私たちはつながりとご縁の中で生きてきました。血縁(血の

つながり)地縁(土地のつながり)社縁(会社の縁)、学縁

(学校の縁)など、様々な繋がりがありました。

 

しかし、高度経済成長と核家族化と少子高齢化の影響で、身

寄りのない、一人暮らしの高齢者が年々増加し、さらに新型

コロナの影響により人と人との繋がりが分断されました。

無縁社会が加速度的に進みました。

 

経済成長を支えた同居老人たちは物価高の影響による家計の

圧迫を強いられ、例え血縁者であっても葬儀等費用捻出の負

担の重さから、遺体の受け取りの拒否し見捨てられる遺体が

増えています。

 

地方自治体が葬祭費を負担する件数は1970年代減少傾向が続

いましたが、法律に基づいて自治体が葬祭扶助として葬祭費

を負担した件数が、一人暮らしの高齢者の増加などを背景に、

1989年度の1万3094件を境に増加に転じ、2022年度には最

多の5万2616件となったことが、厚労省統計でわかりました。

 

身寄りがない人が亡くなった場合、死亡地の市区町村が戸籍

をたどり親族を探すことになりますが、見つからなかったり、

見つかったとしても遺体の引き取りを拒否されると、市区町

村が遺体を引き取り、葬儀、火葬、埋葬をします。昨年の総

務省の調査では、引き取り手のない遺体・見捨てられた遺体

が各市町村の庁舎などで計6万体,保管されていることがわ

かりました。

 

全国各地の自治体で、葬祭費を負担する自治体が遺体の保管

期間を「原則1ヶ月」「原則2ヶ月」などと見直し、規定化す

る動きが出始めています。つまり,柱数が多く保管費用も含

め自治体は保管費用の軽減を図ろうとしています。

 

このような遺体保管の短縮化の動きは、昨年11月、経営難で

営業をやめていた愛知県岡崎市の元葬儀場で発見された遺体

が、身寄りのない2人の高齢男性であり、腐敗が進んだ状態

で棺の中で放置されていた件や、2022年2月、名古屋市で引

き取り手のない市民13人の遺体を、最長3年4か月に渡り火

葬しなかった件などがきっかけとなっています。


誰にも看取られることなく亡くなり、亡くなってからも荼毘

に付されることなく放置され続ける、見捨てられた遺体に死

者の尊厳や人権はなく機械的に処理される現実が、人間関係

の無縁化と希薄になった日本社会の闇を浮き彫りにしていま

す。

 

真宗の大切にしてきた教え、人と人とが繋がり,「ご縁によ

存在し,ご縁によって築かれたぬくもりある真宗門徒の生活」

を、これから先、どのように創り上げていけばいいのか,私

たち寺族と門徒にとっては大きな課題です。

 

(写真:中日新聞より)