動態 (passive voice) なのかが分からない態のことを、
中間態 (middle voice)
と呼ぶことがあります。能動態と受動態の中間の態、というところでしょうか。
形の上では目的語をとらない(ように見える)能動態ですが、意味の上では受動態、と覚えておくとよいでしょう。
まさに sell も中間態をとる動詞と説明することができますね。
次回に続きます。