僕にしては意外かもしれないが、生まれて初めて寄席に行って来た。
末廣亭だ。
十八時半頃から最後(二十一時)まで居た。

途中から入った為に最初は後ろに座っていたが、仲入り(休憩)の頃合いで前席の真ん中に行った。
やはり舞台は前に限る。
寄席に僕のような若者は珍しいのか、演者さんとよく目が合った。
色物の奇術師の北見マキさんなんか、しっかりと僕に向けて手品を決めてくれた。
手品なんて種があるから成功するのは当然で、今まで面白いとも何とも思えず、どちらかと言わずとも嫌いだった。
しかし今日のは底の底から楽しめた。
やっている事は昔からある見た事のある奇術。
それでも子供のように楽しめた。
TVや大舞台には無い、寄席の魅力。
まさか奇術(手品)を好きになる日が来るとは思わなかった。

色物でいえば大神楽もあった。
傘で升を廻したりするあれだ。
これは種が無いの凄い。
簡単にやっている見せ場でないところでさえ凄かった。
研鑽を積んだ芸は輝いている。

それから歌謡漫談。
大好き東京ボーイズ。
昔TVで観て熱狂させられた人達が今目の前に居る。
興奮の度合いは本日一番だったかもしれない。

「森進一という歌手を~、謎掛け問答で解くならば~、環境問題と解きます。森と森が壊れます。」

因みにAKB48やBUMP OF CHICKENなどの名前を出して「知らねえよそんなの。客層も考えろ。」と仰っていたが、僕を見つけて「平均年齢」に言い替えていた。
しかし若い僕はその後「じゃあ少し古いの歌うか。では東海林太郎さんで~」で笑ってしまった。
二十一歳だ。

さて、落語の方は六人の話を聞いた。
大トリの桂伸治さんは流石主任といったお上手さ。
一番聞き入ったかもしれない。

今まで本やCD、DVDでそこそこ落語は知っているつもりでいたが、今日観た中に知っているのは一つだけだった。
今まで大ネタばかり観ていたんだなあ。
非常に軽いあっさりした話がいくつかあった。
そりゃあそうでなければ何時間も居座れない。

今回は2時間半程しかいなかったから、次に行った時は昼からずっといてみよう。
電車に乗る。

小学生女児が五、六人いて、綾取りをしている。

今の時代に昔ながらの遊びをきゃっきゃと言いながら楽しむ子供の姿を見るのは嬉しい。

斜め前方を見る。

六、七十代のお婆さんが座っている。

その目は子供達へ向き、幸せそうに頬の筋肉を弛めている。

そんなお婆さんを見て、僕はまた嬉しくなった。






寄席を観に末廣亭へ行く。
今日は色物で東京ボーイズが出る。
懐かしい。
名前を見てもすぐには思い出せなかった。
しばらくしてあの落ちを思い出した。



私達東京ボーイズを、謎掛け問答で解くならば、種を蒔かない畑です。
いつまで経っても芽が出ない。

天気が良ければ晴れだろう。
天気が悪けりゃ雨だろう。
雨が降ろうと、風が吹こうと、東京ボーイズさようなら。



懐かしい。
そういえば小学生の時分に随分とはまったものだ。
東京ボーイズの歌謡漫談、また観られるのがたまらなく嬉しい。
しかも今日は生だ。

今日はなんとたまらない日だ。






ちくしょう。
そんな良い日で終わると思っていたのに・・・。

電車で座っていると婆さんと爺さんが乗ってきた。
僕の隣のおっさんが婆さんに席を譲った。
僕は隣の姉ちゃんの生足に見とれて出遅れた。
出遅れたと思った瞬間2人が夫婦だと気付いた。

なんかもう、おっさんが婆さんに譲ってから間が空いちゃったし、今から譲るのも気まずいし、すぐ譲らなかったくせにお礼言われると嫌だし・・・。

次の駅(四谷)で降りて一つ後ろの車両に移動した。
そしてもう二度と電車で座るものかと誓った僕だった。
この間女の子と吉祥寺でお酒を飲んだ。
吉祥寺駅での待ち合わせの際、先に着いた僕は読書をしながら待った。
そうこうしていると女の子がやってきた。

女の子「お待たせ。何読んでたの?」

僕「谷崎潤一郎の「痴人の愛」。」

女の子「気持ち悪っ。」



そりゃあそうだと思った。



そこで、女の子と待ち合わせの際に何を読んでいたらどう印象付けられるのか考えてみた。



谷崎潤一郎/痴人の愛
「気持ち悪い。」
パパさんとベビちゃんだもんなあ。でも名文学だよなあ。

北野武/超思考
「頭脳明晰な変人」
あ、でもどうだろう。北野武の超思考じゃなくて、ビートたけしの超思考と捉えられたら馬鹿な変人と思われるかな。天才肌の印象が紙一重でタケちゃんマンになっちゃうや。

井上ひさし/父と暮らせば
「父子家庭」

ウラジーミル・ナボコフ/ロリータ
「怖い」
性的に倒錯した人間だと思われるのかな。名著だぞ。

ミヒャエル・エンデ/モモ
「暖かく可愛い」
児童文学だもの。モモだもの。可愛いと思ってもらわないと困る。

海音寺潮五郎/西郷隆盛
「歴史オタク」
しかも話したがりの。

北村想/十一人の少年
「終末的世界観の持ち主」
すげえ暗そう。しかも人見知りな暗さじゃなくて他人に興味の無い暗さ。

曲亭馬琴/南総里見八犬伝
「超能力者」
妖刀村雨を所持していて、前世の因縁に結ばれた義兄弟がいて、体の一部に痣がある、そんな人間。

団鬼六/人妻蟻地獄
「性犯罪者」
むしろ実際の女体を知って落胆する、性に対する憧れが先行するタイプと思われるか?全くその通りなのだが。

寺村輝夫/こまったさんのオムライス
「楽しい人」
懐かしい。私も読んだ。そんな話で盛り上がりそう。

寺村輝夫/わかったさんのプリン
「良い男」
これ読んでいて惚れられなかったら嘘だよ。






今度聖書を読みながら待ち合わせしてみよう。